少女と少女の語らい
お久しぶりです。
後書きには前回の後書きの続きがありますのでそちらも含めて
お愉しみ下さい。
「では、改めて自己紹介を。私の名前はサキです。以後お見知り置きを」
深々と向かいのメリュに対して頭を下げるサキ。
炬燵を挟んではいるが頭を下げ過ぎて立派な耳が向かいにいるメリュに当たりそうになる。
「わわっ…よ、よろしくです」
メリュはペコ、とお辞儀をするがサキの耳のお陰で会釈にも満たないモノになってしまった。
俺たちはあの後落ち着いて話をするため三人で炬燵を囲むように座った。
海外から帰って来たのだから椅子の方がいいかと思い元いた隣の部屋に行こうとしたのだが、久し振りの炬燵に大喜びしたサキがここを指定したのだ。
「なら俺も改めておかえりなさい、と言っておくか。そうそう、サキの向かいに座っているのが」
話を振ると。
「ええと、そうですね…では改めて。私の名前はメリュと言います。アキ…さんには昨晩からお世話になっています。ってこんな感じでいいかな?」
メリュは中途半端になっていた自己紹介を言い終えると助け舟を出して欲しそうに俺の方を見た。
仕方ない、舵を切ってあげよう。
「そう、メリュは昨日の嵐の夜、我が家の前にいたんだ。その時、運悪く頭に飛んできた木材が当たったそうでね、家の前で倒れてるのを助けたんだけど、木材の当たりどころが悪かったのか見事に自分の事に関する記憶が抜け落ちたみたいなんだ。でも最悪の場合にならなかったのは不幸中の幸いと言えるのかな」
追及されると面倒なところを上手く隠して話し、さらに続けた。
「ついでに言うとメリュって名前も名指しで呼べるようにつけたんだ。本名は分からない」
そこまで言い終え、メリュの方を見ると何となく寂しそうな顔をしていた。
言い方が悪かったかな?
「そうでしたか、メリュさんも大変でしたね。それで、お兄ちゃんだけど」
サキはいきなり俺に話を振ってきた。
何故だろう語尾の方の声色が低かったからだろうか、嫌な予感がする。
「な、何かな?」
恐る恐る聞いてみると。
「お兄ちゃん、メリュさんに何もしてないよね?」
ジッとサキは身を乗り出し俺を睨みつけてくる。
失敬な事を言ってくれるな。
「心外だね。一緒に暮らしてた時、俺は無防備な女性に何かするような奴に見えた?」
疑ってるのか?とでも言わんばかりの表情をして俺はサキの質問に答えた。
そう、俺は紳士だ。無防備な、しかも怪我している子に何かするような
「私が13歳の頃、お兄ちゃんのベッドの下を覗いた時にあった本には確か『眠kan人』っていうのがあったと思うけど?」
「そんなもの知らないなぁ⁉︎」
もう一度言っておく。
俺は紳士だ。
そんなものは断じて持っていた覚えはない!
「ふぅん?冷や汗かきながら言われても説得力無いよ?」
言い終えるとサキは向きを変え優しい口調でメリュに問う。
「ねぇサキさん。お兄ちゃんに何かされませんでしたか?服が破かれてたとか」
なんてことを言うんだこのセクハラうさぎは。
案の定、驚き桃の木山椒の木といった風にメリュは。
「えぇ⁉︎い、いやその、そういった事は特にされてないと思います…」
と、サキに向け慌てながら両手を胸の前に出し手を振りながら答えた。
「それならいいですが…。何かあったらすぐ私に言ってくださいね?聞き次第お兄ちゃんの事を即折檻しますから」
「えええ⁉︎」
サキがそんな恐ろしい事を言ったかと思うと。
「そうそう、お兄ちゃん。私お風呂入りたいな。長旅で疲れちゃった」
ゴロンと横になりながらねだる様に言葉を続けた。
「わかったよ…ちょっと待ってて」
もう疲れたのでサキの要求を呑むことにした。
「本当⁉︎やったー‼︎」
横になったままのサキがバンザイする。
「それじゃちょっと行ってくるね、こいつの面倒頼んだよメリュ」
「その言い方酷くない?」
ふくれっ面しながら言うサキ。
酷いもんか。
メリュはほぼ初対面で危なそうな奴と少しだけとはいえ二人っきりにされるんだぞ?
