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飛び込んできた少女の産まれた日

2話目です。

速いですね。

いえ、本当はこれも合わせて1話だったんですけど、私事情により分割したわけで…

何て事はどうでも良いですね!

それでは第2話、お愉しみください。

「私を助けて下さい本当にありがとうございました。何とお礼を言って良いのか…」

昨日と同じ部屋で私を助けてくれた彼と向き合いながら座り、お礼を言う。

外は昨日嵐があったとは思えないほど空は青く澄み渡り、スズメたちの会話がまだ寝ぼけた耳に入ってくる。それが妙に心地いい。

しかし、私は小鳥達の奏でる音色に耳を傾ける余裕はなく、専ら意識は目の前で右頬に手を当てながら不自然な程にこやかな笑みを浮かべている彼に釘付けなのだけど。

「どうした、ゴホッ…正座なんかして。楽に座っていいんだぞ。ゲボゴホ」

私を助けてくれた彼は穏やかにかつ、静かに足を崩す様に言ってくれた。

でも、そんなことは出来ないっ!

「別に気を失うレベルの攻撃をされた事は気にしてないよ?ゲッホゲホ…俺の作ったこの薬があれば外傷は何でもすぐ綺麗に治るから…ウエッホエホ」

彼は頬をさすりながら隣に置いてあった塗り薬を見せてくれた。

ええ、その薬はさっき塗ってるのを見ました。だから傷の事で怒ってるんじゃないのはわかります。

「まぁ出来れば気を失った後、タオルケットでも何でもいいから体にかけて欲しかったかな。ゲッホゲホウェッホ」

ここぞとばかりに大きな咳をする彼。

そうですよね。そこですよね。私も掛ければよかったと思います。

だけど言い訳を聞いてください。

「それは悪かったと思ってます。本当にごめんなさい。でも、私の話も聞いてくれませんか?」

私は深く息を吸い、意を決して話し始めた。

「実はあの後、私も割とすぐ気を失ってしまったんです!なので…です…ね?」

「いやいや、だから怒ってないって…ゲボ」

「絶対嘘です!間違いなく怒ってますよね⁉︎その不自然な笑みが何よりの証拠かと⁉︎」

マズイ。勢い余って立ち上がってしまった。

「まぁまぁ、ケホ…落ち着いて」

彼は笑いながら私に座る様促す。

まずいまずい、昨日のこともあるし、これ以上私が危ないやつだと思われない様気をつけなければ。

「しかし、驚いたよ。君がいきなり俺の部屋に突っ込んできた時は。あ、いや、飛び込んで来たっていう方が正しいかな」

何だろう?何か違和感が…

そんな私の思いを知らず彼は話を続けた。

「ま、どっちにしろすごく驚いたよ。よくよく考えればあの時、10分起きるのが遅かったらほぼ間違いなく俺の身体は酷いことになってたよ(笑)あ、でも酷い体になって死んでた方がよかったかも(爆)」

「は、はぁ」

やる気の無い表情が一転し、大笑いしながら私がこの家に飛んできた時の事を説明してくれた。

にしてもひどく物騒な事を笑いながら話す人だな。

どんな顔すれば良いかわかんないんですが…

「いやでも本当、風邪も引かず、確認した通り大きな怪我もなくてよかった」

彼が表情を元に戻し話し出す。

「あ、その事なんですが…」

「ん?どったの」

彼が首をかしげた。

心なしかやつれてる様に見える。

「えっとですね、脇の辺りなんですけど…」

右腕を大きく上に上げて「ココです」と指差した。

「ありゃ、まだ血が出てるな。ちょっと待って」

そう言うとさっき彼が頬に塗っていた薬を渡してくれた。

「あ、でも大丈夫かな?」

「え?どういう事ですか?」

彼の通常の3倍に腫れた頬はこの薬を塗ったお陰で僅か10分程度で殆ど治っているのに…

切り傷はダメとかって事かな?いやでもさっき「何でも」って言ってたし、どういう事だろう?

