表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/30

第14話 ヘアサロンでのサービス

 カネコ社長とムツミさんが話し合い、ヘアサロンでネイルサービスをするのは当面は週一で、ということに決まった。

 カネコさんのヘアサロン『ビューティーNAO』は月曜、木曜が割とお客様が少なく、火曜日は定休日。うちのお店は火曜、木曜が割と少ない……。というわけで木曜日にサービスをする。

 わたしがカネコさんのお店に行くんだけど、予約が入ってない日は中央店にいることになる。

 

 *

 

 そんな水曜の午後、明日十一時に一名予約が入ったと、ムツミさん経由で社内chat連絡があった。

 お客様はお得意様で、『行きつけのサロンでTS娘がネイルサービスしてくれるの〜?』と、一番最初に予約を入れてくれたらしい。


「チーフ、今日閉店後に女子るから手伝ってくれない?」

「はい? いいですけど、カネコ社長のところは明日でしたよね?」

「うん、一番最初のお客様でお得意様と伺ったんで、今日から肌のコンディションとか整えておきたいし……明日は定番で行こうかと」

「あ〜 ほぼすっぴんのJKですね〜」

「ま、まぁそんなとこ……任せたよ〜 あとは今夜は保湿して早めに寝てお肌の調子、整えなきゃ」

「……店長、ほんっと女の子っぽくなってきましたねぇ〜」

「ち、ちがう……これはお客様のためであって……」

「はいはい、わかりました〜 すっぴん風メイクとヘアセットは明日の朝にしますね」

 

 *

 

 翌朝、チーフにメイクとヘアセットをしてもらう。

 コーデは定番の紺ブレ、ブラウスに赤のリボン、ピンクと茶色系のチェックのプリーツスカート。

 スカート丈は四十五センチ……短い? 少しくらいパンツ見えてもいいじゃん。黒ハイソ、赤茶色のペニーローファーに、もちろん大きい黒リボンで高めのポニテ……いわばわたしの正装だ。え? それってただのJKじゃないかって?

 いいじゃん、好きなんだから〜

 

 キャメル色のショート丈ピーコートを着て、カネコさんのお店へ向かう。

「おはようございます! お世話になります、ネイルサロンTSの中島です。今日はよろしくお願いいたします」

「しのぶちゃん、いらっしゃい。こちらこそ今日はよろしくね」とカネコ社長。


「よろしくお願いしま〜す」ヘアスタイリストさんたちも挨拶して下さる。

「お客様、もうしばらくしたらいらっしゃるんで……お名前は秋山さん。フレンチでお願い、って言ってたかな?」

「フレンチ、定番で人気ありますからね。わたし、フレンチ得意なんですよ! 細めでも太めでも、お好みお聞きして決めますね。任せてください!」

「頼もしい〜良かった……」

 

 ♪〜♪〜♪ ドアベルが鳴り、秋山様と思しき方が来店。


「あ、いらっしゃい秋山さん」とカネコ社長。

「おはよう〜 きょうはネイルお願いね!」

「あ、秋山さん、こちら、ネイリストのTS娘、中島しのぶさん」

「はじめまして。わたし、なか」

「え……ユ、ユイ? ……じゃ……ない……わね……」

 

 デザインオーダーをわたしに伝えてからは、秋山様は黙ったままだった……。

「ごめんなさい……。しのぶさんでしたっけ? だいぶ前に死んだ娘に……」サービス受けながらぽつりと言う……。

 

 サービスをしていくうちに、どうやらわたしが数年前に亡くなった娘さんに『なにか』が似てるらしいと伺った。

「目の色も髪も背格好も全然違うけど……。なんていうの? 雰囲気……ちがう……なにか……」

「でもわたし……TS娘で男ですよ……」

「……それって……男も女も変わらないんじゃないかな……?」と秋山様。

 わたしは黙ってフレンチを描いていく……つもりだったけど……。

「そう……かもしれませんね……」

 

 サービスが終わった秋山さん「今日はほんとうにありがとう……」

「こちらこそご指名いただき、ありがとうございました」深々とお辞儀をする。

「じゃ、しのぶさんまたよろしくね、また話し聞いて……くれる?」

「はい……わたしでよければ……」

「じゃ、カネコさん、また……」秋山様、お会計を済ませてお帰りになった。

「……しのぶちゃん?」

「わたしTS娘で良かった?……もし本当の女の子だったら……」

 カネコさんは何も言わずうなずいてくれた……

 

 秋山さんのサービスだけで終わりだったけど、しばらくカネコさんのお店にいたくて飛び込みの新規のお客様一名にサービスして、店には寄らず帰宅した……。

 

 喜んでくれたのが嬉しかった……けど、哀しかった……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