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帰って来た少女

拝啓。

志島照史様。

一層寒さの厳しくなる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。

私は今、貴方の御友人である夜星やぼし様の下日夜勉学に励んでいます。

ロンドンはそちらと同じ冬ですが恐らくはこちらの方が寒いです(笑)

さて、前置きはこの位にして。

私の第六感が告げています。

今、貴方は大変な状況に陥っていると。

この手紙が届く頃には私もそちらにいることでしょう。

ですから、早まった事はくれぐれもしないよう。

敬具

貴方の愛しいサキより


p.s.

趣味の物があまりにも増えていた場合は破壊及び抹消するので、早めに対策を打つ事をお勧めいたします。

炬燵こたつは良い。

身体だけでなく心も暖めてくれる。

「あの…」

側で同じく炬燵に入っているメリュが語りかけてくる。

きっと蜜柑みかんの催促だろう。

手紙が届いた後、思ったよりも寒かったこともあり炬燵のあるこの部屋に買ってきた食料と一緒に移動した。

メリュが買ってきた蜜柑を食べた時の事は忘れられるものではない。

「アキ?」

蜜柑の皮を剥く時、力加減がわからなかったのか勢いよく蜜柑の果汁が飛び出てしまって、「どうしよう⁉︎」とか言って慌てふためく姿が何とも可愛いかった。

記憶喪失っていうのは力加減とかも忘れるのだろうか。

「ねぇ」

またも催促してくる。

しかし、我が家にはもう蜜柑はない。

「ねえってば!」

痺れを切らしたメリュが俺の肩を掴み激しく揺さぶる。

「痛いよメリュ。そんなに蜜柑が食べたいのならそこのコンビニで買ってきなよ」

俺は揺れ動く中、アゴでコンビニのある方向を指す。

「違うわよ!これ!この手紙!」

メリュは片手を離し指先でテーブルの上を示す。

なんだ、それの事か。

「何言ってるんだい?君の指先に在るのはただのテーブル。炬燵のついたテーブルだよ?何処に手紙があるって言うんだ」

「え…まって、そんなに嫌なの?」

軽く引いた様な眼をされてしまった。

「た、確かに、手紙の内容を見る限り結構な人だって事は分かったわよ?でも、現実を見れなくなる程の人じゃ…」

なん…だと?

メリュの驚くべき発言に俺は憤慨した。

「冗談じゃあないぜッ!あいつは俺の集めた物を全てサーチ後デストロイするって言うんだぜッ⁉︎」

勢い余って立ち上がり、そのまま中世の彫刻にも似た立ち方をしてしまう。

「お、落ち着きなさいよ…。冷静に、冷静になって?ね?」

メリュになだめられ落ち着きを取り戻した俺は炬燵に入りもう一度話し出した。

「確かにさ、俺の収集癖による収集量は異常かもしれない。でもさ?何もデストロイする事はないじゃん。俺の収集した物をデストロイするって事は俺の心もデストロイされるって事なんだよ?確実に。そう、コーラを飲んでゲップをする位確実な事なんだッ!」

「微妙に分かりづらい例えね…。でも、そうね、何も壊す必要はないわよね」

そう言うとメリュはお茶を飲みながら頷く。

まさかこの話で同意を得られるとは思わなかった。

もしかしたらメリュも俺と同じ様に収集癖があるのかもしれない。

気を良くした俺は更に続けた。

「でしょでしょ?だからさぁ…」

「だからと言って手紙が来なかった事にしたとしてもそのサキって子がここに来なくなるわけじゃないわよ?」

「くッ、やっぱりか…!」

現実を突きつけられた今、鏡を見たら間違いなく苦虫を噛み潰した顔をしているだろう。

「とかなんとか言って実は嬉しいんじゃないの?」

口元に手を当ていやらしい笑みを浮かべるメリュ。

そりゃあまぁ、嬉しいかと言えば嬉しいけど…

「でもやっぱり、デストロイは嫌だなぁ…」

俺が何処か遠くを見る眼をしていると突然

【バン!】『ただいま‼︎』

恐らく破壊されたであろうドアの開く音と共に聞こえた俺の心のドアを閉じる音。そして久しく聞いていない明るくこころよい声が聞こえた。

間違いない…奴だ!奴が来た!

「俺はここにいないと言って!」

弾かれたように近くの押入れに身を潜ませようとするがメリュがそれを止める。

「無茶言わないでよ!サキって子は私がここにいる事知らないんでしょ⁉︎」

「大丈夫!俺は今違うとこに飛ばされててその間だけ君が借りてるって事にすれば何とかなる!」

「無理があるわよ⁉︎」

言い合いながらも強引に押入れに入ろうとするが流石ケモン族。人ならざる怪力でそれを拒む。

だが、負けん!

