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冒険者登録



 夢を見た、真っ白な空間で、自身の肉体の感覚が無い、不思議な空間。これは身に覚えがある。人間から猫になった時に似たような夢を見た。本当に夢かどうかは分からないが、夢としよう。



 目の前には、猫だった俺と会話をしてのけた白い女性がいた。


「シロちゃん、君はこれから今まで君が生きていた世界とは別の世界で生きてもらうわ。そこで、一匹の猫として好きに生きなさい。思い切り、精一杯ね。」


 

 後半に、何か嫌な響きを感じた。面倒事が起こる予感がするような響きが。猫の勘は当たる。嫌な予感もまた、当たる。後者は猫に限らずだが。



 

 夢から覚めると、猫だった頃見ていた景色とは違い地面が遠い、足元を見れば日本の足がある。縦長の影がある。そこから察するに、俺は二足歩行をしている。不思議と体の操縦に不便はしなかった。できれば鏡が見たい。猫の前は人間だったのだから、自分の容姿を気にかける事は自然だと思う。



 さて、周囲に視線を巡らせると、正面に町が見える。早いうちに腰を落ち着ける場所が必要だ。町へと向かい歩を進める。二本足は問題なく僕を目的地まで運んでくれた。



 町の入り口には、兵士のような奴が立っていたが、身分証の提示を求められる事もなく、さながら顔パスのように町の中に入れた。


 

 少し歩くと、なぜすんなり町に入れたか分かった。獣人しかいない。そんな町だった。俺はまず図書館に向かった。さっきこの世界に来たというのに全く浮かないというのは助かる。


 図書館に来た理由は単純明快だ。この世界の事を調べる。俺がこれから生きていく世界を知らなかったら不便だからな。先ずは情報収集だ。





 大量の本を読み漁っていると、すっかり日が暮れていた。俺は猫の獣人らしい夜目がきく。そんな猫の利を駆使して集めた情報は以下の通りだ。


 この世界にいる種類の種族は、人間。この世界で最も多い種族で世界人口の割を占める。次に多いのが魔族。こいつらは2割程度、その他が2割。中でも獣人族は少なく、奴隷として乱獲され著しく数が減ったが故らしい。


 この世界の物語を書くのであれば、主役は人間なのだろう。魔族と戦い、倒し、めでたし。といった感じだろう。ありきたりで、ありがちな。そんな話になる事だろう。



 僕をこの世界に送った人は言っていた。好きに生きろと。この場合必要なのは、何が好きかを見つける事、それともっと重要な事が、生きていける事。である。


 僕は考える。生きる上で必要な素質を。


 一つ、物資の入手するための金だ。この世界での知的生命体が作るコミュニティーでは、通貨が用いられている。銅貨、銀貨、金貨、といった感じだ。通貨の価値は、全ての国で同じだ。できるだけ正当な方法でこれらの通貨を入手する事。


 二つ、自身の戦闘能力を知る。これは勘だが、僕の戦闘能力は、少なくとも現時点、図書館までたどり着くまでにすれ違った獣人、門番の獣人。これらの人物よりも優れている。元動物の勘だ。だが、魔法が判断する要素に入っていないので、こればっかりは当たらない勘なのかもしれない。


 三つ、魔法を身につける事。これは戦闘能力の向上をもたらす他、生活水準も上がるはず、一石二鳥になったらいいな~。である。


 四つ、これは今のところ行う気はないが、鉄板として仲間を集める事だ。この世界を知っていて、ピンチの時に助けてくれる仲間が・・いたら楽だな。



 まあ、こんな所かな。さて、移動しなくてはな。宿をとろうにも一文無しだ。今晩中に金を稼がねばなるまい。僕は物音を立てずに走れて、夜目がきく。こそ泥スキルが高いが、今、敵を作るのは愚策だ。泥棒猫になるのは止そう。


 現実的な策として、冒険者登録だ。依頼を完遂し、対価を貰う。これが得策とみるや否や、図書館の司書さんにお礼を言い、図書館を後にした。



 冒険者ギルドに向かう道中、気になる事があった。それは、未だに獣人となった僕の見た目が紹介されていないという事だ。僕がもといた世界では、町を歩けば鏡が見当たる。正確にはガラスだ。角度によって光を反射するため、自身の姿を確認することが出来る。しかし、この街にガラスはあるのだが、透明度が低いせいもあり、人型という情報以外は得られなかった。



 道行く人に道を尋ねながら冒険者ギルドへ到着することができた。隣町まで歩くとは・・・。

 ギルドの外観は、大きくて独特。木と石で造られた三階建ての建物、周囲と比べて高く敷地も広い。見た目らしい。


 道中、建物探しより気になってしまった事がある。それは、人間がいる。正確には人族がいる。驚いて手近なところにいた女性に話を伺ってみた。




 女性の話によるとこうだ。冒険者ギルドが獣人だからといって危害を加えた奴を取り締まる事を条件に作った町だそうだ。ここに来れるのは、冒険者ギルドで一定のランクを持ち、信用のあるハンターのみ。町に住む人も、ここに来る人間達は安全だという認識があるため、ここでは獣人と人間が共存できているらしい。

 結構レアな街なので、踊ろう奴も多いらしい。僕もおどろいたしな。



 さて、いよいよ冒険者ギルドに到着した。話に聞いていた通り、周りの建物より少し大きく、広いだけの三階建ての建物だった。


 

 受付にいるのは猫系のお姉さんだ。猫系で猫耳の獣人のお姉さんが対応してくれた。


「新規の登録には銀貨一枚です。今払っていただいても結構ですが、依頼の報酬の中から一定額差し引いていくのが一般的です。」


「じゃあそれでお願いしますニャ」


「・・・承りました。」


 あれ?語尾にニャアとつけないなこの人と思い、これ見よがしに猫語を話してみたのだが、サービスはしてくれないみたいだ。


「この水晶に手をかざしてください。生体情報を読み取ります。」


「了解ニャ」


「猫語でなくても結構ですよ?」


 猫語という言語は存在するらしい。そんなどうでもいい事実を確認できた事に満足しながら水晶に手をかざすと、水晶が光った。


「確認できました。これがあなたのギルドカードです。お名前だけご自分でお書きください。」


 

 名前か・・・。シロとだけ記入た。種族はネコ科獣人・・・やはり猫科なのか。その後はギルドのランクについての説明を受けた。


 冒険者にはランクがあり、E,D,C,B,A,S。の順に上がっていく。ランクを上げるには、ギルドが決めたポイントを一定以上貯める事でランクを上げるそうだ。ポイントの貯め方は依頼をこなすと貰えるらしい。Cランクから上に上がるには昇級試験をうけなくてはならないらしい。


 さて、これで金をかせぐ当てはできた。これからは僕の戦闘力を把握しないといけないな。


お読みいただきありがとうございました。

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