表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第1章完結】最強ホムンクルスは娘を守り抜く――過保護は止まらない。父と双子の魔塔都市トライア攻略  作者: YY


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/25

第13話 あいこ

 太陽が仕事を終え、完全に眠りに就く頃、ライムたちは魔塔を出た。

 ギリギリではあったが、目標を達成出来たと言える。

 ところが――


「まったく……。 誰かさんのお陰で、随分と遠回りしてしまったわ」

「し、しょうがないでしょ!? 地図で見たら、あっちの方が近道だったんだから!」

「だからと言って馬鹿正直に選ぶだなんて、馬鹿馬鹿しいほどの馬鹿ね」

「何回馬鹿って言ってんのよ!?」

「4回よ」

「数えてんじゃないわよ! 大体、あんただって最終的にはオッケーしたじゃない! あたしだけの責任じゃないでしょ!?」

「わ、わたくしは、本当は反対だったのよ? ただ、貴女があまりにもしつこかったから……」

「あ~! 今更そんなこと言うなんて、卑怯! 卑劣! 陰険! 陰湿! 胸小さい!」

「小さくないわよ!?」

「じゃあ、それ以外は認めるのね!?」

「そう言うことではないでしょう!?」


 出入口で喚き合う、美少女双子。

 尚、魔塔は常時開放されているので、今も多少なりとも人目はある。

 そのこと自体は気にしないライムだが、娘たちの喧嘩を放置はしない。


「約束その1」

『……ッ!』

「元気なのは良いことだが、そろそろ行こう。 魔塔管理局で、換金や手続きをする必要があるからな」

「も、申し訳ありません、お父様……」

「ごめんね、パパ……」

「わかってくれたら、それで良い」


 端的に告げたライムは、2人の頭をポンポンとしてから歩み出す。

 魔塔内では基本的に娘たちに先を譲るが、外では彼が引っ張って行く立場だ。

 もう幾度となく通った、巨大な白い建物に入る。

 ちなみに、魔塔管理局も常に受け付けしている為、夜遅くても問題はない。

 ただし、シフトの関係で誰が応対してくれるかは、その日によって違うが――


「お疲れ様です、ライムさん。 ついでに、ルビーさんとマリンさんも」


 にこやかに出迎えてくれたのは、当初から世話になっているリーナ。

 流石に毎日と言う訳ではないものの、彼女に当たる確率は今のところ高い。

 ライムとしてはその程度の認識だったが、ルビーとマリンはそれで済ませられなかった。


「またあんたなの!? て言うか、ついでって何よ!?」

「やめなさい、ルビー。 この人に噛み付いたところで、無意味だとわかっているでしょう?」


 わかり易く怒っているルビーに比して、マリンは至極落ち着いて見える。

 もっとも、こめかみはヒクヒクしているが。

 ミスリルの件を境に、リーナは2人をからかうようになり、こう言ったシーンは度々見掛ける。

 とは言え、本当にちょっとしたおふざけ程度なので、ライムは黙認していた。

 ただし、気苦労は絶えない。

 これ見よがしに溜息をついた彼は、軽いジト目をリーナに向けて言葉を連ねる。


「お疲れ様です、リーナさん。 今日は換金のお願いと、報告があって来ました」

「換金と……ご報告ですか?」

「えぇ、これを見てもらったら早いかと」


 そう言ってライムが差し出したのは、エルダートレントの小枝。

 事情を把握したリーナは、一瞬だけ目を丸くして、笑顔に戻った。


「初層の踏破、おめでとうございます」

「有難うございます。 エルダートレントを倒したのは、ルビーとマリンですが」

「そーよ! わかったら、少しは褒めなさい!」

「わたくしは、褒められるほどのことではないと思っていますが、賛辞を贈りたいなら受け取ってあげますよ?」

「はいはい、良く頑張りました」

「適当過ぎじゃないッ!?」

「いい加減、腹が立ちますね……」


 リーナからぞんざいな扱いを受けて、ルビーはまたしても吠え、マリンは視線の温度を下げている。

 そんな彼女たちを、リーナは楽しそうに眺めていたが、ライムが無言で抗議していることに気付いて、対応を改めた。


「ふふ、冗談ですよ。 実際、素晴らしいと思います。 何せ、過去最速ですからね」

「え? 過去最速?」

「何の話ですか?」

「初層を踏破するまでの早さです、ルビーさん、マリンさん。 挑塔者になって、これほど短期間でクリアした人は、記録に残っていません」

「へ~! それって、凄くない!?」

「他人と比べるものではないけれど、1つの指標として大きいかもしれないわ」


 過去最速で初層を突破したと知って、ルビーはガッツポーズを取り、マリンは得意そうに髪をかき上げた。

 ライムも嬉しいのは間違いないが、同時にちょっとした懸念を持っている。

 しかし、その思いに蓋をして、ひとまず話を進めることにした。


「それではリーナさん、これでわたしたちは開拓者になれるんですね?」


 ここはすんなりと、イエスの返事が欲しかったライムだが、早速懸念していたことが現実となる。


「それなのですが、すぐにはお返事出来かねます」

「ん? なんでよ?」

「ルビーさん、エルダートレントを撃破して20階層をクリアするのは、開拓者になる最低条件なのです。 厳密に言えば、素行の良し悪しなども審査の対象となり、総合的に判断されます」

