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聖属性魔法と黒き翼  作者: 不(?)定期さん
2章 冒険者と仲間
12/62

2-1/12 魔石と職人

~裏路地~




「ふう、やっと出てこれたね」

「うん、準備したかいがあったね」


俺たちはやっとあの自由のない集団から抜け出すことができた。

今のうちに変装しないと・・・。

髪を白魔法でおおい、死神様からもらったマフラーをつける。

白魔法は髪一本一本をきれいに覆うことで白髪にみせる。

マフラーの機能は・・・


_______________________________

・死神の贈りマフラー

 体温調節機能

 全能力アップ(10%)

 若干の認識阻害トオルだとばれにくい

_______________________________


まさに俺がほしい機能を詰め込んだマフラーだ。

流石、死神様だ。

防具は国からもらった初心者用の普通に売っている革の防具を装備している。

逆に言うと、それ以外だと国用だとばれちゃうんだよね。


後瀬は黒のローブをかぶって手に魔法杖を持っている。

これだとふつうの魔法使いと認識される。

俺に至っては髪の色が違うし認識阻害もあるから顔を見られても気づかれないだろう。


「透君って、髪の色が変わるだけで全然印象が変わるね」

「そうなんだ。第一印象は見た目に偏るからね。それに黒髪はいないわけじゃないけど少ないからこれでわからないはずだよ」

「じゃあ、まずはどうするの?」

「そうだね、まずは宿をとらないとどうしようもないかな」

「確かに早めにとっておくべきだね」

「それじゃぁ行こうか」

「うん」




~止まり木の宿前~




「ここが初心者冒険御用達の宿だね。安くていい設備らしいね」


いろんな人に聞いてみたところここがいいと勧められた。

やっぱりその地に住む人に聞くのが一番だね。


2階建ての木でできた宿。

「止まり木の宿」という看板が掲げてあって、なんだかアットホームな感じの宿だ。

中に入ると左側に受付があり、右側奥に食堂がある。

多くの冒険者らしき人が食事をとっている。


「すいません、ここで1週間泊まりたいのですが」

「はいはい、おや、見ない顔だねぇ。あんた新しい冒険者かい?」

「いえ、まだ登録してないんですけどこれからなる予定です」


ぽっちゃりした優しそうなおばさんが受付をやっている。

おそらく女将さんだろう。

優しい笑みを浮かべているが、その眼はしっかりと俺たちを見極めている。

侮れない人だ。


「そうかい、どの部屋にするんだい?」

「一人部屋を「二人部屋でお願いします」・・・」

「え?ほんとに言ってるの?リース(理衣からとった偽名)」

「だって、あまりお金ないでしょ」

「まあ、そうだけど・・・」


すこし頬を赤らめて言われるとさすがに断れない。


「はいはい、二人部屋ね。食事はどうするんだい?一食銅貨1枚朝食と夕食があるよ。昼食をとる場合はその都度料金を払ってね」

「ではそれでお願いします」


おばさんは何かほほえましいものを見るような顔をしている。

そんな顔されても・・・。


「1週間で銀貨3枚と銅貨5枚だよ」

「はい、これで」


うーん、これで銀貨3枚越えか。

となると魔石だけよりクエストを受けたほうがだいぶよさそうだ。

安いって言われてるから新米でも稼げるんだろう。


「はい、これがカギね」

「ありがとうございます」

「部屋は二階の265号室だからね。出るときは鍵を渡していってね」

「わかりました。行こうか、リース」

「うん」


265号室は二階の端にあった。

入ってみると、思ったよりも広くて窓が前についている。

左右の端にベッドがある。

クローゼットがその奥。

真ん中にテーブルと椅子がある。

簡単なつくりだけど必要なものがしっかりそろっている。


「へー、意外と広いね」

「そうだね。宿も確保したし魔石でも売りに行こうか」

「うん、その時に冒険者登録はするの?」

「いいや、あまり早く上がりすぎても目立つだけだし、奴隷を買ってからじゃないとランクが違ってくるからそこはそろえたいかな」

「うん、そうだね。私も目立つのは控えたいかな」

「まあ、とりあえず売りに行こうか」


とくに荷物を置く必要もない。

むしろ【アイテムボックス】があるから自分で持っていたほうが安心できる。


「すみません、ちょっと出てきます」

「はいよ、いってらっしゃい」


宿を出るといろんな屋台や店が立ち並んでいる。

屋台で何か買ってもいいなとか、余裕ができたら買い物したいなとかと考える。

そんなに魔王が速く動くとも考えられないし、国も大体の予測があって勇者を呼び出したはずだからまだ余裕はある。

そんなに急ぎすぎるとかえって大事なところが抜けてしまうものだ。

そんなに焦らなくてもいい。





~冒険者ギルド~




ギルドに入ると前と変わらな様子。

一様、前の受付嬢と違う人のところを選ぶ。

『もしも』はできるだけないほうがいい。


一番左の茶髪でポニーテールにした人にする。

受付はギルドに顔ということのあって全員顔が整っている。