「いやぁ、その薬、まだケモン族に使ってもらった事無いんだ」

は、はぁ。とため息のような返事をしながら一旦塗り薬を受け取った…

ケモン族というのはどちらかと言えば霊長類以外に類する動物に近い遺伝子を持つらしい。なので使われる薬は人間族の物だったり動物の物だったり、ケモン族専用のだったり色々ある…って、ん?

今なんて…?

「実はね、この薬が出来てすぐ怪我したドッパラを見つけてさ、傷の所にそれを塗ったんだけど…」

そこまで言うと急に黙りこくってしまった。

しかも彼の顔へ急に影が落ち始め視線が斜め下に移動している。どうやら何かあったみたいだ。

「その後…どうなったんですか?」

興味半分で聞いてみた。

「聞かない方がいいと思うけど、聞きたいの?」

どうやらかなり大変な事があったらしい。話すのを躊躇っている。

でも走り出した好奇心は止まれない。

「はい。聞きたいです」

そう答えると彼は軽く呼吸をしてから話し始めてくれた。

「実はね、薬を塗ったところの傷がどんどん腫れてきて…真っ赤に熟れた大きなトマトみた、ごめん!やっぱり言えない!」

「すみません。1番重要なとこしっかり言ってますよ?」

彼は最後まで言わずに(?)顔を勢いよく横に向けてしまった。

くだらない好奇心で話を聞くものじゃ無いなぁ。

彼の口調や態度からは嘘をついてるようには見えないし、何より現場が妙にリアルに想像出来る。

「ん?ちょっと待って下さい?」

「どうかした?」

いや、どうかしたかも何も…

「…もしかして、私で実験しようとしました?」

「あ、ばれ…いやいやそんなわけ無いよ?」

今、ばれた、って言いかけなかった⁉︎

あ、危ない…

あやうくマッドなサイエンティストに弄ばれるところだった!下手したらドッパラの二の舞に!

というかこの人…!

「さっきの偽りの咳といい、今の薬の事といい、貴方は何がしたいんですか⁉︎」

そう、彼の咳は途中からパッタリ聞こえなくなってしまっている。恩人を疑いたくは無いけどあの咳は多分嘘だ。

ちょっと口調が強くなってしまったけど今はそんな事気にしていられない。返答によってはもう一度宙に舞ってもらう必要がある‼︎

そう心に決めると

「ごめんごめん、少しふざけ過ぎた。本当にゴメン」

軽く笑いながら、だけど深々と彼は頭を下げた。

む、むぅ…流石にそこまでされたら怒れない。

「それで、どうしてこんな事したんですか?」

「あぁ、それはね…」

彼は気まずそうにポリポリと頭を軽くかいている。そんなに言いづらい事なんだろうか?

でも言ってもらわなきゃ。

「それは?」

「えっと、その…久し振りに女の子と話したからって言うか、何ていうか、その…」

カァッと顔を真っ赤にしながら言われた。

「え、は?」

(何言ってるんだろうこの人は?)

あまりに唐突であまりにおかしな事を言うので思わず変な声が出てしまった。

久し振りに女の子と話したから、何?

「いや、だから」

「はぁ、もう良いです…」

大きなため息が出てしまった。

命の恩人にこんな事思いたく無いけど、この人かなり変な人だ。

とっととこの部屋から出て行きたい。

って、アレ?何の話をしてたんだっけ。

「それで、どうする?その薬使う?」

あぁ、そうだった。

薬を塗るかどうかの話をしてたんだ。

どうしようかな…

「って、塗るわけ無いでしょう!こんな危ない薬!」

あやうくドッパラの二の舞に!

(ん?その後、ドッパラはどうなったんだろう?)

私の考えを見抜いたのか彼は

「あぁ、ドッパラならその後ちゃんとした獣医にしっかり診てもらったよ。今は孤児院で飼われてるからその辺も心配しなくても大丈夫」

「そうですか。それなら良かったです」

安堵し胸を撫で下ろした。

でも、何故孤児院に?何か事情でもあるのかな?

