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第20話 勃発

 『愛の天使』を出たライムたちは、引き続きフェスティバルを楽しんだ。

 愛する父親からのプレゼントに身を包んだルビーとマリンは、これ以上ないほど幸せそうにしている。

 そんな娘たちの姿にライムも微笑み、周囲の人々は誰しもが振り返るほどだった。

 そうして、仲睦まじく大通りを歩いていたハワード一家だが、見知った人物と遭遇する。


「ん? おぉ、ライムたちじゃねぇか。 奇遇だな」


 『野良猫の隠れ家』のリーダー、『頂者』ことカイル。

 彼の背後には、大勢の幼い子どもたちがいた。

 それともう1人、ルビーたちより少し年上くらいの少女。

 深い青のウェーブヘアーと、慈愛に満ちた緑の瞳が印象的。

 身長は160センツ台半ばほどで、胸元は豊か。

 双子とは違うデザインだが、水色のワンピースを着ている。

 こちらの少女が何者か、ライムは若干気にはなったが、ひとまず挨拶を優先した。


「お久しぶりです。 先日は有難うございました」

「何言ってんだよ。 世話になったのは、俺の方だって。 あんときは、マジで助かったぜ」

「ふーん、良くわかってんじゃない。 あたしたちのお弁当を分けてあげたんだから、感謝して当然よね!」

「調子に乗らないで、ルビー。 わたくしたちは、ミスリルを譲ってもらったのよ? お陰でエステルさんとも知り合えたのだから、お礼を言うのはこちら側でしょう」

「う……それは確かに……」

「へぇ。 あのミスリルをどうするかと思ってたが、お前たち『真武』に会ったのか。 そいつは、良い判断だったかもな」

「『真武(ジェニュイン)』? もしかして、エステルさんの二つ名ですか?」

「そうだぜ、ライム。 あいつは鍛冶系ギルドのリーダーだけどよ、実力は半端じゃねぇ。 作った武器の試し斬りの為に、1人で魔塔に行くくらいだ。 大抵は中層で引き返すみてぇだが、俺の見立てでは行こうと思えば上層まで行けるんじゃねぇかな」

