十四年前の私から
詩ですが、長いです。ご容赦ください。
本棚の整理をしていたら
懐かしい一冊が出てきた
表紙と本体の折り目の部分に
紙が一枚挟まれていた
おそるおそる開いてみると
前略
四十歳の私
生きているでしょうね!
今の私は二十歳で何もない
いつも死んじゃいそうな
いやな気分で過ごしています
どうか四十歳の私は幸せで
物を書く仕事についていて欲しいです
ダンナと子供はいますか?
家庭を持つって、今の私が思った通りに
あなたは思っているでしょうか?
大変でノイローゼになりそうな、苦しい事ですか?
書きたいけれど、何を書けばいいのかわからない。
欲深すぎて何も見えないです
でも、はい上がってみせます
「自分を助けるものを助く」
元気で生き抜いてください
二十年後の私が今の私より強い人間であることを
信じています!
大好きだった作家が
二十年後の自分へ手紙を書いたと知って
私も、とペンを取ったのだった
作家は二十年前の自分へ返信を書いた
私も、とペンを取った
すまない、二十歳の私
四十歳まで六年フライングしてしまった
相変わらずだと笑ってください
あなたの手紙から聞こえてくるため息と
怖がりながら期待している心を感じました
あなたの質問に答えたいと思います
物書きを仕事にはしていませんが
詩を書いています
あなたが高校生の時に友達に笑われて
泣きながらやめてしまったことでした
何を書けばいいのかではなく
何を書きたいのか、に変えてみたら
書けるようになりました
どうやら物事は考え方ひとつで変わるようです
ダンナと子ども、いますよ
何ものにもかえがたい存在を得ることができました
家庭を持つってあなたの思った通り大変なことです
苦しいこと、たくさんあります
ノイローゼにもなりました
想像以上の喜びもたくさんありますから
どうかご心配なく
これから先のことをあなたと同じくらい
不安に思い、ため息をつき
怖がりながら期待しています
二十歳のあなたより強い人間かどうか……
二十歳のあなたが気づかなかった強さに
気づくことができた、では答えになりませんか?
この世に強い人間、弱い人間というのはなくて
両方をいったりきたりしながら
必死に闘って生きている人がいるのだと
思うのです
あなたから貰った「元気で生き抜いてください」の
言葉をお守りにしまっておきます
素敵な言葉をありがとう!
ペンを置いて、息をついた
紙をもう一枚取り出して、今度は
二十年後の自分宛にペンをとった