2-5/16 閑話 私の気持ち
受験が、迫っている。
すぐそこまで・・・・・・・・。
~透と後瀬が出で行った日の食堂~(Side青木夏織)
私は青木夏織。
この世界にきてまだまだ時間がたっていないけど、ここにきてみんなで食事をとるのが当たり前になってきています。
私はパーティーの親睦を深めようとだいたいは青山君、土田君、緑さん、福島さんと一緒に行動している。
今日もこの5人で食べています。
『あれ?ねえ、後瀬さん見た?』
『え?そういえば見てないね』
『大和君も見てないよね』
『確かに、いつもは端で食べていたけど今日はいないみたいだね』
『どこ行ったのかな?』
『さあ?』
という会話が聞こえてきました。
私はえ!2人がいないの!と思ったが、みんな大和君のことよく思っていないみたいだからあんまり心配するようなことは言えませんでした。
ただ、食事はここでしか取れないはずですし、それに、メイドさんが付いているから必ず来るはずです。
そう、普通ならば。
「ねえ、後瀬さんと大和君がいないみたいだよ」
私はさりげなく4人に聞いてみることにしました。
ここで後瀬さんの名前を先に出しておきます。
本当は大和君のことのほうが心配なんだけど・・・。
「ああ、確かに見てないな。なあ、土田」
「そうだな」
「私も見てないよ、2人とも」
「わ、私もかな・・・」
「そう、何かあったのかな?」
4人とも2人を見ていないようです。
これは何かあったとしか思えません。
だって、大和君は聖属性魔法は使えませんが、短剣術ならここにいる誰よりも扱いがうまいですから。
それに、後瀬さんも一緒にダンジョンに潜っているみたいですから、そんなことにはならないと思うのです。
いや、そうであってほしいです。
「まあ、まだあの二人が潜っているのって10階層台だろ。なら大丈夫だと思うけどな」
「ああ、俺もそう思うな」
青山君も土田君も私と似たように考えたみたいですね。
そうです。
まだまだ日は浅いですが私たちは勇者としてこの世界に召喚されました。
ですから、10階層台の魔物にやられるなんて考えられないバズです。
「えー、皆さん、聞いてください」
声の主は先生でした。
みんなに見えるように前に立ってマイク?を使って話しています。
その隣には騎士団長がたっています。
なんだか、嫌な予感がします。
「静かに、最後まで聞いてください。気づいている人もいるとは思いますが、後瀬さんと大和君が見つかっておりません」
\ガヤガヤ/\ボソボソ/
「はい、静かにしてください。2人の専属メイドさんの話によるとまだ帰ってきていないとのことです。団長も見ていないそうです。誰か、2人を見ませんでしたか?」
「あ、二人ならダンジョンで潜っているところもみました。たしか・・・19階層だったと思います」
『私もみました』『俺もみましたよ』
「そうですか・・・。ということはまだダンジョンにいる可能性が高いということですか・・・」
ここで騎士団長が変わって話す。
「二人のことに関しては、我々、騎士団が責任をもって明日、ダンジョン内を探します。なので皆さんは明日は待機ということでお願いします」
「「「・・・」」」
みんな、誰もしゃべれなかった。
それもそうでしょう。
絶対に勝てるという前提の下でダンジョンに潜っているわけですから、これでもし、2人が返ってこなかったら、と考えると悲しくなります。
急なことでこの世界にきてしまいましたが、みんな1人もかけることなく、もとの世界に帰ろうと頑張っています。
しかし、その万が一のことが起きているのです。
もしかしたら、次は自分なんじゃないかと思っているんでしょう。
私も自分じゃなくてよかったという自分がいます。
そんな自分が許せません。
しかし、ここで私たちが動いたところで事態はよくなりません。
ここは明日、騎士のみなさんに任せるべきでしょう。
***
~翌日~
今は騎士の方たちの捜索の報告を受けるために食堂に集まっています。
「えー、勇者様方。静かに、最後まで聞いてください。まず、我々が捜査したのは1階層~25階層までです。主に目撃があった19階層あたりを重点的に調べました。結論から言いますと、2人は見つかりませんでした」
「えっ!2人は死んだってことですか?」
「いえ、まだ断定はできませんが・・・。しかし、このダンジョンは特殊で人を飲み込むまで一週間はかかるように調整されています。ですので、まったく痕跡が残っていないことはないはずなのです。ですから、まだどこかで生きている可能性も・・・」
騎士団長の話を聞いて少しほっとしました。
だって、あの2人がここで死ぬわけがないと何となくですがそんな気がしていますから。
でも、25階層まで調べているのに何で見つからないのでしょう?
私達のパーティーはこの中で最も深い階層を潜らせてもらっていますがまだ25階層には行けていません。
可能性があるとしたら、大和君です。
勇者の特有魔法である聖属性魔法が使えないというのはおかしいと思うんです。
だって、それでは勇者ではないということになりますから。
しかし、勇者の称号があることは土田君が見ていますし・・・。
それに、あの短剣術です。
あれはとても初めて持ったという感じがしていません。
特に、私たちのパーティーが主力になるので訓練も私たちが優先になっています。
それでやっとうまく使えるようになったのですが青山君と土田君、緑さん以外には負けていません。
確かに私たちのパーティーの前衛ですから当然といえば当然なんですが、どうしても本当に負けたのかなという気がしてなりません。
もしかしたらあの3人よりも強い可能性だってあります。
それだったらまだ、生きているかもしれないと思うことができます。
そう、まだ騎士団長も大和君と後瀬さんが死んだ、とは言っていません。
ならば、生きていることを祈ります。
ただの自己満足ですがそうするしかありませんから・・・。
***
~その夜~
部屋で一人になると、とても心配になってきました。
みんなの前では委員長としてしっかりふるまっていなければ、みんなの希望が薄れてしまいます。
ですから、自分に2人は生きていると言い聞かせたのですが、一人になると、涙が止まりません。
拭いても拭いても、涙が止まりません。
それに、胸が締め付けられるように痛みます。
大和君のことが心配で、心配で・・・。
本当はもういないんじゃないかと思ってしまいます。
そう思えば思うほど、胸が締め付けられます。
なぜでしょうか、どうしてこんな気持ちになるのでしょう?
・・・ああ、そうです。
私は大和君のことが好きなんですね・・・。
今まで、なんで、自分の気持ちに気づかなかったんでしょうか・・・。
もっと早く気付いていれば、私も透君のパーティーに入ったのですが。
もし、私が、入っていればこんなことにはならなかったのではないでしょうか?
過去にifはありません。
ですが、どうしても、もしも最初に入っていれば・・・。
そうすれば今日もいつものように笑って過ごせたかもしれないのに・・・。
もっと早く気付いていれば今日という日常がどんなに楽しかったでしょうか。
そして、これからも魔物と戦う中でも、透君と一緒に居れるだけでも、私は幸せだったかもしれないのに、本当に何をしているんでしょうか・・・。
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なんと、100ポイントを超えました!!
これも皆さん一人一人のおかげです。
これからもよろしくお願いします!
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