表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スライムの召喚魔導師  作者: じぱんぐ
アスタール
11/136

8

 ルシルに一頻(ひとしき)り笑われた後、


「じゃあ、私は戻るわね」


と俺のことは散々話させておいて、彼女自身のことは何も語らずに、この場から離れていった。

 その後、なんだかこの区画にいた暇な生徒たちが俺の周りに集まってきて、


「お前、ルシルさんに説教喰らうとか羨ましいな、オイ」


「長い言い訳してたみてぇだが、そんなに面白い言い訳だったのか? ルシルさんを笑わせるなんて羨ましいぞ、オイ」


「俺も引き摺られたかったぞ、オイ」


 などなど、良く分からない羨ましがられ方を受ける羽目となった。

 皆が皆、『オイ』という言葉を語尾につけているのが、なんだか脅されている気分になってくる。


 この時のA-3区画では、『試合よりも一人の男子生徒の方が注目を集める』といった不可思議な現象が起きたとさ。







 合同実践演習はその後も滞りなく進行されていき、もうすでに一週間が経過していた。

 負けてしまった者には、もうすでに見物する以外には特にすることもないので、俺も他の生徒と同じく試合観戦をすることにしていた。

 観戦するのにあまり熱心な方ではないので、見たのはほとんど知っている人のものだけだったが。

 特に印象的だったのはルシルの試合で、とにかく観戦者の数が多かった。純粋にルシルが人気者ということもあっただろうが、男の半分以上はルシルの肌チラ目的だっただろうが。


 ちなみに肌チラ程度で興奮できるなんて変態ではないか、と思った人もいるだろう。が、仕方ないのだ。

 娯楽が少ない田舎では、性的な機会など滅多にないのだから。……誰に弁明しているのだろうか?

 まぁいい。話を戻そう。

 

 まぁそんなわけで人が多過ぎたせいか、途中にルシルが放った『エア・ブロー』という風の詠唱魔法のせいで、区画の扉から人が押し出されていくという光景が圧巻ということもあった。


 さて、現在では一通りの生徒が試合を終えて人数も半分くらいになっただろうか。

 ここら辺から、俺が合同実践演習のあまり好きではない一つの理由がでてくる。


――ナサニエルのことだ。

 前の合同実践演習の時に、あいつが負けた鬱憤を晴らすべく、いつも以上にいじめられたことをよく覚えている。

 試合でやられた怪我よりもひどかったこともあったっけ。


 それに最近ナサニエルと会ってないからその分、余計にやられないか心配なところでもあった。

 そう気分が落ち込んでいたところに、ちょうど良く『協力者』のジュストが通りかかる。

 さっそく彼に声をかけ、人のいないところでナサニエルのことを聞いてみると、


「ナサニエル? あぁ、アイツ最近学校を休んでいるみたいなんだよ。

 噂だと裏で特訓している、とか流れてたんだけど、試合当日の日にも休んでしまうから、皆驚いてさ」


 皆が驚くことも無理はなく、ナサニエルは貴族ゆえに自分を誇示することが多く、合同実践演習といった絶好の機会を逃すとは考えにくいのだ。

 欠席した理由としては、体調不良も考えられなくはないけれど、それにしては休んでいる期間が長過ぎる。

 何か重い病気を(わずら)っている、という可能性は無いだろうし。

 彼が休む前はピンピンしていた。じゃあ、怪我という線はどうだろう。

 とにかく、身体のコンディションが悪くて、そのせいで負けるのが恥ずかしいとか、そんな感じなのか?