「エステル、そこまで強かったんだ……」

「尋常ではない迫力はあるけれど、想像以上ね……」

「はは! 『真武』は少し変わってるからな。 だが、あいつに装備を手入れしてもらえるなら、間違いねぇ。 あとは、嬢ちゃんたち自身が強くなるだけだな」

「ふん! 言われなくても、そのつもりよ!」

「わたくしたちは、まだまだ成長してみせます」

「おう、俺も期待してるぜ」


 快活な笑みを湛えるカイル。

 『頂者』とまで呼ばれる実力者にもかかわらず、それを全く鼻にかけていない。

 人間性も素晴らしいと感じたライムは、今後もカイルとは良好な関係を気付きたいと思った。

 すると、そこで何かに気付いたような顔になったカイルが、後ろで子どもたちの相手をしていた少女を呼び寄せる。


「サシャ、ちょっと来い」

「はい? カイルさん、どうしたの?」

「いや、こいつらに紹介しておこうかと思ってな」

「あ、そう言うことね。 えっと、わたしはサシャと言います。 一応、『野良猫の隠れ家』のメンバーで、主に子どもたちの世話をしてます」


 体の前で手を重ねて、ペコリと頭を下げるサシャ。

 物腰が柔らかく、なんとなく人を安心させる雰囲気を持っている。

 そんなことを思いつつ、ライムも無難に挨拶を返そうとしたが――


「ご丁寧に有難うございます。 わたしは――」

「ライムさんにルビーさん、マリンさんですよね?」

「……ご存知でしたか」

「カイルさんから土産話として聞かせてもらいましたし、わたしも集落には良く行きますから。 実は、『月夜の歌声』で一緒になったこともあるんですよ」

「そうでしたか、それは失礼しました」

「いえいえ。 わたしは地味で目立ちませんし、覚えてなくても仕方ないです」

「そんなことはありませんよ。 サシャさんはとても可愛らしいと思いますし、子どもたちを包み込むような優しさを感じますから」

「あはは。 お世辞でも嬉しいです、有難うございます」


 本気にしていないサシャは、愛想笑いをするに留めた。

 しかし、事実として彼女の容姿は決して悪くない。

 そのことを自覚していないサシャを、ライムは少しばかり残念に思ったが、自分が口出しするべきではないと思い直す。

 補足するなら、ルビーとマリンの機嫌が若干傾いた方が問題だった。

 娘たちの嫉妬深さに胸中で溜息を漏らしつつ、ライムは話を変えるように言葉を紡ぐ。


「ところで、カイルさんたちはどこに行こうとしていたんですか?」

「ん? あ、そうだった。 いや、実は今からイベントがあるんだよ。 それにガキどもを連れて行こうと思ってな」

「イベント? それって、どんなことするの?」

「お、興味あるか、ルビー? 簡単に言えば、大道芸とか演劇とか、あとは歌ったりもするみたいだぜ」

「いろいろあるのですね。 お父様、よろしければわたくしたちも、観に行きませんか?」

「そうだな。 ルビーも構わないか?」

「あ、あたしは別にどっちでも良いけど、仕方ないから付き合ってあげる」


 プイっと明後日の方を向きながら、強がるルビー。

 だが、明らかにソワソワしており、行きたい気持ちが隠せていない。

 そのことにライムとカイルは苦笑し、マリンは呆れ果てていた。

 何はともあれ、方針を固めた『宝石姫』と『野良猫の隠れ家』は、大所帯で移動を開始する。

 カイルに案内された場所は噴水広場で、彼らが到着する頃には、かなりの人だかりが出来ていた。

 それでも、なんとか全員が固まって観れる場所を確保し、子どもたちは今か今かと始まるのを待っている。

 その様子をサシャは優しく見守り、カイルは楽し気に笑っていた。

 一方で――


「パパ! まだかな!?」

「そろそろ予定時刻だから、もう少しだろう」

「ルビー、少し落ち着きなさい」

「あ、あたしは落ち着いてるわよ!? ただ、ちょっと聞いてみただけじゃない!」

「わかったから、大声を出さないで。 恥ずかしいわ」


 ルビーのはしゃぎように、マリンは額に手を当てて嘆息した。

 2人の様子にライムは苦笑しつつ、開始のときを待つ。

 すると、一際大きな音楽が鳴り響き、奇抜な格好の男性が姿を現した。

 ライムたちは知らないが、トライアでは人気の大道芸人。

 言葉を発することはなく、自身の芸と動きで観客を魅了する。

 前口上もなく始まった芸は、かなりのハイレベルだった。