可哀想に俺の視線の先にいるメリュは。
『嘘よね?行かないよね?嘘だと言ってよアキ!』
そんな顔をしている。
「残念ながら嘘じゃないんだな」
「何か言った?」
流石にその大きな耳は伊達じゃ無いらしい。
聞こえないくらい小さく呟いたのに声を拾いやがった。
「いや、何も。それじゃ頼んだよメリュ」
言い終え軽く手を振りながら俺は踵を返す。
『行かないでアキー‼︎』
メリュの視線が痛い。
しかし新しいタイプでは無いから何も聞こえない、感じない。
俺はドアを開け風呂場へと向かった。
ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー
「さて、お兄ちゃんはいなくなった」
私は起き上がると部屋にいるメリュさんに向けて言った。
私の声を聞いたメリュさんはハテナマークを浮かべて私の方を見る。
「ど、どうかされましたんでしょうか?」
メリュさんは私に対してかなり警戒しているみたいだ。
証拠におかしな言葉を使っている。
ちょっと悲しい。
今はメリュさんと私の二人きり。
良い機会だしこれからの事も考えて親睦を深めておきたい。
となると、まずは私への警戒心を解くことから始めようかな。
「え〜コホン。メリュさん、さっきはごめんなさい…って言うのは少し違うかもですね。どう言えばいいのかな…怖がらせてごめ、ん…?」
どう言えばいいか私が迷っていると。
「そ、そんな!サキさんの事を怖がっているなんて…。確かに変わってる人だなぁ、とは思いましたが…いいいえ!変わってると言っても褒め言葉と言いますか、リスペクトしてると言いますか!」
メリュさんは、ワチャワチャと身体を動かしながら私の印象を説明してくれた。
失礼だと分かっていても動きが面白くて笑ってしまいそうになる。
「ぷっ…くっ!そうですか…!それな、ら、ぷくくっ…!良かったです…っ!」
どうにか笑いを堪えて言うとメリュさんが言い辛そうに口を開いた。
「その〜…[さん]付けして名前を呼ぶのをやめて頂いてもよろしいでしょうか…?」
「どうして?」
私が理由を聞くと、どうやらお兄ちゃんにはさんを付けず私には付けるのが気持ち悪いから、との事。
そういう事ならと私は条件付きで違う呼び方をすると言った。
その条件と言うのが。
「敬語を使わないで話してほしい…ですか?」
「そ!理由はメリュちゃんと同じかな」
「それは構いませ…構わないけど。それならサキ…ちゃんも」
私はメリュちゃんの言葉を遮って話し始めた。
「ごめんね。私はお兄ちゃん以外には敬語で話す事にしてるの」
部屋の空気が重くなる。
それでも構わず私は続けた。
「私が敬語を使うのは相手を信用してないとかそんな理由でじゃ無いの。メリュちゃんにならその内理由が話せると思うけど、それまでは…だから、ごめんね」
ダメだ。
あの事を思い出すとどうしても気分が暗くなる。
知らず知らずの内に猫背になってしまう。
そんな私の気持ちを理解してくれたのか。
「わかったわ。サキさんが自分から話してくれるまで私からはこの話題に触れない様にする。でも、1つだけ枷をつけるね」
メリュちゃんは私に人差し指の腹が見える形で手を出す。
「枷?」
意味が分からず聞くと。
「そう、枷。サキさんが私に[その事]を話してくれるまで私はサキ[さん]と呼ぶ。っていう枷をね?」
微笑みながら枷の正体を教えてくれるメリュちゃん。
でもそれは枷ではなく約束じゃないのだろうか。
でも、私はその言葉が嬉しかった。
それはつまり苦手であろう私とこれから先も付き合ってくれるって事なのだから。
数少ない私の友人に。
いや、あの事を話せたなら…
きっと心友になってくれるかもしれない。
「メリュちゃん」
「なに?」
【バタン】
「「わっ‼︎」」
いきなりドアが開いたので二人して驚いてしまう。
「ん?どうしたの?二人とも変な顔をして。サキ、お風呂入れたから後20分もすれば沸くよ」
部屋に入りながら告げるお兄ちゃん。
「も〜!お兄ちゃんタイミング悪いよー!」
「本当ね。タイミングが悪過ぎるわ」
私の後に続いてメリュちゃんが不満をアキにぶつける。
「「ね〜」」
私達は顔を見合わせると互いに首を傾げ声を合わせて笑いながら言った。
「なんか仲良くなってる?俺がお風呂洗ってる間に何があったんだよ…」
「女の子同士の」
「ひ・み・つ、だよ。お兄ちゃん!」
「はぁ…」
肩を落とし大きくため息をつくお兄ちゃんを見ると、私とメリュちゃんはもう一度顔を見合わせて笑った。
「前回の後書きであった巨乳VS貧乳でしたが結果はどうなったんですかね」
「両者一進一退の良い勝負をしていましたが、二人とも疲れていたんでしょうね。三日三晩の死闘の末、同時に意識を失ったそうです」
「成る程!しかしまさか三日三晩も戦っていたとは…どう考えても巨乳の方が強いのに何故でしょうかね」
「あ"あ"?強いのは貧乳だろがまな板プレス舐めんなよ?」
「んだと?なに寝言言ってんだコラ。わがままボディビンタ喰らわすぞ」
「いいよやってやんよ?」
「言ったな?後悔すんじゃねぇぞ⁉︎」
完
そんなこんなの最新話でした。
次回はほっとかれたままのアキの部屋をどうにかしようと思います。
それでは(^▽^)o