 

 まぁ、何にしても、ナサニエルがいないとは、少し気分が良くなった気がする。

 聞きたいことは聞けたので、ジュストに礼を言って別れることにした。







「ルシルぅ~、負けちゃったよぉ」


「よしよし、(かたき)は私がとってあげるからね」


 演習所に戻って来たところで、ルシルとその友人の姿を発見する。

 ルシルと必要以上に関わってもいいことはないので、このままUターンしようとしたところで、


「バレッタさん! バレッタさん!!」


 という大きな声が聞こえてきたので、思わず反応して立ち止まってしまう。

 どうやら、叫んでいたのは少々頬が赤くなっている女教師なようで、彼女はルシルたちの方へと走ってきた。

 どうやら、呼ばれていた名前はルシルの友人さんのものらしい。


「ふぅ、ようやく見つけられた。何だか校長先生がお呼びになってるわよ?」


「え? 何か私しましたっけ?」


「さぁ? 私は詳しくは聞いてないから」


 そうですか、と管理棟の方へと小走りしていくバレッタさん。

 晴れない顔をしていたが、仕方ないだろう。負けて気持ちが落ち込んでいるところに、教師の呼び出しである。

 教師の呼び出しなんて、大抵は叱られたりすることが多いからだ。

 でも、校長がバレッタさんに用事とは一体何なのだろうか?

 スケベ(じじい)のセクハラ、ということはあるまい。


「可哀想に」


 バレッタさんの方を向き、手を合わせて彼女の幸運を祈った――ところでルシルに気付かれたのか、後ろからチョップを喰らう。

 人目があるからか、本気を出せないのだろう。

 女の子らしい動きのおかげで、威力は低くて助かった。


「……アンタ何してんの?」


「いや、ルシルさんの友人が可哀想だなぁ、と」


「死ぬわけじゃないんだから、不謹慎でしょうが!」


 まぁ、ここら辺の地域では、祈る行為ってのはよっぽど重大なことが起きたとか、教会に行って儀礼としてを行うくらいしかしないから、ルシルが怒るのも当然と言えば当然なんだけど。


「あんまり怒ると、俺と仲がいいと思われるぞ?」


 人目がある場合は、ルシルが体裁を気にするために、くどくどと怒ることはしない。

 こうして発破をかければ、すぐに離れていく。


「後で覚えてなさい?」


 眼光を鋭くするルシルに、目を吊り上げるジェスチャーをすると、今度は笑ったまま威圧してくる。

 ……うん、完全に火に油注いでらぁ。こんなことをしてしまうのは、たぶんリアナの影響を受けているからに違いない。


「次の試合、リアナさんだってよ!」


 噂をすればなんとやら、という言葉があったが、ちょうどいいタイミングであのイタズラっ子の名前が隣を駆け抜けていく生徒たちから聞こえてきた。

 あ、ルシルの表情筋がまたぴくぴくしている。今度のは笑いのではなく、不快な方なのかもしれないが。

 彼女は無言のまま、俺を無視して演習所のC-1区画に向かっていく。

 リアナが俺とは別区画で戦うと知った時には大変喜んだ情報ではあるが、初日で負けたために今は無関心に近いほどではあるが。

 俺としても、暇ということなので、何となくルシルの後を追うことにした。







 C-1区画は、試合がまだ始まっていないのに、満員といったぐらいに人で溢れていた。

 流石に前も同じような事態が起きたために、C-1区画内に既に人数制限が敷かれているのだが、俺はなんだか知らないけれど、ルシルのストーカー集団に仲間だと思われたのか、その人らと共にすんなりと入れてしまっていた。