そういったことは重視されるよな。


「あのー、これを売りたいのですが」

「はい、冒険者カードはお持ちですか?」

「いいえ、ないです」

「わかりました。少々お待ちください」


この人は俺も言いたいことが分かったようだ。

「登録はしない」ということを読み取れるとは。

やはり多くの冒険者と毎日顔を合わせるから自然とわかるのだろう。


「お待たせしました。こちらウルフ系統が40個、オーガが20個ですね。合計で金貨22枚になります」

「ありがとうございます」


俺は受け取りつつ表面上の笑顔を向ける。

他人を信用することはできないが、表面上だけでもみせておくのは重要だ。

何事も第一印象は大切だから・・・。


「やはり階層が違うだけで全然違うね」

「うん、まあ倒せる人が少ないのと魔石自体もいいものだからそうなってもらわないと困るんだけど」

「そうだね。次はどこに行くの?」

「とりあえず武器と防具だけ買っておこうか。手の甲を隠しておきたいし」

「そう?」

「うん、手札は見せないことが一番だから」


冒険者ギルドが近くということもあっていろいろな武器屋、防具屋が並んでいる。

命を預けるものだからここはしっかりしておかないと大変なことになる。

特に後瀬は後衛職だが近接戦闘もできる。

だから防具が薄くなるのは避けたいところだ。

とりあえずパーティーが安定するまでは。


俺は一つの店に狙いをつけた。

外見はぼろぼろというか手入れがされてないようなものだがここから見える武器や防具はどれもそこらの店とは出来が違うし、丁寧に扱っているという印象を受ける。

武器と防具のどちらも売っているということはまずないので気になったのもあるが。


「リース、あの店に行ってみよう」

「わかった」


「すみません、誰かいますか?」

「は~い、待ってください」


そう言って出てきたのはまだ20歳ぐらいの青年だった。

短めの茶髪でさわやかな印象を受ける人だ。


「このあたりの武器はいくらになりますか?」

「だいたい一つ銀貨3枚になります」


店に近づいて分かったが、どうやら店の前側に置かれているのはこの青年が作ったもののようだ。

そして、奥にはやはり出来のいいものが置かれている。

これは製作者が違うようだ。


でも、端に置かれている樽。その中には失敗作が入っている。

売り物のようではなさそうだが店の中に置いているので買えるのだろう。

その中に隠れて入るが周りとは一線を画す武器が入っている。


「じゃあ、その樽の中の武器「・・」は買えるのかな?」

「ええ、そうですけどなぜです?ガラクタしかありませんよ?」

「いや、とてもいい武器があるのくらいわかりますよ。この店でも一級品のが」

「坊主、いつ気づいた?」


店の奥から(おそらく鍛冶場だろう)から背の低いおじさんが出てきた。

特徴からしてドワーフだろう。


「この店に入ったときです。つい奥に目が行ってしまいますが、どうも気になったんでね」

「はっはっは、そうかそうか。なるほど、やるな」

「いえいえ、まだまだですよ」


明らかに意味を持った言葉だったな。

気づいたんなら売ってやってもいい的な感じだ。


「それに買うのは俺じゃなく彼女ですから。まだ早いですし」

「ほう、よくわかっている。防具なら打ってもよいぞ」

「ありがとうございます。それでは動きを重視した防具一式と魔力伝導率の良い手袋を買わせていただきたい」

「よかろう。金貨5枚じゃな」

「はい、十分です」


このおじさんは気に入ったやつに優しいパターンの人だな。

その眼にはどのように戦うのかワクワクしているような感情が込められている。

完全な職人だ。

金額だって元値ギリギリだ。

ここの武器や防具だってもっと値段はとれるはずなのに安い。


「しかし、釣り合わないのでこんなのはどうでしょうか」


そう言って俺はライキリを出して見せる。

もちろん【鑑定】できないようにしてある。

職人なら自分の眼で読み取ってほしい。


「ほう、これは・・・」


それを見た途端雰囲気が変わった。

この武器は神様作だからな。

わかるのだろう、この世のものではないと。

ゆっくりと鞘にしまう。


「いいものを見せてもらった。坊主、名前は?」

「トオルです。ゼロと呼んでください」

「なるほど。そこの嬢ちゃんにも作ってやる。どんな武器がいい?」

「はい、私はリースといいます。魔法使いで近距離に対応した魔法杖がいいですね」

「ほうほう、これはまた変わった。だが面白いな。値段は変わらん。5日後だ」

「「ありがとうございます」」


おじさんは奥に入っていった。


「ではこれを」

「はい、確かに」

「5日後にまた来ます」


このおじさんは信用できる。今のことをひとに言わないだろう。

いや、職人とはみなそういうものだ。

自分の腕に絶対の自信を持っている。

それに値する使い手が現れたんだ。

使い手と職人の暗黙の了解があるのだ。

実にいい店だった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

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