2-2/13 奴隷
テンプレの奴隷ですね。
あ、皆さん『ゼロ』の名前の理由があるんですよ。
某名探偵を読んでいる人はわかったかもしれませんが。
トオル➡透る➡何もない➡0➡ゼロ どうです?まるパクrゲフンゲフン。リスペクトです。
~翌日 宿~
「今日は奴隷を買って冒険者登録しようか」
「うん、でも奴隷の状態から何とかならないの?」
後瀬は奴隷というのに抵抗があるのだろう。
でもパーティーメンバーと知識は必要だとわかっている。
だから買ったとしてもどうにかしたいのだろう。
俺も人を道具扱いすることはダメだと思う。
でも、この世界では当たり前の認識だし、地球でもあったことだ。
だから否定しようとは思わない。
まあ、奴隷のままにはしないけどな。
「大丈夫だよ。前【契約】したでしょ?あれなら奴隷の契約を上書きできるんだ。だから奴隷じゃあなくなるんだ」
「ほんとに!よかったぁ。奴隷って心苦しかったんだよね」
「そうだね。でも、仕方がないことなんだよ」
後瀬はパァっと顔をほころばせて喜ぶ。
「それじゃあ、ごはん食べていこうか」
「うん!」
・・・
「おはようさん」
「「おはようございます」」
1階に降りるとおばさんが料理を運んでいた。
挨拶をしながら席に着く。
後瀬は向かい側に座る。
「今日はパンとベーコンとスープだよ」
「ありがとうございます。いただきます」
「いただきます」
このパンは白くて若干固めだ。
これでも普通のパンらしい。これはふわふわのパンを作る必要があるようだ。
ベーコンは豚のような獣を買ってきたものらしい。
意外とジューシーでしつこくなくておいしい。
スープはいろんな野菜が入ってある。
バランスも良く、野菜の味がしっかりしていておいしい。
手を合わせて
「「ごちそうさま(でした)」」
「それじゃあ出てきますね」
「はいよ」
鍵をわたし、外に出る。
場所はもう確認してある。
・・・・・
・・・・
・・・
ここから治安が悪くなるスラム街となる。
「一応、警戒しといてね」
「う、うん。でもどうにかならないのかな」
「その考え方は間違ってないし、いいと思うよ。でも大きな都市になるほどこういうところも大きくなるんだ。光があれば闇がある。どうしようもないことなんだ。それこそ国王がなくそうとしても絶対にどこかにできるんだ。ここにしか住めない人もいるから」
「確かにそうかもしれないけど・・・」
「ここは命が軽い世界なんだ。だから明日が来るとは限らない。だからとにかく生きることを優先したほうがいい。生きているうちはやり直せるから」
「うん、そうだね。ここで私が考えても変わらない。なら私は魔王と倒す。それが私にできることでゼロの目的だもんね」
「そう、それでいいんだ」
・・・
「おい、そこどいてくれ!」
「まて~ルパァ~ン!(幻聴)。おーい!そいつを捕まえてくれ!」
何事かと振り返るとボロボロの服を着た男の子とそれを追いかけるおじさんだった。
おそらく食べ物でも盗んだのだろう。
巻き込まれたくないなと思うが、この少年の眼を見て思った。
こいつは自分のためにやっているのではないと、そして【空間把握】をしてみたところ弱い反応を発見した。
魔力が似ていることから親だと思われる。
こんな子でも親のために、自分が生きるために必死なんだと痛感した。
ここは思っていた以上に残酷なんだと。
少年が横を通り過ぎていく。
手に抱えるのは果物だろう。そこに銅貨を紛れ込ませる。
なんでもないただの自己満足で偽善だ。
だが、それでもいいと思った。
「おじさん、それはいくらするんだ?」
「は?なにをいっているんだ?」
「だから、あのガキがもって行った品物だよ」
「あ、ああ。鉄貨7枚分だ」
「これでいいな」
「わ、わかった」
俺は鉄貨7枚と銅貨1枚を渡す。
品物代と口止め代だ。
「じゃあな」
・・・
「ねえ、ゼロ。なんで銅貨を渡したの?あんなこと言ってたのに」
「ああ、あの子の親がだいぶ弱っていて、そのためにやったんだ。で、親を失う悲しみは俺も知っているからかかわらない程度に助けたかったからだよ」
「そうなの・・・。ごめんね」
「いや、気にしなくていいよ。もう過去のことだから」
「やっぱりゼロは強いね。私なんかよりもずっと」
