夜を駆ける猫
自身の戦闘能力の把握、これには二つ方法がある。一つは鑑定アイテムを使う事。鑑定アイテムとは、対象の適性や強さを測ることができるアイテムの事だ。しかし、これは貴重で希少なアイテムであり簡単には使用できない。まー現実的ではないな。
2つ目、戦闘の場数を踏む。これは面倒で得られる結果は正確さに欠ける。スキルや魔法適正が測れない。メリットは、実力もつく事、金になる事。
よし、二つ目で行こう。魔物狩りでもするか。お金は必要だしな。と言う訳で町の外に出た。
ゴブリンやホーンラビットを倒すと、依頼でなくともポイントと報酬がもらえる制度がある。ゴブリンなんかが落とす魔石は高く売れるらしい。つまり魔獣狩りはお金になる。
町の外に出て人目がなくなった。今日は良い月夜だ。暗くても問題なく周囲が見渡せる。絶好の狩日和だニャ。。。まー僕の外見が分からないからと言ってこの先被りそうなキャラ付けは止そう。
僕は元猫だけど・・・。どんな身体能力かな?そう思い思い切り走ってみた。全力疾走を5分程度速度を落とすことなく走れた。息が上がる様子もないし・・・獲物が追いやすいな。もしくは敵から逃げやすい。
次、思い切り飛んでみた。音もなく飛び上がったのだが、高い。高い。高すぎ!!とりあえず・・・並みを大幅に超えた。特大ジャンプだ。上昇している感じは終わり、次いで浮遊感、落下感。死ぬ!死にたくないので衝撃を殺さななければ!焦っていたが終点だ。願わくば人生の、と付け加える事がないと嬉しい。
結果は、音もなく着地できた。地面を砕くことも、騒音を立てる事もなく。死ぬこともなく、痛みもなく。まー猫だし、着地は上手いものか、そういうものだった。
森へと入っていく。次は攻撃力。固く握った拳を全力で木に向かい打ち出す。イメージは気を貫通するような勢いで。でないと気の前で拳にブレーキがかかる恐れがある。木にヒットした。自分よりも太く大きな木に。そして、ゴスッっと鈍い音が聞こえて、木を若干、気持ち、めり込ませただけに留まった。
おかしい、家を軽く飛び越えられそうな跳躍が可能な僕だが、パンチは猫パンチらしい。なんとも閉まらない。ちなみに、脚力は凄いのか?とか思ったのだが、そこまで協力ではなかった。
うーん、素早さはあるが、攻撃力はない。隠密性が高く、足が速い。まるで泥棒の申し子じゃないか。僕は思わず膝をついた。
お?足音。3体だな。その内一体は、何かを引きずる音だ。匂い、鉄の臭い。というか血の臭い?それと嫌な臭い。これは勘だが、ゴブリンかな。
面白そうなので、身を引くし、風を切り、木々を縫って、走り、飛び、木の枝に着地。つい猫だった頃のくせであまり丈夫じゃなさそうな枝に乗ってしまったが、不思議と折れなかった。この世界の木は固いのかな?だとしたら僕の拳は猫パンチじゃないかも。
忍者も真っ青な身のこなしで枝からゴブリン3体を発見し、目で追う。三匹の緑色した、ずんぐりした、害獣を見つめた。
それらは、兵士というか冒険者の死体を引きずっていた。血の臭いは“アレ”から臭うのか。ほら、猫の勘は当たるんだ。そしてもう一つ勘を披露しよう。あのゴブリン三匹に僕は負けない。
枝から飛び上がり、一匹目、死体を引きずっているせいで最後尾となっているゴブリンの頭上に着地する。僕の体重が原因か、はたまたこの世の物理法則が原因かは分からないが、音もなく、ダメージもなくゴブリンの頭の上に着地できた、してしまった。が正しいが。
さすがに気づかれてしまったので、頭の上から両肩に足場を変更し、ゴブリンの頭を両足で挟み、思い切り回転してみた。スパイ映画で頭をグリン!とやって敵を倒す映画をイメージしてやってみた。が予想とは裏腹に、3回転くらいしてゴブリンは絶命した。
血がついたら嫌なので素早くゴブリンから離れた。前にいた2体も異変に気づき、振り返った。僕は前に飛ぶイメージで地面を蹴り、推進力を利用しながらゴブリンにパンチを繰り出した。綺麗に顔面にヒットし、ゴブリンに強力なボディーブローをお見舞いした。
ひるんだが、ダメージはあまり無いらしい。残念だが、猫パンチだ。もう一体のゴブリンは、棍棒を振り上げ、耳障りな声をあげながら向かって来た。遅い。なんて遅いんだ。これは確信した。ナメられてる。不愉快だな。
俺は素早く最初に殺したゴブリンの位置まで下がり、冒険者の死体が所持している剣を引き抜いた。少し拝借します。あなたじゃコレは触れないだろうし。そう思い、ゴブリンに目を向ける。今更棍棒を振り下ろしていた。まったくもって、戦闘で気を抜きすぎじゃないか?あいつら。
呆れ半分に距離を縮め、ボディーブローを当てた方のゴブリンの後ろに回り込み、首を落とす。そして棍棒を振っている奴の首をはねる。
2体とも絶命し、体内から魔石が出て来た。それを採取する。はて、ここで困った。戦利品を入れて持ち運ぶ物がない。仕方がないので、冒険者の死体から借りる事にした。革の袋みたいだ。血もついてないし、丁度良いと魔石を収納する。
さて、狩を再開しよう。