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とある人狼でのお話

作者: ぴしま



「____ごめんなさい。ありがとう」


発音する前に、事切れた。


バールのようなものが私の体を貫く。痛い、痛い、痛い。

内臓がぐちゃぐちゃになる。押し上げられてる。背中を貫いた。意識が朦朧としていた。背骨らしきものが貫かれたのが分かった。意識を手放した。あぁ、彼の人だけ、生き残ってくれればいいのに。彼の人以外、死ねばいいのに。



「____はいカットォ!お疲れ様ー、休憩挟もうか」


声高々にこの舞台1番のお偉いさんの声が響く。


「あー、血糊付いちゃった…落ちるの、これ…」


私は、むくりと起き上がる。刺された時にひと工夫され、痛みは感じない。ただ胸元と背にべったりと血糊が付着しているだけ。

立ち上がり、んんーっと伸びをすれば彼の人がこちらに来る。それは怒ってるようにも見え、哀しみに暮れている様にも見えた。


「お疲れ様。私はこの部で終わりだけど一応最後まで見てるつもりだから」


1番血糊の被害が激しい深い青の外套を脱ぐ。早く着替えたい、と思っていれば人の温もりが直に感じられた。たっぷり3秒ほどかかって抱き締められたのだと理解した。皆、忙しそうにぱたぱたと準備している。こちらに見向きもしないようだ


「…大丈夫、大丈夫。死んだけど死んでないから」


我ながら何を言ってるのだろうと思ったがこれで多少は落ち着いてくれれば、と思う。

そのうち抱き締められているだけでは飽きて、こちらもするりと秋の背に腕を回す。そしてそのまま、ぎゅ、と力を込める。秋の匂いがすぐそこにあって、心地がいい。

怖かったと、すまないと、秋は呟いた。秋にそんな気持ちにさせるのは勿論申し訳ないし、幾らお芝居と言えどこちらとて胸が締め付けられる思いだったが、秋はそれ以上胸を締め付けられていたのだろう、と思えば途端に罪悪感と今更、恐怖心が湧いてきた。

秋の背に回していた腕の力を少し込めた。その様は迷子の子供が、母親を見つけた時のようだった


「本当は、すっごく怖かった…っ!」


だろうな、と秋は苦笑を零し、抱き締めたまま優しく頭を撫でてくれた。それが酷く心地好くて、このま眠ってしまいそうだったが、寝るのも惜しい気がした。それに今寝てしまっては次の部が見れないような気がした。私役は死んでしまったけれど、観覧席に座ってお芝居を眺めていることは出来る。

それでも、『私』は死んだ事に少し胸のざわめきを覚えた。

矢張り、秋と一緒に舞台に立てなくなった事が悲しいのだろうか。

…これが、淋しさと言うのか。

気付いてからは早かった。涙が溢れ出てきた。止められはしなかったし、止めようとも思わなかった。ただ、秋に縋るように抱き着きながら静かに涙を流しているだけ。

何人かの人はこちらに気が付いた様だが、何も言わずそっとしておいてくれた。ある人は目を伏せ、ある2人組は静かに微笑んでいる。何も見えないが、私にはそう感じた。聴覚でも、視覚でも、そんなのじゃない。同じ舞台を共にした仲間の行動が感覚で分かったのだ。

秋は、私が泣いている間ずっと抱き締め、頭を撫でてくれていた。多分苦笑しているのだろうな、なんて思って。


「行ってらっしゃい」


私は静かに離れ、少し背伸びをして秋の頭を撫でる。あぁ、行ってくる、と優しく微笑んだ彼は私から離れ、舞台の上へと上がっていく。その様が凄くかっこよくて、月影さんに「こっちやで〜」と引っ張られるまで眺めていた____。


音ちゃん宅徳田君をお借りしました

人狼がしんどくてしんどくて…。ごめんね徳田君…って感じでした。しんどみがつらい

是非とも本編で幸せになって欲しいものです。

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