「それでしたら、問題ありません。 わたくしとお父様は、素行が良いですから」

「ちょっと!? なんで、あたしを除け者にするのよ!?」

「自分の胸に聞いてみたら?」

「む~!」

「落ち着け、ルビー。 マリンも、あまり意地悪するな」

「パパ~、だって~!」

「も、申し訳ありません……」


 涙目のルビーと、恥ずかしそうに俯くマリンの頭を優しく撫でつつ、ライムはリーナに目を向けた。

 変わらず笑みを浮かべており、内心を探るのが難しいが、今はその必要もないと結論付ける。

 双子の頭から手を離したライムは、真っ直ぐにリーナを見据えて尋ね掛けた。


「リーナさん、わたしたちの素行に問題があるとは思えませんが、それでも即答は出来ないんですね?」

「はい、その通りです」

「なるほど。 もしかして、攻略が早過ぎましたか?」

「……流石はライムさん、お見通しですか」

「え? 何? どう言うこと?」

「攻略が早いといけないのですか?」

「2人とも、先ほどリーナさんが、素行の良さも審査対象だと言っていただろう? わたしたちの活動期間が、まだその判断基準に達していないんじゃないかと思ってな。 更に言うなら、攻略が早過ぎたのには裏があると思われている可能性もある」

「何よそれ!? あたしたちは、ズルなんかしてないわよ!」

「わかっていますよ、ルビーさん。 ですが、魔塔管理局としては、他の挑塔者の目も少しは気にして頂きたいです。 あまりにも突出したギルドは、反感を買い易いですから」

「……つまり、あまり調子に乗らず、謙虚にしろと言うことでしょうか?」

「マリンさん、そう取って頂いても結構です。 心配せずとも、今だけですよ。 皆さんの実力が周知されればされるほど、常識外の早さで攻略しても、誰も疑いを持たないでしょう」

「う~、なんか納得出来ない!」

「わたくしも、今回ばかりは受け入れ難いです」


 リーナの説明を聞いても、ルビーとマリンは不平を漏らした。

 ライムとて心情的には似たようなものだが、ここで何を言っても仕方ない。

 どうせならプラスに考えようと決めた彼は、娘たちの頭をもう1度撫でて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「ルビー、マリン、今日のところは帰ろう」

「ですが、お父様……」

「マリン、気持ちはわかるが、リーナさんを責めても解決はしない。 ここは大人しく退いて、暫くのんびりしよう。 トライアに来てから、ずっと魔塔に挑んでいたからな」

「言われてみれば、そうかも……。 じゃあ、パパ! デートしよ!」

「待ちなさい! そう言うことなら、わたくしだってお父様とお出掛けしたいわ!」

「何よ! あとから割り込んで来ないでよね! あんたは、お留守番してなさい!」

「お断りよ! かくなる上は……」

「今日こそ、あれで決めるしかないわね!」


 同時に向かい合った双子。

 その様子をリーナは興味深そうに見ていたが、ライムは溜息を堪えられない。

 すると、遂に開戦の火蓋が切られる。


「じゃん!」

「けん!」

『ぽん!』

「あい!」

「こで!」

『しょ!』


 燃えるような闘志を秘めたルビーと、静かに熱いマリンによる、じゃんけん合戦。

 単純な方法ではあるが、明確な勝敗が付くと言う点では間違っていない――が――


「リーナさん、換金をお願いします」

「え? 放っておいて良いのですか?」

「どうせ、決着は付きませんから。 時間が勿体ないので、その間に済ませてしまいましょう」

「あぁ……理解しました」


 サッサと歩き出したライムに付いて行きながら、苦笑するリーナ。

 その背後では双子によるあいこが続いており、いつしかギャラリーが出来るほど。

 換金を終えたライムは娘たちの元に戻り、頃合いを見計らって切り上げる。

 そうして最後まであいこが続き、結局のところ、後日3人で出掛けることになるのだった。

ここまで有難うございます。

面白かったら、押せるところだけ(ブックマーク/☆評価/リアクション)で充分に嬉しいです。

気に入ったセリフがあれば一言感想だけでも、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