 そのストーカー集団というのは、ローブのフードとなる部分を頭に被った、少し不審者にも見えなくない集団であった。

 が、今は暑い時期ということなので、日よけにフード自体を被る生徒は少なからずいたりする。

 まぁ、最も目元まで深く被っているストーカー集団はオッケーなのかは知らないけれど。

 ちなみに、俺がフードを被っているのは、リアナに見つからないためだ。

 リアナに見つかったならば、たぶんわざと俺に攻撃を仕掛けてくる可能性があるだろうし。

 実際にどうなるかは、試合を見ればよくわかることだろう。


「それでは――始めてください」


 教師の一言で試合が開始される。

 試合を行う二人は見つめ合ったまま、動かない。

 一人は警戒して、軽く膝を曲げた状態で。もう一人は余裕綽綽(しゃくしゃく)といった感じで腰に手を当てて、といった感じだ。

 二人とも女性で、身長としてはあまり変わらない。だが、美貌としてはあまりにもかけ離れていていた。

 それもそのはずで、一人はリアナという少女だからである。

 亜麻色の髪をたなびかせ、不敵に笑うリアナは本当に()になるくらいなのだ。

 それに体型もとても素晴らしいからか、チラリズムを拝むのに(はげ)む男共の熱中度も大分違うだろう。


 二人ともそのまま動かないので、このまま硬直状態が続くか、と思われた時、リアナの方から動き出した。

 動き出したとはいえ、とても戦闘状態には思えないほど、ゆっくりとした歩みで、である。

 リアナが動き出したのに釣られたのか、相手の方も移動を開始した。撹乱(かくらん)目的なのか、リアナの周りを素早く駆け回る。

 どうやら魔法を発動する際に出来る隙を(うかが)っているようだ。

 魔法の発動には集中力が必要で、あまりにも魔法の方に(かま)けていると、動かしている身体の方が(おろそ)かになってしまうからである。


「『ツイスター』!」


 先手を打ったのは、あちらの彼女の方からだった。素早く右手をリアナの方に構えて詠唱。

 その右手に光が収束した後、彼女の前から風が発生した。

 風系統ということもあり、不可視の攻撃。かろうじて風に舞う土煙が渦巻く風の全容を見せているくらいだ。

 右回転の渦巻きは、人くらいの大きさを形成しつつ、リアナに接近。


「『ツイスター』」


 それをリアナもすぐに同じ魔法を詠唱し、風を作り出す。大きさは彼女と同じくらいだ。

 そのまま、渦巻く風同士はぶつかり合い、消滅した。

 どうやら、リアナの方は左回転の渦巻きを作り出し、お互いの回転を打ち消しあったようだ。


「『ツイスター』!」


 消し去ったと思っていたら、相手はいつの間にかリアナの後ろに回り込んで詠唱をしていた。

 まぁ、こういった比較的集中力を使わない魔法を小出しにすることは、合同実践演習でのセオリーといったところだから、大して珍しくはない。

 使う集中力が少ない分、他のことにも集中力を分配することができるからだ。

 相手の彼女の今度の渦巻きは、さっきのようにリアナの方には向かわず、その場で停滞している。

 そんな様子も気にせず、相手はリアナを撹乱するように引き続いて、円を描くように周りを駆けまわる。

 リアナの方はというと、目で追うのが面倒になってきたのか、先ほど出来た風の渦の方を見て、何か考えているように見える。


 リアナの奴、完全に遊んでいやがる。

 顔から表情を隠しているから、他の人にはわかりにくいだろうが、俺にはリアナの目が笑っているように見える。

 これも毎日のように、リアナの顔を嫌って程に見てきた習慣のおかげ、と考えてしまうと悲しくなってしまうが、とにかく俺の方でもこちらに被害が出た際のために警戒はしておくことにする。


