1-8/8 決意
今日の謎言
「私があなたの居場所になるから」
~ダンジョン20階層~
あれから一週間がたった。
順調に実践慣れしてきており、連携もとれるようになってきている。5人が。
今は、20階層にとどまってレベリングをしている。
なんでも21階層からオーガが出てくるそうで強さも全く違ってくるらしい。
だから20階層が安全で効率がいいのだ。
ここでは、ゴブリン・ゴボルド・オーク・ファイアウルフなどの狼系が出で来る。
この狼は10体ほどの群れで行動しており、攻撃力は若干低いがスピードが速く、連携もうまい魔物だ。
まあ、こちらとしても連携のいい練習台になっている。
勇者たちのレベルはだいたい10~15レベぐらいだ。
いつもの5人は20レベになりそうだが。
俺は全く戦っていない。理由は前に言ったがそれ以上につかれている。
最近から魔法の訓練から戦闘訓練となった。
なんでも暇つぶしになるのだとか。
暇つぶしといっても相手は神様なので本気でいかないと瞬殺されてしまう。
タケルさんよりもとても強い。
防御しているだけで精いっぱいなのだ。
死神様は「人間の域を超えてるね♪」と非常に楽しそうだった。
そんなことがあり、戦闘どころの話ではないのだ。
まあ、個々のレベルは警戒するだけ無駄というか、生命察知と魔力察知で完全に把握しているし、攻撃ぐらいよけれるしということで、疲れをいやす時間だからだ。
「勇者様方、ここまでなれれば問題ないでしょう。明日からパーティーごとに潜っていただきます。ただし
20階層までにしてください」
「「「はい」」」
もうほとんどの人がパーティーを組んでいる。
パーティーを組んだほうが何かと便利だしな。
そんなわけで、組んでいないのは俺と戦闘が嫌いな数人ぐらいだ。
やっと1人で行動することができる。
・・・・
・・・
「それでは今日はここまでにしましょう」
「そうですね」
20レベを超えるとこの階層では少々上がりずらくなっている。
今日は1レベ上がっている。この人数だから、戦闘回数が少なくなることはしょうがない。
でも、明日からはもっと上がりやすくなると浮かれているようだ。
今更だがみんなは魔物を殺すことに抵抗はないのだろうか。
いや、これは【勇者】の影響か、この世界に来るときに何かあったのだろう。
***
~翌日 ダンジョン前~
「これからパーティーでダンジョンに入ってもらいます。これからは私達は守ることができませんので安全 に気を付けてください」
「はい」「わかりました」
「それでは頑張ってきてください」
みんなはぞろぞろとダンジョンに入っていく。
全員が入っていったので俺も入っていく。
そこへ声がかかる。
「あの、透君。私とパーティー組んでください」
声のしたほうをみると、後瀬がたっていた。
「え?なんで後瀬さんがここにいるの?ほかのパーティーに入ってなかったの?」
確かに、昨日まではパーティーを組んでいなかったが、誰かと組んでいると思っていた。
「だって、透くんが誰とも組んでいないから、一人じゃ危ないでしょ」
「まあ、確かにそうだけど、1階層にいるのはゴブリンだよ。そこでなれてくさ。だから、後瀬さんは ほかの人とくみなよ」
ここで組んでしっまては、21階層に行くことができない。
それに、抜け出すことができなくなる。
「ダメだよ、それじゃあみんなと差が開いちゃうでしょ」
「でも、それだと後瀬さんもレベルが上がらないよ」
「いいの、私はここで透君に死んでほしくないの」
たしかに俺が1人だとそれはそれは大きな差が開くだろう。
俺が上になるが。
しかも死ぬ気なんて一切ない。まあ、死んだ事にするつもりだが。
だが、この顔は譲らないとわかる。ここで時間を無駄にするのももったいない。
明日には分かれてもらおう。
「わかったよ。でも、今日だけにして明日はほかのところに入ってね」
「それは・・・わからないかな」
「はあ、まあとりあえず今日だけね」
俺はパーティーの『メンバー追加』をおす。
これで相手が同意すれば、メンバーに加わる。
「うん!ありがとう!」
後瀬は非常にうれしそうだ。
「じゃあ、さっそく潜っていこう。10階層でいいかな」
「え!透君は大丈夫なの?」
「ああ、そこらへんは大丈夫だ」
彼女は俺が何レベか知らないはずだ。
だから低めの10階層から行くことにする。
***
~10階層~
「オークが3体だね。俺がひきつけるから、倒してね」
「はい!頑張ります」
オークに向かって腰に下げた短剣を塗りながら走る。
3体をを同時に相手にする。
