表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

謎多き猫



 場所は変わって闘技場。まさかギルドの地下にこんな物があるとは。


「悪ぃな突然。正直に言うぞ、お前は龍を倒せる程強そうに見えない。だから力を見せてくれ。」


「もし僕が負けたら?」


「龍の魔石を盗んだ罪で投獄だ。お前の人生がかかっている。負けられねえだろ?頑張ってくれ」


 副ギルド長は、口元では笑顔を作りながら、目を鋭く光らせている。負けたら罪人か。ま、日本であれば、三食飯付きだし、清潔だ。だが、ここは異世界、文化レベルは日本よりもだいぶ低い。つまりあれだ。投獄は困る。ここは言われるがまま頑張るか。



「ルールは降参するか、相手が戦闘不能になったら決着としようか。もし、お前が龍を殺した奴なら俺くらいの相手を殺すのは簡単だろうが、殺さないでね?」


 命乞いのようなセリフを吐く副ギルド長は、負ける気など毛頭ない顔で笑った。彼が持っているのは・・・日本刀だ。この国にも日本文化があるのかな?和室は好きだから是非訪問したい。畳があればだが。


「はい」


 僕がそう言葉を発した瞬間、凄い速度で間合いを詰めて、居合い斬りを繰り出してきた。このオッサン不意打ちとか卑怯だ。まぁ、相手のが強者だったら僕も同じく不意打ちをするだろう。そして言うだろう。これも戦略であると。文句は言うまい。ま、避けられそうだからオッサンの戦略を許してるってのも本音だが・・・。もっと言うと、こんな考え事をしながら避けられそうだったから許そう。


 猫の動体視力を舐めるな人間。よし、避けた後に言う台詞は決まった。そろそろ刃が当たりそうなのでオッサンの真後ろに回り込む。念のため全速力でだ。音もなく。



 すると、オッサンは刀を振りぬいて硬直した。そして避けられたのを認識した瞬間に言った。



「参った!!!」


「n・・・はい」


 

 決め台詞を言えなくなってしまった。まぁ疑いが張れたならいいか。


「しっかし、実力者なのは分かった。やはり俺では測れんか。女みてえな顔して強いな、お前。」


「僕は男だ」


「知ってるよ。俺は、仙道せんどう 一鉄いってつだ。東にあるヤマトって国の出だ。田舎者で種族差別をしないからココの副ギルドマスターに抜擢された。実は腕も立つんだが・・・説得力ないか」


 自嘲気味に笑うオッサンは唐突に自己紹介してきた。名前も肩書も、僕はあまり興味ないのにな。ま、聞いているフリをしよう。


「おいおい、お前も自己紹介しろよ」


「・・・シロ。」


「・・・終わりかよ!」


 ずっこけながらツッコミを入れるオッサンを見て、すまないオッサン、僕のコミュニケーション能力が至らぬばかりに年甲斐もなくはしゃがせてしまって。同時に、羞恥心ないのかな?とか思って済まない。


「シロ・・お前凄く失礼な事考えているだろ。」


 このおっさんは、人が何を考えているかを考え、時に羞恥心を捨てる覚悟でコミュニケーションをとることで、高いコミュニケーション能力、略してコミュ力を誇るのだと考察した。



「まぁいい、それよりお前さんの置かれてる状況はよろしくねーな。それは分かるか?」


「分からない」


「おいおい・・・分かった説明してやる。現在人間の国と獣人の国は友好関係にある。それは、人間の国に獣人の国が勝てないから仕方なくとっている友好関係。国を滅ぼさない代わりに、人間に兵を貸せってものだ。しかし、獣人の国が強力な兵力・・・勇者のような奴が自国民に現れたらどうなると思う?」


「戦争になるか、友好関係が壊れる」


「そうだ・・・ま、獣人の国の英雄になれる。大富豪にもなれる。って状況だよ、お前さん。」


「畳・・・東の国に和室はあるのか?」


「はぁ?・・まあ、あるよ」


「魔石の売却金をくれ、僕は英雄に興味ない。和室だ、和室に行かねば」



「俺は、龍討伐した奴を報告する義務があるんだが・・・黙っとくか?」


「好きにしてくれて構わない。」



 さて、お金が手に入った。想定外に巨万の富が。飛ぶハードルが低すぎるとつまらんな。まぁ、もう昼だ。そろそろ寝たい。僕は一鉄におすすめの宿を聞き、そこに泊まる事にした。



 オッサンの勧める宿は高評価だった。宿、旅館っぽい感じだ。和風の・・・まぁ、外国人が建てた和風宿って感じだ。なんでも、オッサンは獣人の国の王と仲良しで、ヤマトの文化を少し取り入れてもらっただとかなんとか。結果は高評価だとかなんとか。



 宿代はドラゴン討伐の報酬のせいで早速不確かな金銭感覚だが、ドラゴン討伐報酬は金貨10000枚だそうだ。大金貨という1枚で金貨100枚の価値があるらしい物で代用されているようだ。大金が入った袋をぶら下げて歩くのは非常に不用心だが、仕方ない。問題は冒険者ランクがAまで上がってしまった事だ。Sにするとか言い出したので、ゴネてAにしてもらった。



 部屋をとりあえず3日借りることにした。和服の女性に案内された。犬系の獣人だな。綺麗な顔をしている。そういえば美人を前にしたのに性的な興味が湧かないな。人間だった時代もあったのに。猫の時代が悪かったのかな?


 部屋は和室で、畳がある部屋だ。広すぎだ。部屋が4つあり、日本庭園、部屋備え付け露天風呂。この部屋はかなり高いんじゃないか?VIP専用部屋らしい。僕にはもったいないな。


 

 さて、昼は寝ようそう思い愛しい畳に寝転んだ。と同時にドアがノックされた。・・・少し嫌な予感がする。居留守を使えと猫の勘が言っている。しかし、声の主は部屋に案内してくれた美人だ。女性を困らせるのはいけない事だ。とりあえず返事した。



「どうしました。」


「シロ様に言伝がございます。」


 言伝。このタイミングで言伝だ。ついさっきこの世界にきて冒険者になった獣人に言伝だよ。思い当たる事は龍狩りしかないだろ。お上から何らかの圧力を受けるのかな。


「内容と相手は?」


「はい、是非お会いしたいと、国王からです」


 

 猫の勘は当たる。嫌な予感も当たる物だ。見事、面倒そうな事が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