「いいや、まだまだだよ。それに自分の弱さを知ることも大事で乗り越えないといけないから」
「うん、そうだね。私も隣に並べるように頑張るよ」
・・・
「ここだ」
そこは廃棄されたようにボロボロな建物だ。
だがそれは外見だけで内装はしっかりしたつくりになっている。
中に入るとすぐにカウンターがある。
「奴隷を買いに来た」
「おやおや、そんな若いのに買えるのかね。奴隷の値段は知っているのかい」
若いからって理由は嘘だ。
俺がどれだけ金を持っているかを知るためだな。
無言で表情を変えずに金貨の入った袋を見せる。
急に店主の顔がニヤニヤしだす。
「ええ、これは失礼しました。まずは入りましょうかい」
「そうだな」
はいっていくとそこには様々な種族の奴隷が檻に入れられていた。
どの奴隷も痩せ細っている。
来ている服もぼろぼろの布1枚で来ている意味があるのかというほどだ。
「どうでしょう、絞っていきましょうか?」
「いいや、別にいい」
「わかりました」
端から【鑑定】をしていく。
ここで何か特殊なスキルがあるといいんだが・・・。
ん~特にはないかな。
獣人族の【闘気】が面白そうだな。
そこでふと、ある獣人族に目が留まる。
特に変わったところはない。
白髪で上のほうが黒くなっている白狼族だ。
俺はその眼から何かを感じる。
懐かしいような、悲しいような感覚・・・。
そうか、思い出した。
あの眼はかつて俺が親を亡くして絶望の中にあった眼だ。
生きることが何なのかわからなくなり、ただただ泣いていたころの眼だ。
しかし、この少女にはそれだけではない。
その眼の奥にはまだ明かりがともっている。
決めた。俺がこの少女を助けよう。
あの時、タケルさんが俺を助けてくれたように・・・。
少女がいる檻の前に行く。
「なあ、俺と一緒に来ないか?」
「・・・」
何も言わないが眼はこっちを見ている。
「店主、鍵を開けてくれ」
「え、わかりました」
鍵を開けてもらって中に入っていく。
眼を見ることが大事だ。
なぜ選んだのか、それは俺の眼を見ればわかるはずだから。
「わかるよ、俺も昔そんな目をしていた。わかるだろう。でも、君は俺と違ってまだあきらめているわけじゃない」
「・・・」
まだ無言だが眼を若干開いた。
「君は力がほしいんだろう。この世界で理不尽に抗える力が。自分の意思を通す力が。生きていくための力が。俺は君に力を与えたいんだ。俺がかつてそうであったから」
「・・・わかり、ました。私に、力を、ください。そのためなら、何でも、しますから」
「わかった。君を強くすることを約束しよう」
その少女、名前をフリティアという。
ここまで自分の無力さを実感し、絶望の中だった。
しかし、俺が力を与える。
それは彼女が最も求めていたもの。
それがかなうとわかり、泣いていた。
俺はそっと頭をなでる。
「ただ、諦めることなくついてこれるか?もしかしたらやらないほうがよかったと思うかもしれないぞ」
「そんな、ことは、ありません。絶対に、つよ、く、なり、ます」
「そうか、愚問だったな」
「店主さん、この子はいくらだ?」
「ええ、金貨10枚になります。が、奴隷の心を開かせるその手腕に期待して金貨8枚と銀貨5枚にしときましょう。期待してますぜ」
「そうか、感謝する。これだ」
「ありがとうございます。では、登録をしましょう」
店主が取り出したのは【契約の紙】だ。
これは奴隷の血を登録させ、首に奴隷紋を施す。
そして、この紙に登録者の名前と血をたらせば登録が完了する。
俺はもちろん日本語で『透』と書いた。
これだと勇者じゃない限り、俺の名前を知ることができないからだ。
「よし、じゃあまずはリースは服を買ってきてくれ。俺は適当に食べ物を買ってくるから。買ったら宿で集合だ。俺が1人部屋をとるから2人部屋にいてくれ。これがお金な」
「わかったよ。じゃあ、宿でね」
「私なんかにいいんですか?ご主人様」
「まあ、宿に行けばわかるから」
「そうですか。ありがとうございます」
「心配ないと思うが、周りの奴に気を付けてくれよ」
「うん」
読んでいただきありがとうございます。
B27/256
U2029/25600
なんとBが2増えました!ありがとうございます。