一体が手に持った剣を振り下ろしてくる。それを短剣で受け流す。
攻撃を与える必要はない。ただ、時間を稼げばいいだけだ。
2体目が受け流した俺に向かって横から切ってくる。
俺は、その剣を踏み台にし、上に飛ぶ。ナイフを取り出し、構えた3体目に投げつける。
オーガははじくがもう魔法は準備できている。
「後瀬さん!」
「はい!ウォーターカッター!」
三体のオーガは抵抗できず切られていく。
やはり、勇者の魔法はオーバーキルだ。
そこに3つの魔石が落ちる。
魔石はその魔物の強さにより色が変わってきて強い魔物ほど属性の色が濃くなる。
逆に、弱い魔物ほど白に近くなる。
これはわずかに色がかかった感じだ。
「さすがだね、後瀬さん」
「ありがとう。透君だって3体を同時に捌くなんておかしいよ」
「あはは、俺は魔法が使えないからね」
頭を掻きながらごまかすように笑う。普通の人が見れば、何も感じないだろう。
しかし、
「透君、何か隠してない?」
「え?なにも?」
「嘘をついてもダメだよ。私、父が商売していてそれについって行ったりしてたから目には自信があるよ」
まさかの宣言をされた。
元からこれを聞くためについてきたのかもしれない。
普通の人なら気づくはずがなかった。不自然な点はなかったはずだ。
しかし、まだばれたわけではない。
「うーん、21階層に行こうとしていることならあるけど」
「それだけじゃあないよね。だって、透君は誰も知らないところで自主練してるじゃない」
「え、知ってたの?」
「うん、たまたま見つけただけなんだけどね。その時、刀で素振りしてたでしょ。で、その振り方が素人で はないもの。10年前、お爺ちゃんが剣道って言って刀を使ってたんだ。でも、その時のお爺ちゃんの振り より鋭かったよ」
ズイズイと追いつめてくる。
なんなんだ!この家庭は!普通じゃないな。
俺が言えたことじゃないけども。
ここまでばれているなら仕方がないか。ここで口止めをすればいい。
魔石が集まり次第出ていくしな。
「わかったから、この話は内緒だぞ」
「うん、もちろん」
言っていいことを選びながら話す。
「俺の一番の目的は魔王討伐だ。そのために自主練をしている。次に、俺はあの世界に帰る気はない。この2 つのためにレベルを上げた後、ここを出でいく」
「ちょっと待ってよ!どういうことなの!?」
「どういうことって、そのままだ。何人で討伐するかはわからないけどさいやく一人でもいける。それに、 元の世界には俺の家族はもういない。だから変える理由がない。最後に、ここには俺の居場所はないから だ」
「どうしてもそんなこと言うの?」
「後瀬なら気づいているだろう。君以外のみんなが俺に向ける目線に」
「そ、それはそうだげど・・・」
「そして、ここが一番重要だが・・・あの5人では魔王に勝てない。1年たっても2年たっても勝つことはできないだろう。なぜなら、心のどこかでゲームという感覚と自分は勇者だからという感情があるからだ。さらに言うと、本当の恐怖を知らない。たとえ知ったとしてもそこから這い上がれるのはごく一部の奴だけだ」
そう、これが俺が魔王を倒す最大の理由だ。あいつらがやれないなら俺がやるしかない。
誰かが倒してくれるなんて言ってたら、この国に攻められてしまう。
そうなる前に倒すなら、俺が一番手っ取り早い。
「そっか、なら、私もついていくよ。透君だけになんてさせないから。私が透君の隣に立って戦うから。 私が透君の居場所になるから。だから、一人で戦わないで」
そこには、強い決意を持った一人の少女がたっていた。
その眼には『絶対についていく』という意思が感じ取れた。
俺は一人で(ファミリアーと)背負い込みすいたのかもしれない。
今、目の前にいる少女を巻き込んでしまったからだ。
ならば、俺ができることはただ一つ。
最強のパーティーをつくり、守り抜くことだ。
何があろうと死なせてはいけない。俺を信じてくれた人だから。
「わかった。後瀬を連れていく。ただしこれだけは守ってくれ。他人を救うために自分を犠牲にするな。生きているうちはあがき続けろ。どんなにみじめでもいい。かっこ悪くてもいい。そうすれば俺が遠瀬を守るから」
「うん!わかったよ!どんな状況になっても生きることをあきらめない。絶対に透君の横に立って戦って見せるから」
「ああ、それでいい」
こうして初めてのパーティーメンバーができたのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この話の後半は書くのが恥ずかしいですね。
自分でも、よくこんな言葉が出てきたなと思います。