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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「死んだの?」

 ジルが何の遠慮もなくデューク様にそう聞いた。

 有難う、ジル。私もそれを聞きたかったのよ。

「さあな」

 デューク様が誤魔化すように笑った。

 ……これは絶対何か知っているはずだわ。

 けど、聞いたところで教えてくれなさそうだし。

 何を隠しているのかしら。

「もう一つ聞きたいんだけど……」

 ジルは眉を顰めながらデューク様を見る。

「何だ?」

「聖女って何年ぶりに現れたの? 本で読んだ限り聖女は伝説の人のはず」

「ああ、伝説だな」

 デューク様は迷うことなくそう言った。

 まって、聖女って伝説の人だったの? 

 私、多分その本を読んだことないわ。けど、ジルが読んだことあるって言っているんだから、私も読んだはずよね。思い出せないわ。

 という事は、ヒロインは絶対に歴史に残るじゃない!

 どうして、聖女と同じ時代に生まれてしまったのかしら。

 私がどんなに凄い悪女になっても聖女の陰に隠れてしまうわ。

 悪女として私が脚光を浴びることは絶対にないわ……。

「アリシア? そんな難しい顔してどうしたの?」

 ジルは私の顔を覗き込んだ。

 この場で今の私の思いを言いたいけど、デューク様は私が悪女になりたい事を知らないもの。

「なんでもないわ」

 私はそう言って微笑んだ。

 多分、ジルの事だから、私が何でもない事はないって気付いているはずだけど。

 それにしても大変な事を知ってしまったわ。

 聖女って年に一人は現れるものだと思っていたのよね。

 けど、確かに今までリズさんみたいな人はいなかったものね。

 ああ! 最悪だわ。今頃になってそんな事に気付くなんて……。

「その伝説のキャザー・リズは頭がお花畑で、現国王は無能って……」

 ジルがそう言って嘲笑した。

 ジルの言葉に私の背筋に冷たいものが走った。

 まさかデューク様の前で国王様を無能って言うとは……。

 私はゆっくりデューク様の方に目を向けた。 

 デューク様は瞠目したまま固まっている。

 ……これは逃げた方が良いのでは?

 ヘンリお兄様も目を瞠ったまま突っ立っている。

 暫く沈黙が続いた後、デューク様が声を上げて笑い出した。

 こんなに笑っているデューク様を初めて見るわ。

 声を上げて笑っているのに、全く下品に見えないわ。やっぱり王子は凄いのね。

「そうだな、無能かもしれないな」

 デューク様は笑いながらそう言った。

 ……国王様ってデューク様のお父様よね。

 そんな言い方して大丈夫なのかしら。

 デューク様の様子に今度はジルが驚いている。

「俺、デュークの考えている事が全く分からない」

「私もですわ」

「僕も」

 ヘンリお兄様の言葉にジルも私も便乗した。

 しばらくの間、私達は茫然と突っ立ったままデューク様を見ていた。

 その時にジルが小さく呟いた声が私の耳に響いた。

「聖女が現れたなら、次の国王陛下の結婚相手は聖女になる……」

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