…でも聞くのはやめておこう。さっきみたいに、聞かなきゃ良かった。って事になるかもしれないし。

「んー、そうだな…あっ、そうだ!ちょっと待ってて。絆創膏持ってくるから。」

彼は立ち上がると薬箱らしきモノを取り出して箱の中をガサガサと探り始めた。

「あちゃー。ごめん。絆創膏切らしてたみたいだ。」

少しの間薬箱の中を探っていたがどうやら絆創膏が無かったらしい。

「10分くらい待ってて、すぐそこのコンビニで買って来るから。その間はそうだな…。少し待ってて」

そう言って彼はそさくさと部屋を出て行き1分もし無いうちに小さめのタオルを持ってきた。

「俺が絆創膏買って来る間コレで傷口抑えとくといいよ」

軽く息を切らながら持ってきてくれた真っ白いタオルを差し出した。

「い、いやいや、そんな大丈夫ですよ!そんなに大きな傷口じゃ無いですし、ほっといても治りますから!それに、って、あっ!」

そんなに白いタオルを血で汚すなんて事したくないです!

と言い切る前に彼は私の腕を上げて傷口にタオルを押し当ててしまった。

純白のタオルに薄っすらと血が滲んできてしまい綺麗な白が汚れて行く。

あぁ…言わんこっちゃない…って言って無いから良いのかな?いやいや、良くない良くない。

「怪我人が余計なこと気にしない。こんなもん絆創膏のついでに買ってくりゃなんの問題もないんだからさ」

また、私の心を読んだのだろうか、ニッコリとした彼に言われた。

そこまで言われたら、何も言え無いじゃないですか…

「あ、有難う御座います。タオルは後で買って返しますから…」

彼に押さえてもらっているタオルを自分で押さえ直す。

…私が思ってるほど変わった人ではないかもしれ無い。

考えを改めて

変なところはあるけど根は良い人

に、しておこう。

「さて、それじゃ俺は買い物に行ってくるね。そうだ、君もお腹減ってるでしょ?一緒に何か買って来るから、何か食べたいのある?」

言われた途端、体が反応してお腹がなってしまった。確かに何も食べて無い。って言うか最後にご飯を食べたのはいつなのか覚えて無いから表現があってるかは微妙だけど。

「何から何までありがとうございます。では、お言葉に甘えさせていただいて…」

言葉に詰まった。普通こういう時は自分の好きな物を頼むんだろう。でも、何も思い出せ無い。

「どうしたんだい?気を使わないで好きな食べ物を言って良いんだよ?」

「ええ、まぁ、そうしたいのは山々なのですが、その…何も思い出せ無いんです。」

「えっ?」

彼は間の抜けた顔をして気の抜けた声を出した。

「思い出せ無い、ってどういう事…‼︎ま、まさか…?」

「はい、そのまさかです。どうやら頭を打ったときに記憶がなくなってしまった…いえ、正確には忘れてしまったみたいなんです」

「えええぇぇぇ!」

立ち上がった彼は窓が揺れんばかりの声を上げた。

そんなに大きな声を出さないで欲しい…

正直、叫びたいのはこっちの方なのだから。

「って事は、君の名前は⁉︎」

「わからないです」

「歳は⁉︎」

「それもわかりません」

「スリーサイズは⁉︎」

「それはわかってても教えません」

どさくさに紛れてなんてことを聞いて来るんだこの人は。そんなの知ってたって教えるはずないじゃないか。

「あ、ああ!ごめんごめん、取り乱しちゃった」

そう言うと彼は2、3度深呼吸し座り直して、人差し指を上に向けた右手を前に出し「今からいくつかの質問をするからそれに答えて」と言ってきた。

私が頷くと数分間様々な事を聞かれた。

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

「よし、だいたいの事はわかった」

質問された時間も含め十数分後、彼の中で何かが納得いったらしい。

「あの…何がわかったのでしょうか?」

さっきから彼は1人でうんうん頷いているだけでなにも教えてくれない。

「どうやら君は自分に関する事だけ都合よく忘れてるみたい。そうそう、自己紹介がまだだったね。俺の名前は志島照史。友達からはアキって呼ばれてるんだ。これからはそう呼んでくれて構わないよ。というかそう呼ぶようにして」

いきなりの自己紹介と指定に思わず面喰らったが、とりあえず頭を下げながら「え、あ、わかりました。よ、よろしくです」と答えた。

「あぁそれと、これからは俺に敬語は使わなくて良いよ」

「え?いいんですか?」

「うん、あんまりそういうの好きじゃなくてさ」

よかった、敬語で話すのは正直大変だから凄くありがたい。

でも、何故いきなりそんな事を?と彼…ではなくてアキに聞こうとする。

が、その前にアキの口から放たれた言葉によって私の脳内が凍りついた。

「それとね、これから君は俺とこの家で住むから」

ホワッツ?今なんて?言われた言葉を理解出来ない。え?私と貴方が?一緒に??

