日常
維心の姿が見える。
「維心様…!」
維月は上空から、こちらを見上げて立つ維心を見付けて手を差し伸べて呼んだ。維心はこちらを眩しげに見ている。
「維月…」
維月は輿から飛び出した。
びっくりした回りを固める軍神達を気にも止めず、維月は維心に向けて両手を差し伸べながら飛び降りて行った。維心も微笑みながら両手を広げて待ち、維月はその腕に飛び込んだ。
「ああ維心様…維心様…!」
「維月…!よう帰ったの。」
維心は維月を抱き締めて、皆が立ち並ぶ中、維月に頬を擦り寄せた。
将維はそれを見て、母がどれほどまでに父を愛しているのかわかった。母は、父が居なければ駄目なのだ。父もまた、同じように母を求めている。だからこそ、父は自分に母を許すことも出来たのだろう。心が繋がっているとは、こういう事なのだ。
将維が降り立って維心に頭を下げる。維心はそちらを見た。
「主も、もうすっかり良いようであるの。何よりぞ。」
将維は言った。
「はい。父上にも、長い間お心を煩わせましたこと、お詫び申し上げます。」
維心は頷いた。
「良い。主は維月をこうして取り返してくれたのであるからの。我の維月を。」と、維心は維月の頬に愛おしげに触れた。「これこそ愛して来た維月。姿ばかりを愛していたのではないことが、此度の事で身にしみたことよ。では、主も戻るがよい。」
維心が維月の肩を抱いて、居間へ戻るべく歩き始める。頭を下げる将維に、洪が近付いて来て頭を下げた。
「では将維様、早速ではございまするが次の納涼の宴の事につきまして…」
将維は話を聞きながら会合の間へと足を向け、去って行く父と母を見やった。父は母をしっかりと腕に抱いて歩を進めている。母はそんな父に何か楽しげに話していた。そして時に、父の胸に嬉しげに頬を寄せ、父はまたそれを愛おしげに見守っていた。
愛情にはいろいろな形がある…。
将維は自分に言い聞かせ、また洪の話に意識を向けたのだった。




