部活が決まらない件 ~inテニスclub~
「はぁっはぁはぁ」
「みんな頑張って!あとちょっとだから!」
「はいぃぃい」
「…はぁはっ うぃーす」
バレー部に入ることをあきらめた直後。今私たちはこの広大な敷地を全力で走らされている。
なぜかって?
うちらのクラブ巡りーのサポート役として同行している先輩が、どうもガチの音ゲー中毒だったようで。
バレー部の試合中にピコピコやってたら、時間忘れてて次のテニス部に間に合わなくなったらしい。
(だからって、最近登校時の山登りに慣れてきたばっかりの中一に全力で先輩について走ってこいは無理!)
うちは二年間陸上やってたのと、四歳からずっと水泳やってるから体力あるほうでよかったけど、何人かもう限界超えてるって。せんぱぁぁぁい!ちゃんとしてくださいぃぃ!
みんなでゼハゼハ言いながら走り続けること五分。
足を止め、膝に手をつき
「やっどづいだぁぁあ」
みんな崩れ落ちるように座り込み、肩で息をしている。
一方で音ゲー中毒の先輩は元気いっぱい!
「ごめ~ん!おくれちった~」
「はいはい。またどーせ音ゲーしてたんでしょ?」
「せいか~い!よくわかるね!」
「あんたのことだから当たり前でしょ?てかこの部活自治会員多いから静かにしなさい?」
「はーい。さ~せ~ん」
…とまあこんな感じ。他の先輩の反応を見てきた感じ、この先輩が音ゲー中毒なのは周知の事実らしい。
すると、テニス部の部長が声を上げた。
「J1のみんな大丈夫?ごめんねうちの部員が。こいつ中毒やねん。だいじょぶそやったら始めるけど行けるー?」
(うわあ。いたわりからのこの断れない雰囲気での強制。テニス部聞いてた通りやな。)
とは言いつつもはじまったクラブ巡り。中毒の先輩は練習に参加してどこかに消えた。
やることは副部長の先輩が出してくれる球をラケットで相手コートに飛ばすこと。
テニス経験者であるうちは難なく三球全部クリア。と、
「君経験者?」
「あ、はい」
「おぉ!じゃテニス部入ってね待ってるよぉ!」
うわ…。また直々勧誘。めっちゃ圧かかってて怖いんやけど。わあどおしよ。
再び勧誘を食らい困り果てる優莉。その視界に
「あっ!大森さん!?」
が現れた。
大森千早はこちらに気づくとにこっと笑い手を振った。
「優莉ちゃーん!テニスで待ってるよぉ~!」
(うそだろ…。テニスの人材獲得の仕方。素質のある人材は人脈を使って精神的に惹かせ手に入れる。そんな情報聞いたことないぞ。そうか、このやり方知ってる奴はやってる方か、やられて吸収されたかのどちらかじゃん。ありゃりゃ)
自分の自慢の情報網をかいくぐられた上に、精神的に狩られた優莉はクラブ決めに一層頭を悩ませるのでした。
(明日コーラス部か。どんなんなんやろ。スパルタではないっぽいな。楽しいかなぁ?)
明日でほぼ部活が決まる。多分。優莉は果たして決められるのか。
(絶対決めないとなぁ。まじで仮入とかどおしよ?)
まだ悩むことが必要そうでした。今後に期待です。