同じ言葉を繰り返し頭の中で反芻し、ようやく理解出来た。

「えっ?私と貴方がこの家で一緒に住むって事は、一つ屋根の下で、って事で?」

「うん、そうだよ(ニコッ)」

「ええええぇぇえ〜!」

この時、アキの上げた声よりも大きな声で私は叫んだ。

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

今後の人生を左右する決意よりおよそ30分後、俺達はさっきとは別の部屋、所謂茶の間でコンビニの弁当とスナック菓子等の置かれたテーブルを挟む形で座り、これからの事を話し合っていた。

「それで、一緒に住む事に半ば無理やり決まった訳ですが…」

笑いながらーーと言ってもその笑いは正の方向から来るものではなく〔理解出来ないが取り敢えずは認める〕と言ったようなそんな笑顔でーー彼女は俺に話し始めた。

「正直、有り難いとも思ってるんです…の。もし貴方…アキさんが私を警察に連れて行ってたなら今頃私は精神病院かどこかに連れて行かれていました。そういう意味では、その、ありがとう…です。」

彼女からは先程の笑みは消え、代わりに不安な表情になっていた。

「うん、多分そうだろうね。だから俺は君と住もうと決めたんだ」

「ただ、本当にそれだけ?って思うの」

「えっ、う、あ、ああ、まぁ…そうだね。」

俺は平静を装い応えた。

「ハァ、それだけじゃないんで…のね。」

ため息をつかれてしまった。

(何故ばれた⁉︎受け応えも表情も完璧だったのに!)

「あの、声に出てるわよ?」

「え、声に出てた?」

《コクコク》

頷く彼女を見ながら俺は落ち込んだ。

そ、そうかぁ、声に出てたかぁ…

これじゃシラを切る事もできそうにないな。

そう思った俺は正直に話す事にした。

でも、それより先に念のためにしておかなければいけない事がある。

「まず、最初に約束して欲しいんだけどいいかな?」

「なんで?別に構わないけど…」

彼女はとても不思議そうな顔をしているが、俺は気にせず話を続けた。

「よかった。で、その約束して欲しい事だけど、と言っても大した事じゃないんだけどね。これから俺の言う事が終わるまで口を挟まないで欲しいんだ。それと、絶対取り乱したりしないでね?ケモン族の君を俺が抑えるのは多分無理だから。」

「…そんなに衝撃的な事を話すの?」

うん、そりゃそう思うよね。いきなりこんな約束してって言われたら色々疑うよね。

ので、せめて彼女にこれ以上の警戒心を与えないため笑顔を作り俺は話を続けた。

「いや、確かに大層な言い方はしたけど、実際はそこまで衝撃的な事を言う訳じゃないから安心して大丈夫だよ?」

「は、はぁ、そうならいいけど…」

イマイチ納得していない彼女をよそに、俺は本題に入ることにした。

「えぇとどういう風に話そうか…。ああ!そうだ!一つ聞かなきゃならない事があるんだった!」

「うわぁ!び、びっくりした…どうしたのよ、急に」

上半身を捻り驚いた表情でこっちを凝視する彼女。どうやらかなり俺の話を注意深く聞いていたみたいだ。

うん、この格好は非常に可愛い。

っと、そんな事はどうでもいい。

「あぁ、ごめんごめん。驚かせちゃったね」

軽く右手を出して謝り話を元に戻した。

「それで、その聞きたい事って?」

「いやね、さっきの質問の時に聞くのを忘れてたんだけど、君の名前どうする?」

「あー、確かに名前の事聞いてこなかったわね」

「だから君に名前を決めて欲しいと思うんだ」

俺は至極真面目な顔で話し始めた。

「このまま君も、君、君呼ばれるのは嫌だろう?勿論、君がこういう名前にしたい!って要望があるならその名前にするけど」

「それじゃあクッキーで」

「わかった、俺が名前をつける」

「なんでよ⁉︎」

「君はヌイか何かかい?」

彼女は「ひどいわね!そんな悪い名前じゃないでしょう⁉︎」とでも言いたげな顔をしているが仕方ない。クッキーなんて名前小動物にはつけられてもおよそ人間族やケモン族がつけられるものではない。

