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音楽系乙女ゲームの歌姫主人公に転生した私の場合

作者: Leni

 今の記憶を持ったまま生まれ変わったら何になりたい?


 そんな妄想、誰でも一度はしたことあるのではないでしょうか。したことない? そりゃあなんとも充実した人生を送っていそうなものですね。

 この妄想で重要な要素の一つは、どんな人物に生まれ変わるかです。

 日本人のまま? 富豪の娘? 天才児? もしかして異世界人だったりする?


 現代に生まれるなら日本人のままが楽だよね。言葉を覚え直す必要なんてないんだから。

 富豪の娘、いいねえ。石油王とまでは言わないけれど、お金に不自由はしたくないよね。

 天才児! 生まれつきスペックの良い身体って人生楽に過ごせそうで良いね。

 異世界人は、どんな人物というよりどんな世界にって言った方が良いかな。剣と魔法の中世ファンタジーで恋に冒険に大活躍とかいかにも妄想の世界っぽいけど、私は嫌かな。スマホもないネットにも繋がらないって、どうやって暇を潰せばいいのやら。


「実際に生まれ変わってしまった」私の場合――。


 私は日本人で富豪の娘で天才児で異世界人でした。







 「おと☆がく~Music School Life~」は携帯ゲーム機向けに発売された乙女ゲームです。

 女子高生の主人公が、攻略対象のヒーロー達五人のうち一人と仲良くなって、ちょっとした困難を乗り越えて結ばれてエンディングを迎えると言う、どこにでもありそうな乙女ゲーム。

 乙女ゲーム好きじゃないと知らないであろう知名度の作品で、当然アニメ化なんてものもしていない凡ゲーム。

 ただ、スマホアプリに移植されていて、携帯ゲーム機なんてものを持っていなかった私でもプレイする機会に恵まれました。


 私がそんなおと☆がくの世界に生まれ変わったと気づいたのは、五歳になるころでした。

 こんにちは、私五歳。

 生まれ変わったこと自体は赤ちゃんの頃から気づいていましたけどね。

 あとやたらとカラフルな頭髪の人達がいっぱいいたから、前世の地球と同じようでどこか違う世界に生まれたということも割と早めに気づけました。


 そして五歳の私が乙女ゲームの世界だと気づいた理由は、ゲームの舞台である学校が家のすぐ近くにあったからです。


 おと☆がくは音乃峰学園という音楽高校を舞台にしたゲームです。

 主人公の名取川秋花なとりがわあいかはその高校に声楽コースで入学。絶対音感と美声を武器に学園の注目を集め、イケメンのヒーロー達と知り合い、仲を深め、らぶらぶちゅっちゅするわけだ。


 で、今世の私の名前が名取川秋花。家の近くにある学校が音乃峰学園。おと☆がくやないかーい!

 え、なに? 私将来美少女が約束されてるってことじゃない。


 そう、おと☆がくの主人公秋花は美少女なのです。

 というか乙女ゲームの主人公のイラストって基本的にみんな可愛いよね。平凡な女の子って設定の少女漫画の主人公がどう見ても美少女なのと同じパターン?


 そして美声。おと☆がくはフルボイスのゲームで、主人公にも声が付いているタイプのものでした。

 主人公が声有りの乙女ゲームって賛否両論だよね。主人公=自分って考えでプレイする人は声があると没入感が薄れるらしい。

 その主人公の担当声優さんは歌が上手いことで有名だった、らしい。声優とか詳しくないかららしいとしか言えないけれど、まあゲーム中で流れる歌は確かに上手かった。あと良い声。


 あと絶対音感。今世で私は五歳にしてもう親からピアノを習わされているので、この能力については把握しています。耳コピ余裕っす。さらには音楽的センスも先天的に備えているようで、前世の私には到底無理なピアノの練習も難なくこなせている。主人公ってすげー。天才だわ。

