表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/25

プロローグ 双子

手に取って頂き、有難うございます。

第1章はトライア到着→ギルド設立→初層攻略→そして祭の最中に起きる『異変』が主な流れです。

面白いと思って頂けたら、ブックマークや評価ポイント、リアクションや感想で応援して頂けると嬉しいです。


用語解説:センツ=cm

 さして広くもない、暗い室内。

 そこに設置されたベッドに、1人の女性が横たわっていた。

 口元は笑みを描いているが、生気が感じられない。

 まさに死の淵にあり、間もなく息を引き取るのだろうと察せられる。

 対するは、傍に佇んだ絶世の――と付けても良いほどの美少年。

 歳の頃は、20歳に達していないくらい。

 身長は180センツほどで、線は細いが引き締まって見えた。

 肩より少し長い銀髪と、知性を感じさせる翠眼。

 黒のパンツに白のカットソー、黒のロングコートを身に纏っている。

 直立不動で立ち、その顔には完全なる無表情が浮かんでいた。

 互いに無言の時間が続いていたが、やがて女性が力を振り絞るように口を開く。


「ライム」

「はい、メジス様」

「貴方に、最後の命令を与えるわ」

「かしこまりました」

「良い子ね。 ……あの子たちを育てなさい」


 そこで初めて動いた女性――メジスは、部屋の隅のベビーベッドで寝ている、2人の赤ん坊を見やった。

 今はスヤスヤと寝息を立てているが、そのうち大声で泣き出すことを知っている。

 煩わしいと思っていたその騒がしさを、もう感じることが出来ないと悟ったメジスは、寂しさから思わず苦笑した。

 しかし、少年――ライムは一切取り乱すこともなく、直立不動のまま淡々と言葉を発する。


「申し訳ありません。 それは、戦闘用ホムンクルスである、わたしの専門外です」

「そう言うと思ったけど、貴方なら大丈夫よ。 わたしの最高傑作、究極のホムンクルスである貴方ならね」

「わたしに、子育ての能力は備わっていません」

「でも、知識はあるでしょう? そう言う風に作ったんだから。 あとは実際に試行錯誤して、きちんと育ててあげて。 あの子たちの父親は、貴方なのよ」

「……かしこまりました」

「有難う。 これで、心置きなく逝けるわ。 疲れたから、少し休むわね」

「お休みなさいませ」


 そう言い残して、メジスは眠りに就いた。

 二度と目覚めることのない、永遠の眠りに。

 ライムはそのことをわかっていたが、涙1つ流すことなく踵を返す。

 向かった先は、ベビーベッド。

 先ほどまでは天使の寝顔だった2人が、今は泣き喚いている。

 それを受けてもライムの表情は変わらなかったが、どことなく困ったように見えるのは、気のせいだろうか。

 その後、彼はメジスに与えられた知識を基に、子育てに奮闘することになる。

 愛情のようなものはなく、命令だからこなすに過ぎない。

 当初は上手く行かないことも多く、頭を悩ます日々だった。

 だが、学習能力の高いライムは徐々に順応して行き、赤ん坊たちが何を訴えているか、言葉を話せなくても把握出来るようになる。

 そうして、いつしか暇さえあれば、赤ん坊を見守るようになっていたが――


「……名前を決めていなかったな」


 今更過ぎることに気付いた。

 本来ならメジスに決めてもらうべきだと思ったライムだが、彼女はもう他界している。

 仕方なく自分で考えることにした彼は、2人の顔をジッと見つめた。

 紅髪と蒼髪の、双子の女の子。

 今のところそれくらいしか情報がなく、ライムはどうしたものか迷う。

 そのとき視界に映ったのは、メジスが生前集めていた宝石の数々。

 そこからインスピレーションを得たライムは、我ながら安直だと思いながら名前を決めた。


「キミがルビーで、キミはアクアマリン……は長いから、マリンだ」


 両手を差し出して2人の頬に触れながら、はっきりと告げる。

 すると赤ん坊は、まるで気に入ったとばかりに笑った。

 都合の良い解釈だと思いつつ、ホッとしたライム。

 このとき彼は、初めて父親としての自覚を持った。

 そうして、少しずつ愛情が芽生えて来たライムは、全身全霊を持ってルビーとマリンの育児に力を注ぐ。

 これが、今から約17年前の出来事。

ここまで有難うございます。

面白かったら、押せるところだけ(ブックマーク/☆評価/リアクション)で充分に嬉しいです。

気に入ったセリフがあれば一言感想だけでも、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