「そこまで言うなら何か良い名前つけてみなさいよ」

「あ、ごめん。うーん、そうだなぁ〜」

俺は顎に手を当て考えた。

少しの間頭をひねると一つだけ名前が思い浮かんだ。

「そうだ、それじゃあさメリュ、ってのはどうかな?」

「メリュ?」

「そう、メリュ。メリュジーヌっていう伝説上の生物からとったんだ」

彼女は不服そうな顔をしている。

「その、メ、メリュジューヌ?」

「メリュジーヌね」

うん、分かる。言いづらいよね。

「そう、そのメリュジーヌって生き物?はさどういう伝説に出てくるの?」

それもそうだ、つけられた名前が伝説を持ってると言うのなら気になるよね。

メリュジーヌはえーと、確か…

「メリュジーヌは上半身は美女、下半身は大蛇の生物で、伝説はね、んーと、完全に人間族の美女に化けてある男性の前に現れて婚約をむすんだんだ。その時、メリュジーヌは沐浴をする時絶対に覗かないように、ってその男性に言ったんだ」

「それで、どうなったの?」

「それでね、その男性に結局沐浴を覗かれちゃったんだ。そしたら下半身が大蛇姿の彼女、変身の解けたメリュジーヌがいた。約束を破られたメリュジーヌは約束通り別れよう。って言ったんだけど、結局は別れなかった。で、後ほど2人の間に子供ができたんだけどね、その子供は気性が非常に荒くて夫である男性が言っちゃったんだ。『気性が荒いのはお前のせいだ‼︎』って。で、それを苦にしたメリュジーヌは下半身が大蛇の元の姿に戻り何故か教会を破壊しそのまま姿を消した…。と言う話なんだけど…」

歯切れ悪くメリュジーヌについての伝説の説明を終える。

一通り聞いた彼女は

「1番言っちゃいけないことを言っちゃったのか、最低ねその人」

彼女は顔を薄らしかめながら語調を強く感想を言い放った。

「改めて伝説思い出してみるとなかなか酷い…。いや、これは無し。これならクッキーの方がまだマシだよ。」

「ううん、私の名前メリュに決めたわ」

「えっ⁉︎」

あんな伝説を聞いて普通その名前にするのか?

何かを決意した目でこっちを見る彼女。

どうしてだろう。

俺は理由を聞くことにした。

「自分で言っといてなんだけどさ、どうしてこの名前に決めたの?」

「どうしてって、そのメリュジーヌって人が可哀想だと思ったから。それだけじゃダメ、かな?」

「別にそれじゃダメってわけじゃあないけど」

いまいち腑に落ちない、と言おうとしたが「フンスッ」と鼻息荒く意気込んでいるメリュをみたらそんな事はどうでもいいように思えた。

「オッケー、それじゃ今日から君は」

「「メリュだ(ね)」」

見事にハモり俺と彼女ーーメリュは少し赤面した後、俺は元の道に戻った。

「さて、君の名前も決まった事だし本題に戻るか」

「はーい‼︎(キラキラ)」

余程名前が決まったのが嬉しかったのだろう、目をキラキラさせ名前を呼んで欲しそうにこっちに星を飛ばしている。

「何故前置きに君…あー、いや、メリュに…」

「はいッ‼︎」

「メリュにだね…」

「はぁい‼︎」

思わず頭を抱えてしまった。

「君に脅しともとれる言い方をしたかと言うと…」

(うるうる)

やめろ、泣きそうな目をしてこっちを見ないでくれ。

しかし、ここでまた名前を呼べば話は進まなくなるのでほっとく事にしよう。

「おそらく君は国に狙われる事になるからだ」

言った瞬間メリュの顔からふざけが消える。思ってた以上の事を言われたからだろう。

「なんで私が国に狙われなきゃいけないの?」

同然の疑問を投げ掛けてくるメリュ。

「それは君がまだ誰も知らないケモン族だからだよ」

正確に言えば俺以外に知らないだけど、そこはまぁいい。

「それだけで命を狙われるものなの?」

それだからこそだ。と口にしようとしたが理性がそれを止めた。

俺は目を閉じ考え始めた。

そう言い切ったらメリュはどう思う?

