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呼びだされる猫



 国王に会いに行くことになった。というかご丁寧に迎えの馬車まで来てる。ま、表面上は友好的なのかな。ここで逃げるのは簡単だが、やめておこう。


 立派な馬車が宿の前に到着していた。言伝の意味はあるのか?これ、断るって選択肢は認めないっていう意思表示かな?



 宿の前に立っていた3人の騎士は全員男性だった。王様、気が利かないな。ま、全員イケメン揃いだから文句を言うまい。おっと、これを口にしたら少し誤解を生む恐れがあるな。僕は男性には興味ない。勿論女性の方が好きだが。しかし、残念な事に異性に対する興味が薄れてる気がする。徐々に戻るだろ。

 何が言いたかったかというと、僕は迎えに来た野郎共の造形を褒めただけだ。言い訳がこれ以上伸びると逆に疑われそうだから止めておこう。



 「お待ちしておりました。シロ様。」と胸に手を当て、かしこまる金髪の騎士様だが、困る。奥の二人の騎士は、馬車に乗れと言わんばかりにドアを開けている。はいはい、急かさないでください。



 全員が馬車に乗り込むと、緩やかに動き始めた。白馬が引いているが、良く訓練された馬だ。


「シロ殿!不躾な質問かと思いますが、龍を盗伐されたとは本当ですか?」


 質問を投げかけてくるのは、ブルーの髪をした少し大柄な獣人だ。狼の獣人かな。


「はい」


「おぉぉ!じゃあ副ギルド長に勝ったってのも本当!?ですか!?」


 こいつ、さては敬語に慣れていないな?茶髪で若干幼く見える獣人だ。こいつは犬だな。チワワという印象を受ける。なぜ彼にだけ具体的な犬種まで述べたのか、チワワがあまりにもピッタリだからだ。


「こら、ハンク、ロイ!シロ様が困ってしまうではないか!」


 金髪の美形はコイツ達のリーダーかな。狐みたいな耳をしている。個性豊かな奴らだ。しかし、常識的に振る舞える奴がいて良かった。猫が常識を語るのもおかしな事か。


「それよりシロ様、お美しい顔立ちをされていますね。一鉄さんが女性と間違われた気持ちも分かります。・・・本当にお綺麗だ。」



 最後の方に何を言っていたのかは聞こえなかったが、顔が近い、怪しいのはコイツの方だったか。ソッチ系なのか?困る、僕では期待に応えられなそうにない。あ、金髪騎士のおかげで思い出した。鏡を見たいんだった。

 僕以外の獣人や人間の顔立ちは紹介する機会があったのに、僕の顔がまだ未知数だ。ちなみに時々視界に入る前髪から、髪色は真っ白な銀髪だと伺える。


「あーあ、またシークの悪い癖が出たよ!そんなんだから男好きだと疑われるんだ」


 ハンクと呼ばれる狼男がシークのグイグイ来る姿勢を咎めてくれたおかげで、コレ以上僕に男の顔が近づく事は阻止された。ありがとうハンクと心の中で礼を言った。


「うるさいぞハンク、貴様はもっと美意識を持て、良い素材を磨かないのは罪だ。そんな事より、シロ様!なにかご不便ありませんか?何なりとお申し付けください」


「鏡もってない?自分の身なりを見る機会がなかったので気になる。」


「流石は龍を盗伐されあお方、美意識も大したものです。残念ながらありません。お城に到着しましたら身なりを整えていただく事になるでしょう。その時にでもお持ちします。」


「僕ってそんなに汚れてる?」


「はい、汚れていてもこの美しさ!城に到着するのが待ち遠しい限りです!」


 この子大丈夫なのだろうか。唯一こいつからだけ龍関連の評価うけていないのだけど。しかし、僕は本音を言うのであれば、せっかくありつけた畳から引き剥がされて少し怒っている。しかも僕が汚れているって簡単に認めたぞ。風呂に入りたい。猫は綺麗好きなんだ。




 雑談をしていると眠気が襲ってきて寝てしまった。不用心なものだ。目の前に怪しい奴がいるというのに。




辺りは真っ白な空間、天地もなく、実体もない空間に僕はいた。この夢は何度か見た。そして最後にみた白い夢の中にいた白く美しい女性がそこにいた。やはり人間離れしている。



「どぉ?こっちの世界は」


「どぉ?と言われても、まだこの世界に来て短い。」



「そうね、その割には短時間で力を使いこなしているじゃない。私の贈り物が思わぬ力を得ているわ。」



「力とは?」



「いい?シロ、私はあなたのために身を護るためのスキルを与えたの。スキルってね、魂の力によって強さが変わるの。あなたは魂の力が凄く強いみたいね。いきなり龍を倒しちゃうなんて。」


「あの結界はスキルだったのか。魂の力とは?」


「う~ん、生命力とで言おうかしら、あなたは悪用しないと信じてたわ。私の勘は当たるの。ま、好きに生きなさい」



 僕をこの世界に連れて来た目的を聞こうとした。しかし、夢は覚めてしまった。僕をこの世界に連れて来たあの人は何なのだろう。人じゃないのかな?最後の言葉で見せた笑顔が、神々しさすら感じた。あれは女神か何かだろう。そして目を開けると王城の門をくぐっている所だった。



「お目覚めですかシロさん!つきました。お城はどうですか?」



 チワワに言われて窓から外を眺める。城とはその国の強さを表していたりする。立派な城を建てる力があるんだぞ。といった感じに。それを踏まえてこの城を眺めると、そこまで大きくない。基準は分からないが、人間の有力貴族ならこれくらいの屋敷をもってそうだ。


 ならこの城を見た印象は小さくと、弱い国の城だなぁ。といった感想なのかと言うと全く別だった。庭園は広く自然豊かで美しい。派手ではないが、穏やかで綺麗なところだ。城は歴史を感じるが、ぼろい訳ではない。むしろ威厳を感じる。


 一言でこの城に対する感想を言うなら・・・


「気に入ったよ。いいところだ」


「おぉ!流石はシロ様だ!美しい物を見定める目をお持ちだ。あぁやはりあなたは・・・」


 シークと呼ばれる金髪騎士が話す事は、聞き流すが吉。そう理解する事にした。


 さて、城は気に入った。できれば王の事も好きになりたいところだ。そんな事を思いながら城の中へと入っていく。

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