表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダニエルの短編集  作者: 岸野果絵
それぞれの悩み
7/7

おまけ

「クレちゃん。頼みたいことがあるんだ」

「ん? 改まってどうした」

いつもとは少し違ったニコラスの様子に、クレメンスは首をかしげた。


「ジョンが実父との対面を希望してるんだ」

ニコラスは神妙な面持ちで話す。

「やはり、実子ではなかったか……」

クレメンスは視線を斜め下に落とす。


「あれ? 言ってなかったっけ?」

クレメンスは「うむ」とうなずく。

「ごめん」

ニコラスは頭を下げた。

「謝るほどの事でもないだろ。見ればすぐ分かることだ」

クレメンスは「フッ」と笑う。

「だよねぇ」

ニコラスはそう言うと「はぁっ」っと大きなため息をついた。

「ん? どうした?」

「ダニエルのやつ、全然気がつかなかったんだ」

ニコラスは皮肉な笑みを浮かべた。

「まぁ、ダニエルならあり得るな」

クレメンスは「フフフ」と笑った。

「ほんと、何を見てるんだか……」

ニコラスは視線を斜め下に落として低い声で言った。

「そう怒るな。ダニエルは私のように疑り深い性質たちではない。そこがダニエルの良いところではないか」

クレメンスはそう言ってほほ笑む。

「それはそうだけどさ。でも、それじゃこの先、ダメだろ? 」

ニコラスは相変わらず低い声で言う。

「まぁ、それはそうだがな……」


「それより、用件はなんだ?」

クレメンスは話題をそらすように言った。

「そうそう。ジョンの実父との対面をセッティングして欲しいんだ」

ニコラスは顔を上げた。

「相手はアルテーン子爵」

そう言ってクレメンスに紙の束を渡す。

そこには、アルテーン子爵の名前や年齢、住所、経歴などが事細かに記載されていた。


「ずいぶんしっかり調べてあるな……。ここまで調べているのなら、お前が直接……」

資料を眺めていたクレメンスは、ふと顔を上げ、視線をニコラスに移すとニコラスの顔を探るように見つめた。

「やり合ったことでもあるのか? 」

「やり合うだなんて物騒な。一方的に叩きのめしただけだよ」

ニコラスは不敵な笑みを浮かべる。

「そうか。なら、出ていかない方がいいな」

クレメンスは「仕方ないな」とでもいうように鼻を鳴らした。

「でしょ。とりあえず、ダニエルを付きそわせるつもり。頼むよ」

ニコラスはクレメンスを真っ直ぐにみる。

「わかった。お安いご用だ」

クレメンスはにっこりとうなずく。

「ありがと」

ニコラスもにっこり笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