普通なら気にかけるどころの騒ぎじゃない。只でさえ記憶の混乱があるのにそんな事を言えば、下手したら今も残っている記憶がなくなってしまうかもしれない。それは言い過ぎにしても、全ての事に疑いをかけてこれから先、生きていても全てがとてもつまらないものになってしまう事は容易に想像できる。

これは言葉を選ぶ必要があるな…

「どうしたの?」

考えは未だまとまらないが、とりあえず目を開ける。とそこには心配そうに俺の顔を覗き込むメリュがいた。その距離は動けば互いの鼻が当たる程だった。

「おわぁっ!」

椅子に座っている事を忘れ勢いよく後ろに飛び退くとそのまま重力に引かれ頭を打ってしまった。

「うぐぐぐっ…」

「ご、ごめん!大丈夫⁉︎」

心配したメリュが近くまで来てくれた。

「いや、こっちこそごめん、大丈夫だ問題ない」

「良かった。ずっと黙ってたから少し心配になっちゃって」

メリュは正座している足に手をポン、とつき小気味の良い音を鳴らして立ち上がると俺に手を差し出した。

俺はその手を取り「よいしょ」とジジ臭い掛け声添えながら立ち上がり、ついでに椅子も元に戻した。

「手を貸してくれてありがとう」

そう言うと

「どういたしまして」

えへ、と笑うメリュ。

さて、不幸中の幸いと言うか、あのハプニングのおかげでいい考えが思いついた。

「うーんとね、命を狙われるっていうのは少し言い過ぎたかもしれない。要は君は珍しい種族のケモン族って事なんだ。それだとね、国の人が『どんなケモン族なのか精密検査させて貰ってもいいかな?』ってくるかも知れないしさ、それは嫌でしょ?」

言葉を慎重に選び出来るだけ印象の悪くならないようメリュに伝えた。

「そうね。何となく精密検査はしたくないかな」

腕を組み難しい顔をしながら目線を天井に向けるメリュ。

よし、上手く言えたみたいだ。任務…完了…。

「でしょ?って事で悪いけど暫くの間は君がケモン族って事は誰にも言わないでね?」

「分かったわ」

自分なりに納得してくれたらしい。既に難しい顔では無く普段通りのちょっと強気な目の可愛い顔に戻り、俺の言葉に頷くメリュ。

さて、これから…

「それよりも、いつになったら私の事ちゃんと名前で呼んでくれるの?」

満面の笑みを向け軽く首を傾けるメリュ。

君はそんな事よりももっと気にする事が他にあると思うんだけどなぁ…。

「ごめんごめん。それじゃ、これからよろしく、メリュ!」

そう言うと更に笑顔になったメリュが

「よろしくね!アキ!」

言い終わると、うふふ、と笑う。

つられて俺も笑うが若干顔の筋肉が引きつっている事に気づく。

さて、これから大変になるぞ。

『郵便でーす!』

突然外から聞こえてくる配達人の声。

「何か届いたみたいだから見てくるね」

一言メリュに言うと気分も新たにポストへ向かった。

足取りも軽く俺の心からは早まった行いをしようとする気は欠片も残っていなかった。

どうでしょうか?面白かったですか?

ヒロインの名前であるメリューーメリュジーヌという方は私の捏造では無く、実際に伝説があります。内容は本文に書いてあった通りです。

さて、次は3話目ですね。

え?「俺とみんなと時々魔物と」の3話目はいつ書くのかって?

その時の気分次第です(笑)

何言ってんだこいつは。とか思わないで下さいね。

さて、次の話では新しいキャラを出そうと思っています。

それではどちらが先になるかわかりませんが、お待ちしていて下さい。


…出来るだけ早く書くので…

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