 でも、ピアノ、ピアノかぁ。名取川秋花に生まれたなら、楽器より歌だよね。


「お母さーん」


「あら秋花、どうしたの?」


「えっとね、えっとね、お願いがあるの」


 歌の練習をさせてもらえるよう、お母さんに頼んでみましょう。

 大丈夫です。家はお金持ちなのでピアノ以外に習い事なんて負担になんてならないはずです。







 ――十年後。

 はい、十五歳の名取川秋花です。

 今、私は今後の進路を担任の先生と話しています。

 中学三年生。どの高校に進むのか決めなければなりません。まあ私はとっくのまに決めちゃっているんですけどね。


 おと☆がくの名取川秋花に生まれ変わった私の進路は当然――


「名取川の進路は掘山芸能高校で決まりだな」


「はい!」







「それでは聞いて下さい。フラワーサンシャイン」


「あいかちゃーん!」


「うおー! あいか! あいか!」


 今日もショッピングモールでおうたをうたう仕事がはじまるお……。


 はい、引き続き名取川秋花十五歳です。今の私はお仕事中です。

 何の仕事かって? そりゃあアイドルのお仕事に決まってるじゃないですか!

 美少女で美声で音楽センス有りですよ。アイドルやらずになにやるっていうんです?

 シンガーソングライターも捨てがたかったんですけど、よく考えたら楽器は弾けても曲を作ることなんてできるわけがなかったですね。なのでアイドル歌手です。


 五歳の私がお母さんにお願いしたのは、アイドル養成スクールに通わせて欲しいということでした。

 スクールでしっかり歌とダンスのレッスンを積んで、オーディションを受けて見事アイドルになることができました。

 そして今ではテレビにちょくちょく出られるくらいには人気を獲得しています。


 そんな忙しい私の高校の進路は当然、お仕事で学校を休んでも公欠扱いにしてくれて、卒業まで一直線できる学校です。

 なので私は、私のようなアイドルや役者さんとかの芸能人が集まる芸能高校に入学することになりました。


 音乃峰学園? 乙女ゲーム? 知らない子ですねぇ。

 えっ、イケメンヒーロー達との学園ライフは良いのかって?

 いやだなー、イケメンとの出会いなんてゲームのシナリオに頼らなくても、芸能人になればいくらでもチャンスはありますよって。アイドルだから恋愛厳禁だけど、別に現役時代に恋愛しなくても引退後いくらでも相手はいるでしょうしね。


 あと私、そこまでおと☆がくファンってわけじゃないですしね。あれ凡ゲーなので。

 たまたま前世で最後にやったゲームだから、学校名と主人公名覚えていたってだけですし。


 ま、私じゃなくてもできるイケメンとのスクールライフより、この美少女で美声な私じゃないとできないアイドル生活の方が貴重なんですよ。


「みんなありがとー!」


 そしてファンにもモテモテ! 私は今転生ライフを全力でエンジョイしています!

 ふう、今日のステージも大成功です。どさ回りですけれど!

 クールダウンして楽屋でお弁当タイムです。


「あいかちゃん、来月の新しい仕事の話があるんだけど」


「あ、はあい」


 休憩しているところに、マネージャーさんがお仕事の話を持ってきました。いやー、売れっ子は忙しくて辛いですね。


「音乃峰学園ってところの学園祭でステージライブをやってもらうよ」


「えっ、音乃峰学園ですか?」


「なに、知ってるの?」


「えーと……家の近所にある学校なんです」


 まあ問題ないですけどね。

 お仕事なら頑張りまーす。


 へー、生徒がバックバンドやるんですね。さすがは音楽学校らしいなぁ。どんな子達が演奏してくれるのかなー。







 ステージライブ大成功! なのは良いけどまさかヒーロー達がバックバンドだとは思いませんでしたよ。

 というかなんで私は彼らに家の場所教えてるの?

 イケメン度が芸能人とかとは数ステージ違うって? 駄目だよ! アイドルは恋愛厳禁なのになに仲良くなろうとしてるの私!

 ゲームで美少女だった私が現実になったらトップアイドルになれる。つまり、ゲームで特別イケメンに描かれたヒーロー達が現実になったら超絶イケメンになるわけで。そんなの想定外ですよ。シナリオ的に見た目だけでなく性格の良さも保証済み。


 もしかして素直に乙女ゲームルート行っておけば良かった!?


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