【トタトタトタ】

奴が廊下を小走りし徐々に近づいているのがわかる。

隣の部屋のドアが開く音がする。

『ただいま〜!アレ?おかしいな。お兄ちゃんいないの〜?』

こっちへ移動する奴の足音。

「」

「」

二人の時間が一瞬止まった。

お陰でメリュの力が一瞬抜ける。

「いいい今『お兄ちゃん』って…?」

「アリヴェーデルチ(さよならだ)!」

俺は二本指を立て手を振り、戸惑うメリュに構わず一瞬の隙を縫って押入れに入る。

「あっ、ちょっ!」

【【バタン】】

「ほぼ同時とかぁぁ‼︎」

外でメリュの叫ぶ声が聞こえる。

頭を抱えている姿が容易に想像できる。

(さて、俺は押入れから覗くかな)

正直、この二人がどんな会話をしてくれるのか楽しみだ。

そんな事を考えているまさにその時、メリュが口を開いた。

『お、おはようございます』

『おはようございます』

おどおどしく朝の挨拶をするメリュと挨拶をし返すサキ。

『えええと、貴女がサキさん、ですか?』

『ええ、いかにも。私がサキです』

慌てふためきながら質問するメリュとは対照的に落ち着き払い応えるサキ。

なるほど、これは暫く見ていた【スー…トン】い?

隙間からしか差し込まないはずの光を何故か俺は全身に浴びている。

更に言えば眼前には色白の肌にハリの良く程よい太さの太もも、ちょうどいい長さの腕と綺麗な手、五年前よりも明らかに成長しているある一部分、そして片方が折れたフサフサの大きな耳のサキがいた。

「ひ、久しぶりお兄ちゃん…!ずっとずっと逢いたかった!」

涙目になりながら、ピョーン、と効果音のつきそうな勢いで飛び上がり美しいスモーキーホワイトの長髪をなびかせ両手を大きく広げ俺に飛びついてきた。

「ちょ、おま!ここ押い…」

【ガッツン】

「はうあっ!」

飛び上がったサキの落下先には押入れの上縁がありそこに額をぶつけ、志半ばでそのまま床へ落ちてしまった。

「あぁ、言わんこっちゃない…」

思わず頭を抱えてしまう。

どれだけ美人でどれだけグラマラスなボディーを持ってもサキはサキだったようだ。

「ねぇ、サキさん。大丈夫?」

眼の前で起きた事象についていけなかったメリュが額を押さえバタバタと暴れるサキの下へ寄る。

「大丈夫…です。ご安心して下さい」

スクッ、と何事も無かったかのように立ち上がるサキだが額には可愛らしいたんこぶが出来ている。

やせ我慢するところも変わってないな。

「うん、大丈夫じゃないね。あのさ、サキはもう少しこう精神的に成長してはくれなかったのかな?身体ばっかり成長してからに」

「うるさい!そんなことよりお兄ちゃんは部屋片付けたの⁉︎たくさんあったら、手紙に書いた通り!んにゅ⁉︎」

息継ぎも忘れ滝の如く動かすサキの口を遮るため頭を撫でる。

昔からこうすると静かになるんだよね。

「やめてよも〜!」

嬉しそうな顔をしながら撫でるのを拒否されてしまった。

憎まれ口を叩かれてもサキが帰ってきてくれたのはやっぱり嬉しい。

そうだね、こういう事はちゃんと言わなきゃダメだよね。

俺は撫でるのをやめ、本来なら帰って来たらすぐに言わなければならなかった事を言った。

「お帰りサキ。理由はどうあれ帰って来てくれてお兄ちゃんは嬉しいよ」

言いながら俺は昔、サキを夜星の下へ送り出した日と同じように優しく抱き寄せた。

「ふぇ⁉︎ちょっ!…ん〜!」

戸惑い間の抜けた声を出すサキ。

最初は抵抗していたが

「えへへ!ただいま‼︎」

サキは俺の胸に埋めていた顔を見上げニッコリと笑った。

懐かしい。

ふとそんな事が脳裏をよぎる。

もう少しこのままで居たいな。

「な、何これ⁇」

抱き合い視線の交じり合う俺たちの背後ではポカンとしているメリュがいた。

今回は前書きから始まりました。

この回で登場した少女・サキは現実でいうウサギのケモン族です。

身長は145〜150㎝のイメージです。

ロリ巨乳妹属性と萌え属性モリモリです。

果たして貧乳強気少女のメリュに勝ち目はあるのでしょうか⁉︎(なんの?)

次回は

「両極端の先に」

です!(大嘘)


真面目な次話予告をすると多分自己紹介とかなんかそんな感じの話です。

ふわふわしてるな、とか言わないでね!

お楽しみに!

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