 ジャンルとしては、ジャグリングやバルーン芸、パントマイムなど。

 観客たちは大いに沸き立ち、ルビーも笑ったり驚いたり、大きなリアクションを示している。

 マリンは静かだったが、しげしげと観察して興味深そうだ。

 それはライムも同じで、単純に見事な出し物だと感じている。

 その後の演劇や歌もクオリティが高く、感動した双子は瞳を潤ませるほど。

 思わず苦笑したライムが視線を移すと、子どもたちも大層満足そうにしており、カイルとサシャは顔を見合わせて笑っている。

 こうしてイベントは大成功に終わり、解散の流れになったのだが、そのあとに思わぬ事態が待っていた。


「よう、『頂者』。 今日もガキどものお守りとは、ご苦労なこったな」


 人垣を掻き分けてカイルの前に立った、ヒサツグ。

 言葉に反してニヤニヤ笑っており、小馬鹿にしていることが窺えた。

 彼に付き従うようにアヤナとリン、ヒナミの姿もあり、一気に近辺が騒然とする。


「ぜ、『絶黒』!? なんで、こいつらがここに!?」

「今日はコロシアムで大会じゃなかったの!?」

「幹部も一緒だし、とにかく関わらないようにしねぇと……」

「まさか、フェスティバルを邪魔するつもりじゃないよな?」

「そんなことしたら、魔塔管理局からヤバいくらいの罰則があるはずよ! 流石に、そこまでの無茶はしないでしょ!」

「『頂者』に声を掛けてたけどよ、何のつもりなんだ……?」


 楽しい雰囲気を破壊する威力を秘めた、『絶黒』と言う存在。

 ルビーとマリンは戦闘態勢に入れるように備え、それはライムも同様。

 ただし、今回の標的は自分ではないと知り、取り敢えずは静観することにした。

 対するカイルはサシャと子どもたちを下がらせて、面倒臭そうに後頭部をガリガリと掻きながら言い返す。


「別に大したことじゃねぇよ。 少なくとも、お前に絡まれるよりは楽だ」

「くく、そうかよ。 じゃあ、俺の要求もわかってんのか?」

「わかりたくもねぇが、どうせ戦えってんだろ? 最近は大人しいと思ってたけどよ、まだ諦めてなかったか」

「当たり前だろうが。 テメェほどの獲物、逃す手はねぇよ。 今まではのらりくらり躱されてたが、今日と言う今日は付き合ってもらうぜ」

「やだよ、メンドクセェ。 何度も言ってんだろ? 最強の座が欲しいんだったら、喜んで譲ってやるってな。 だから、もう俺に付き纏うな」

「はん、その上から目線が気に入らねぇんだよ。 譲るんじゃなくて、俺の方が強いってはっきりさせないと気が済まねぇ。 その為には、やり合うしかねぇんだよ」

「マジでメンドクセェ奴だな。 どっちにしろ、俺にそのつもりはねぇよ。 わかったら、サッサと帰れ。 俺たちは、フェスティバルを楽しんでんだからな」


 追い払うように手を振ったカイルが、ヒサツグに背を向ける。

 しかし――


「精々、気を付けろよ」

「あん?」

「西区画には、人身売買してるような奴もいてな。 特にガキは、高く取引されてるらしいぜ」

「……何が言いてぇんだ?」

「なぁに、単なる忠告だ。 テメェが魔塔に潜ってる間に、ガキどもが攫われねぇか心配でな」


 忠告と言いながら、ヒサツグの顔には邪悪な笑みが浮かんでいる。

 アヤナも怪し気に微笑み、リンは澄まし顔、ヒナミはニコニコと笑っていた。

 多くは語っていないが、彼らの真意は明らかである。

 そのことを正確に察したカイルは、厳しい顔付きでヒサツグと向かい合い、サシャは怯える子どもたちを抱き寄せて、眦を吊り上げて言い放った。


「そんなこと、わたしが絶対に許さないわ! カイルさんがいなくたって、絶対に子どもたちは守ってみせるから!」

「雑魚が吠えてんじゃねぇよ。 それとも、一緒に売られてぇか? テメェくらいの女も、需要は多いからなぁ」

「そ、それでも、わたしは子どもたちを――」

「もう良い、サシャ」

「……ッ! カイルさん……」

「『影狼』、約束しろ。 俺がお前の要求を飲んだら、そのクソ野郎どもを魔塔管理局に突き出すってな」

「あぁ、良いぜ。 テメェが勝負を受けるってんなら、全員始末してやるよ」

「始末じゃねぇ、突き出せってんだよ。 そいつらを片付けただけで終わるか、わかんねぇんだからな」

「ちッ……メンドクセェが、仕方ねぇ。 そんじゃ、コロシアムに行くぜ。 言っておくが、手を抜くんじゃねぇぞ? それがわかった時点で、この話はなかったことにするからな?」

