表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

第17話 戻れない?

 土曜の晩、お風呂上りで髪を乾かしてからまったり時間にいつもの様にネイルオフ……。

 

 お店でのネイルオフはジェルオフマシンを使ってジェルリムーバーつまり溶剤のスチームでオフしているけど、自宅ではコットンにジェルリムーバーを染み込ませてオフしている。

 時間かかるけど、自宅でのまったり時間だから趣味みたいなものかな?


 で、オフを始めるけど――

 ん? 普段ならものの数秒で動悸、頭痛、めまいが始まる……のに……始まらない。

 な、なんで〜?

 少し時間、かかり過ぎじゃない?

 いつもよりだいぶ時間が経ってから動悸、頭痛、めまいが始まり……そのまま寝入ってしまったようだった……。

 

 *

 

「あんたさぁ、TS回数の限度、『999回』って知らないの?」と、女のしのぶ。

「えっ? なにそれ?」と、男の忍。

「あんた、バカァ? 左手首の数字、見てごらんなさいよ!」

 そこには『052』とタトゥーの様に数字が浮き出ている。


「なんだよ、これ?」

「それはあと、五十二回であんたのTS能力がなくなるってこと。

 その数字が『000』になったら、たぶん男か女のままになる……ってことなのよ、わかった?」

 三桁……九百九十九回ってことは、コンスタントに女子り初めて十二年以上……年に五十数回、ネイルの修行を始めた二年くらいは百回以上女子ってるから……残り五十二回はほぼ合ってる?


「……ということはこのままだと一年以内に男か女のどっちかになる……?」

「そうよ、あんたそろそろ男か女のどっちかを選択しなきゃいけない頃ってことよ」

「え〜! そ、それって!」

 

 *

 

 はぁ、はぁ、はぁ……。

 自分の声で目が覚める……左手首を見る。当然夢で見たような『数字』はなかった……。

 でも、今のは……正夢?

 最近女子化するにも、男に戻るのにも時間がかかっているのは気になってたけど……。

 次の検査待たないで、近いうちに一条教授に聞いてみないといけない……かな。

 昨日の夢見が悪かったせいで、それからはまんじりともせず翌日の日曜は丸一日ぼ〜っとして過ごした。

 

 月曜もあまり元気がない様に見えたらしく、チーフからは「店長……体調でも悪いんですか?」と気遣われてしまう。

「あ、いや……大丈夫だよ。気遣ってくれてありがとう……」

「……やっぱり店長、変ですよ……お礼言うなんて店長らしくないです」

 チーフとは五年以上一緒にいるので、ちょっとしたお互いの変化はお見通し……か。


 その日は運良く指名も入らなかったので男のまま過ごしたけど、翌朝予約表を確認すると、カネコさんのヘアサロンで午前中1件予約が入っていた。今回は秋山さんじゃないな。

 木曜日午後、一条教授にアポとって行ってみようかな?……夢の内容も気になることは気になるけど、男に戻る時間……確実に延びている原因を検査前に聞いておきたい。


 一条教授の連絡先は……よかった、スマホに入っていた。電話してみよう。

「もしもし、中島忍です。生体検査室の一条教授でいらっしゃいますか? あ、今お時間よろしいですか?」

「おー中島くんか〜 去年の夏以来だね。久しぶり! 大丈夫だよ、今日はどうしたの?」

「ありがとうございます……ええ、ちょっと気になることがありまして……急なお話で申し訳ないのですが、明後日木曜日の午後、お邪魔したいのですが?」

「ん〜 ちょっと待ってて……木曜、木曜……あ、十五時以降なら会議も終わって時間とれるな……で、気になることって?」

「電話ではちょっと……」

「そうか……じゃ、木曜日に来た時に聞くことにするよ」

「はい、よろしくお願いします……」

 

 *

 

 木曜の朝、チーフに「今日カネコさんのお店の後、ちょっと寄るところがあって、もしかしたら直帰するけど、クローズ処理お願いしてもいいかな?」と伝える。


「はい、大丈夫ですよ……どこに行かれるかだけ聞いてもかまいませんか?」

「うん、ちょっとTS学園に……」

「……ここのところ店長具合悪そうでしたしね……はい、わかりました」

「ごめんな、よろしく頼むよ……じゃ、女子るから準備できたら呼ぶんで、右手とコーデ、ヘアお願い……」

「はい……」

 今日のお客様はご新規だったけど、なんか正装のJKスタイルで行く気分じゃなかったんで、スーツにトレードマークのポニテとリボンだけは外さずOL風にメイクしてもらった。


「あら〜 あなたがTS娘さんなのねぇ〜 わたし間近でTS娘さんに会うのって初めて!」

「恐れ入ります……」

「ね、男のときと女のときって、身体だけ変わるの? それとも心も女の子って感じになるの?」

「い、いや、身体だけで、心までは……でもできるだけ女言葉で話す様にしてますけど……」

「へぇ〜」

 色々聞いてきてちょっと面倒な方だけど、そこは接客のプロなんで笑顔を絶やさずサービスをする……。

 

「ごめんね〜しのぶちゃん、さっきの方、煩かったでしょ? お得意さんなんだけど……話好きで……」

「いえいえ、うちのお店はTS娘を売りにしてるんで、間近でTS娘見たさにいらっしゃるお客様が多いんで、慣れてますよ……宿命ですかねぇ」

「……今日はしのぶちゃん、ちょっと元気ないみたいだけど大丈夫?」

「あ、だ、大丈夫ですよ。あははは」

 カネコさんも鋭い方だ……もう十数年の付き合いだしね。


「ではカネコ社長、今日は午後寄るところあるんで、失礼いたします」

「あ、そう〜? お昼一緒に食べようかと思ってたんだけど……」

「いえ、ちょっと食欲ないんで申し訳ありませんが……」

「大丈夫なの?気をつけてね……じゃ、また来週も予約入ったらお願いね〜」

「は〜い、では失礼しま〜す!」

 

 最後は空元気で、ヘアサロンを出る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