 そして、相手の方はリアナを警戒しながらも、またいくつか『ツイスター』を詠唱し、渦巻く風をいくつも作りだしていった。

 それは、ある種リアナが相手を舐めていたからこそ、出来た行為であった。

 同じ魔法を詠唱し、駆け回る彼女に、渦を観察したまま動きを見せないリアナ。

 退屈に見えた試合展開が、相手の彼女の準備が終えた頃に、それが急転する。

 作りだされた渦巻きは、全部で10といったところ。それがリアナの周りを円を作るようにして停滞しており、その間としては一人分くらいの間はないだろうか。

 その囲まれたというところで、動き回っていた相手の足がついに停止する。

 その間も、リアナは何かを考える仕草をしたまま、相手の方には注意を払わない。

 リアナのその行為に腹にきたのか、相手は少しだけリアナを見つめると、


「これで終わりにしてあげる!」


 と言い放ち、先ほどとは違って深い集中を始める。

 魔法を発動する際の特有の光が、彼女の右手を包み込むようにして照らし、そして一瞬後、それは弾けた。


「『エア・ルート』!」


 彼女の叫び声と共に、一陣の風が吹き寄せられる。風は先ほどよりも、弱いように思える。

 大きく腕を振るう彼女は、まるで腕を使って風を導いているかのようだった。

 風は彼女の導くままに、リアナへ――ではなく、その周りにある竜巻へと吹き抜けていく。

 どうやら攻撃の際に使うものではないようだ、と納得している間に、戦況に動きが出る。

 なんと、その『エア・ルート』とやらで、停滞していた渦巻く風が動き始めたのだ。

 それもリアナを中心にして、そこに迫っていくように。

 右回転をする風同士だから故なのか、互いに引き合うように。

 やがて、それは大きな渦となって、リアナを巻き込む。


「「「おぉっっ――!!!!」」」


 観客のこちらから、大きな感嘆の声が漏れる。

 ようやく試合に動きがあった、というのもあるのだが、どうやら俺の周りはそれは違った様子で興奮しているようで、


「もう少しだ」


「いいぞ、もっと吹くんだ!」


「そうだ、やれ。やっちまえ!」


 というような、彼女を応援しているのではなく、魔法で起きた風の方を応援しているようであった。

 それは何故か、というと――それはリアナがスカートをはいているからである。

 今まさに、囲まれていた風が迫り、逃げられなくなったリアナはそれが合わさった大きな竜巻に巻き込まれている。

 それは当然、吹き荒れる風なのだから、リアナの服をはためかせ――スカートを(まく)れ上がらせる。

 だが、リアナも自称器用といったところか、うまくスカートを押さえつけている。丈も、膝上だったのも幸いしたようである。

 激しく動くような競技でスカートを履いてくるとは。ま、まぁスカートを勧めているのは俺の母だったりするんだけど。

 なんでも、「スカートの方が可愛いから」、という理由だけらしい。


 さて、強くなった風はというと、こちらにも影響を与えており、観戦している女生徒のローブの裾が舞いあがり、男共の望む肌チラが連発している、といった感じになっていた。

 ルシルなんかは特に気にした様子ではないが、先ほどから膝あたりが見え隠れしている。まぁ、短いズボンを穿いているから、それまでなんだけれども。

 

 俺の方も、風のせいで被っていたフードが取れ、視界が良好になっていた。

 だからなのか、リアナの様子にいち早く気付けたのは。


「……これは――、――――」


 強い風で、言葉は断片的でほとんど聞こえなかったが、何やら企んでいる様子が見えた。

 