「まったく、厄介な野郎だぜ……。 サシャ、すまねぇがあとのことは頼んだ」


 踵を返したヒサツグたち『絶黒』に、カイルは溜息をつきながら付いて行く。

 彼の背中をサシャは涙目で見つめ、子どもたちも不安そうにしていた。

 そのとき――


「待て」


 鋭い声が、辺りに響く。

 声量はさほど大きくなかったが、この場にいた誰もが聞き逃さなかった。

 野次馬連中だけではなく、カイルとサシャたちも驚きに目を丸くして、声の主に振り向く。

 そしてヒサツグは、口元で大きく弧を描き、心底楽しそうに視線を転じた。

 そこに立っていたのは、泰然としたライム。

 ルビーとマリンも何かを決意した様子で、父親を真っ直ぐに見つめていた。

 注目を一身に浴びた彼は、ヒサツグに向かってはっきりと告げる。


「わたしが代わりを務めよう」

「ライム!?」

「大丈夫ですよ、カイルさん。 子どもたちには、貴方が必要です。 一緒にいてあげて下さい」

「けどよ……」

「ヒサツグ、文句はないな? もしこの案を断ると言うなら、わたしは今後何があっても、お前の相手をしない」


 ライムの言い様を聞いた周囲の反応は、様々だった。

 たかが新人収集者が、『頂者』の代わりになると言う傲慢さ。

 しかも、『宝石姫』として戦っているのは娘たちで、彼は基本的に手を出さない。

 だが、その反面で、何故だか妙な説得力がある。

 ライムがヒサツグと戦うに値する使い手だと、理屈ではない部分が認めていた。

 そして、当のヒサツグはと言うと、舌なめずりしながら即答する。


「くく、その言葉を待ってたぜ。 やっと、テメェとやり合えるときが来たな」

「お前……最初から、ライムが狙いだったのか?」

「まぁな、『頂者』。 テメェと戦いたいのも嘘じゃねぇが、今は後回しだ。 こいつの実力が知りたくて、仕方ねぇんだよ」

「ちッ! 食えねぇ野郎だ。 ライム、本当に良いのかよ?」

「カイルさん、こうなったからには致し方ありません。 わたしとしても、いつまでも絡まれるのは面倒ですし」

「その気持ちは、よ~~~~~くわかるぜ……」


 ゲンナリした様子で、肩を落とすカイル。

 そんな彼に苦笑したライムは、ルビーとマリンに振り向いた。

 ルビーは柳眉を逆立てており、マリンは底冷えする面持ち。

 それがヒサツグの悪辣さに対するものだと悟ったライムは、娘たちの頭を優しく撫でて言葉を連ねる。


「フェスティバルの途中にすまないな。 この埋め合わせは、またさせて欲しい」

「気にしないで、パパ! それよりあいつを、けちょんけちょんのボッコボコにしてやってね!」

「謝る必要など、微塵もありません。 むしろ、お父様の勇姿を拝見する機会にさせて頂きます」

「有難う、2人とも。 そう言ってもらえると助かる」


 双子に微笑み掛けたライムは手を止めて、改めてヒサツグと対面した。

 彼は上機嫌に笑っており、ライムは止む無く誘いに乗ろうとして――


「悪いけど、そこまで」


 1人の人物が、止めに入った。

 またしても一斉に注目が移動し、その人物が誰か明らかになる。


「おいおい! 今度は『導きの乙女』かよ!?」

「何がどうなってんの!?」

「知るかよ! もう訳わかんねぇ!」

「取り敢えず逃げた方が良いか!?」

「でも、どうなるか気になっちゃう!」


 ゆっくりと歩み寄って来た、シャルロット。

 アンとドゥーも一緒だ。

 更なる大物の登場に、噴水広場に大きな衝撃が走っている。

 しかし、シャルロットは欠片も気に留めることなく、マイペースに口を開いた。


「ライム、久しぶり」

「久しぶりと言うほどじゃないと思うが」

「そう? わたしは、ずっと会いたかった」

「そうなのか。 ところで、どうしてここに? 南区画では、集会が行われていると聞いていたが」

「うん、まだやってる。 でも、わたしは興味ないし、それどころじゃないから」

「それどころじゃない?」


 まるで、ここには2人しかいないかのように、淡々と会話を続けるライムとシャルロット。

 混沌とした空間において、彼らの周囲だけが平穏。

