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第19話 実は……

 一条教授のラボで全てを聞いた翌日……『あのこと』をチーフにだけは話しておかなきゃな……そしてムツミさんにも……。

 

「チーフ、昨日……実はね……」

「はい……」

「オレ、近い将来……女子ったままになるらしいんだ……いつかはわからないけど……」

「……それって……!」

「TS娘じゃなくなって、ただの女の子になっちゃうんだ……だからお店にもいられ」

「店長は店長です! TS娘じゃなくっても、店長はわたしの店長ですっ!」


 いきなり泣き出して抱きついてきた……。

「それに、男が女子ったんだからTS娘ですっ!……ずっとわたしの店長のままでいてくださいぃぃ〜」

 お互い女子のままで、しかもわたしの方が背が低いから逆に抱きしめられてるような格好だ……胸、柔らかいな……チーフの顔……せっかくの可愛い顔が涙でぐしゃぐしゃだ……。

「うん、わかったから泣くな……」

「うっ、うっ、うぅっえ〜」

 チーフってオレのこと?……五年以上も一緒にいるのに部下としてしか見ていなかったオレは莫迦だ……しばらくそのまま抱き合っていた……温かい……。

 

 ムツミさんのスケジュールを確認……。

 今日は丸一日本社……午後は予定が入ってないな……十三時に相談があると社内chat入れて……。

「午後ちょっと本社に行くんで、チーフお店しばらくお願い……」

「……はい……」

 

 ミーティングルーム2で昨日の一条教授との話の内容を、こちらは詳細に話す。

 それと店長の件も……。


「ん〜そっかぁ……TS学園がねぇ……怪しいとは思ってたんだけど……。それよりしのぶちゃん、店長の件心配してるけど男が女子になるんだから、それが恒常的であっても立派なTS娘じゃない?……男に戻らないだけで。TS証明書にだってそう書いてあるはずよ?」

「え、ええ?」

「自分がTS娘なのにTS娘保護条例に書いてある定義、忘れたの? たしか【TS娘

(てぃーえすむすめ)とは、可逆・不可逆を問わず少女もしくは女性になった男性】ってあったでしょ?」

「あれ……そうでしたっけか? く、詳しいですね……」

「当たり前じゃない、ネイルサロンTSのオーナーなんだから……それにしのぶちゃん! あなた私の一番弟子なんだから、そうそう店長から外すなんて思わないでよね!」

「は、はい……」

「ま、ショックはショックだろうけど……レベルが上がったくらいに考えた方がいいじゃない?」

「レベルですか?……さすがムツミさん、考えがポジティブ……」

「あなたがネガティブなのよ……」

 

 お店に帰ってから、チーフとはお互いちょっと気まずい感じでギクシャクしてたけど……。

 お店のクローズ処理をした帰り際……「オレ、おまえのこと……好き……かも……」

「い、いきなり告らないでください! ……わたしだって今日の今日まで店長のこと……だなんて気がついてなかったんですからっ!」

 肝心なところがごにょごにょと……。


「そのツンデレなところ、いつものチーフだな……」

「ふ、二人だけのときはチーフはやめてください……」

「じゃ……ラムちゃん、男でいるのは短い間かもしれないけど、よろしくな……」

「な、何言ってるんですか! 女の子になっても店長のことはず〜っと……」

「ず〜っと……なに?」

「それ以上言わせないでください! もうっ、先に帰ります!」

 

 あ〜帰っちゃった……。

 オレ、もうしばらく……男でいたい……。


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