 弱まる様子を見せない竜巻が形成されて、何秒経っただろうか。

 このまま勢いが弱まらなければ、いくらアイツとはいえ、強い風の中では呼吸がしにくいだろうし。

 呼吸困難なんかで、気絶するんじゃないかと少し心配し始めたところで、ようやくリアナの方に動きを見せた。

 風の音で何を言っているのか聞き取れなかったのだが、どうやら詠唱したのか、彼女の右手に光が集まっていく。

 そして、弾けた途端、吹き荒れる風の中にまた新しい風が介入した。

 だが、規模としては小さく、大きな竜巻を乱すところまではいかず、少しリアナの身体の位置がズレたといったところか。

 だが、それがリアナの狙いだったようで。

 そのズレた位置というのが――そう竜巻の中心であったのだ。

 渦を形成する場合、その中心はほぼ無風地帯になる。つまりは、竜巻の安全地帯の中に入ったというわけだ。


「で、でもその中からは出られないでしょう?」


 少し焦りを見せる対戦者の彼女。引き続いて魔法を発動させようとしていたのだが――どうやら今回はリアナの方が早かったらしい。


「『アップドラフト』」


 風に流れて聞こえた詠唱は、確かそんな感じだった気がする。

 だが、そんな声も一瞬で耳に入ってきた空気の音でかき消されてしまった。

 音の正体は、どうやら対戦者のではなく、リアナが起こした魔法の方であろう。

 あろう、という疑問形なのは、俺が実際に確認出来ていないからだ。

 暴風が、強すぎる。――こんなもん、リアナじゃなきゃ考えられん。

 思わず頭を(かば)うように、腕を前にするけれど、それでもなお強い風が下から打ちつけてくる。

 それは、長い時間だった。

 体感的には、たった数秒だったかもしれない。

 だがしかし、暴風に(あお)られ、身体が吹き飛ばされそうになりながら、なおかつ呼吸が出来ない状態になると、ここまで苦しいものだとは思いもしなかった。

 暴風が収まり、ようやくといったところで顔を上げてみると、そこはもう酷いものだった。

 観戦していた生徒は、皆仰向けに倒され、体重の軽そうな少女なんかは軽く数メートルは飛ばされて区画を仕切る壁に押しつけられている。

 一番ひどかったのは、リアナと対戦していた彼女。中央にいたはずの彼女が、なぜか観戦していた生徒の方まで飛ばされていたのだ。

 格好としてはあられもなく、天に尻をむけて四つん這いっぽくなっていた。当然、そんな格好をしているから俺も見てしまうわけだが……。

 夏場で服装も薄手の生地だからか、尻のラインがくっきりと出ているような。

 少しパンツもといショーツの形が浮き出ているのも、なんだかエロティックだ。

 そうして俺が少し興奮している間に、次々と試合が行われていた位置から遠い順に意識を取り戻し、そして俺と同じ光景に目を入れていく。

 最初は皆、唖然(あぜん)としていたものの、徐々に顔から表情が蘇っていく。

 ある者は歓喜し、ある者は興奮し、ある者は涙を流した。


「エロの神様が舞い降りた」、と。


 そしてまたそれと対極の表情をした者も少なからずいる。まぁ、考えなくてもわかるが女の方だ。

 軽蔑した眼差しで男共の方を(にら)みつけると、動ける者はすぐに対戦者の彼女の方へと助けにいっていた。

 そんな様子を見ているのが気まずくなり、顔を逸らしたところで、リアナと目が合ってしまった。

 それにしても、リアナの奴はあんな暴風の中で平然としていたのか、余裕そうな顔をして、乱れた髪を手櫛(てぐし)で直していやがった。


「いやぁ、予想外に強すぎたものだね」


 苦笑いをしながら、リアナがこちらに近付いてくる。


「壁に囲まれてあったせいで、風が逃げなかったからかな?」


「……」


 俺の方としては、もう苦笑いすら浮かべられなかった。

 先ほど、驚異的な風を生み出したリアナとの距離が縮まってきているのだ。

 笑えるはずがないだろう。


「せっかく実験したいことがあったのだが……?」


 残念そうな顔をしてこちらをじっと見てくる。

 嫌な予感。そうならないためにフードを被っていたのに……いや今は風で飛ばされて被っていないのか。


「こちらに来て、手伝ってくれないかな?」


 ニタリ、と笑って俺の腕を引いていくリアナ。そんなリアナに、先ほどの暴風のせいで身体が強張(こわば)ったままで、逃げられない俺。

 

「御手柔らかにお願いします……」 







 あの後、右回転の『ツイスター』を横に倒した状態で、その風に俺は延々と吸い寄せられるという自体に陥ることになった。

 吸い寄せられないように抵抗すれば、下を狙ってズボンを剥ぎ取られ、

 また抵抗しないで身を任せれば、『ツイスター』の中で三半規管を狂わされ、たとえ吐いてもなお続くという地獄を見せてくれました。


 俺はこの日、ルシルを超える悪魔に出会ったことに、心の奥底から後悔した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