 だが、そこに割り込む者がいた。


「引っ込んどけよ、『千里眼』。 テメェはお呼びじゃねぇんだ」

「『影狼』、それはこっちのセリフ。 わたしはライムと話してるの、邪魔しないで」

「ふざけんな。 俺たちは今から、やり合う約束をしてんだよ。 そうだよな、ライム?」

「そうだな。 すまない、シャル。 今日のところは失礼する」

「待って」

「どうした?」

「もうすぐ」

「もうすぐ……? 何がだ?」


 要領を得ないシャルロットの言葉を、ライムは不思議に思った。

 ところが、次の瞬間には全てを理解する。


「キャーーーッ!?」

「ま、魔物だ! 魔塔から、魔物が出て来やがった!」

「はぁッ!? そんな訳……って、マジかよ!?」

「し、しかも、初層だけじゃなくて、下層の魔物までいるじゃない!?」

「東区画に迫ってるみたいだぜ! 早く逃げねぇと!」


 遠くからの声を聞いて、ライムの意識が切り替わる。

 周囲を見渡すとほとんどの者がパニック状態だったが、その中でも動けそうな数名に呼び掛けた。


「ルビー、マリン、行けるか?」

「勿論だよ、パパ!」

「何が起きているかわかりませんが、放ってはおけません」

「それでこそ、わたしの娘だ。 わたしもあとから行くが、今は迅速に動かなくてはならない」

「オッケー! じゃあ、先に行くね!」

「お父様の娘として、精一杯戦って来ます」

「有難う、くれぐれも気を付けてくれ」

「うん!」

「かしこまりました」


 ライムの意図を汲んだ双子が、魔塔武装を手に駆け出す。

 2人を優し気な目で見送った彼は、次いでカイルとサシャに振り向いた。


「カイルさんたちは、子どもたちをお願いします。 東区画に攻めて来ているらしいですが、どこまで本当かわかりません。 臨機応変な対処が求められます」

「いや、俺は打って出るぜ。 ガキどもは、サシャがいれば充分だ」

「任せて、カイルさん。 この子たちには、指一本触れさせないから」

「……わかりました。 では、カイルさん、よろしくお願いします」

「おうよ! 蹴散らして来てやるぜ!」


 勝気な笑みを浮かべたカイルが、戦場に向かう。

 彼の参戦はかなり心強いが、ライムの本音としては子どもたちが心配だった。

 しかしシャルロットが、そんな彼の不安を打ち消す。


「戦えない人は、南区画に避難させる。 だから、ライムは心配しなくて良い」

「シャル……。 有難う、助かる」

「気にしないで。 その代わり、またお話しよう」

「あぁ、わかった」


 例の如く眠たげな顔付きながら、しっかりとした足取りでシャルロットが歩み出す。

 サシャと子どもたちを引き連れて、アンとドゥーには何か指示を飛ばしていた。

 捉えどころのない女性だが、意外と指揮を執るのが上手いのかもしれない。

 何はともあれ懸念材料が減ったことに、ライムはホッとしていたが、流石に彼らを扱うことは出来かねる。


「どこに行く、ヒサツグ?」

「帰るんだよ」

「手を貸してくれないか?」

「嫌に決まってんだろ。 こちとら、約束を反故にされてんだぞ?」

「緊急事態なんだから、どうしようもないだろう」

「知ったことか。 狙われてんのは、東区画だろ? 俺らには関係ねぇ」

「本当にそうか? 別の区画に拠点を構えていようと、トライアの住人であることに違いはない。 お前だって、東区画に用があることもあるだろう」

「うるせぇな、今は機嫌が悪いんだ。 どうしても止めようってんなら、力尽くでやってみろよ」

「まったく……。 わかった、好きにしろ」

「言われるまでもねぇぜ」


 言葉通り、不機嫌そうに立ち去るヒサツグ。

 幹部の3人は、相変わらずだった。

 ライムとしては、協力を得られなかったのは残念だが、これは想定内。

 やるべきことはやったと思い直した彼は――


「行くか」


 力強く足を踏み出す。

 こうして、トライアは戦場となった。

ここまで有難うございます。

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