存在の意味
カークサスはアーリンに呼びかける際にarnという音を使ったが、そのうちにarになり、今では皆からアル(正しくはアゥ)と呼ばれるようになった
彼らは話し好きで、何かしら議題について常に議論していた
博識で公平で多角的な考えを持っているのに、どこかユーモラスなところがあった
優しくて温かいカークサス
アル(アーリン)は平和だった頃のライラ星の、亡くなった祖父と話しているような感覚になった
肉体を失ってもなお、こうして存在している
アルは宇宙に生かされたのだ、とカークサスは宇宙の真理についてアルに説いた
(この宇宙に存在する全ては赦されている)
(善なるものも、悪なるものも全てだ)
(全ては宇宙の一片である)
悪も赦されているの?リザギアンのような者たちも?
アルには悪の存在の意味が理解できなかった
(さよう、悪なるものも宇宙が宇宙である意味を為す)
(宇宙は陰陽により成熟する)
(宇宙が完全であるために、全ては存在する)
???
カークサスがまくし立てるのでアルはお手上げ状態
[Haha…面白い話ですね、アルにはもう少しゆっくりと教えてあげてはいかがですか]
天使といわれる翼のある人たち
カークトゥによく顔を出す
カークサスと天使はいつも世間話?のような談笑をしては暇つぶしをしているようだった
他にも翼のある龍、精霊たちが立ち寄る
カークトゥという星そのものが、物質的な存在ではないので、宇宙間、次元間を自由に移動できる存在だけが行き来することができる
中でも、天使はよく訪れる
仲が良いのか悪いのか、天使は皮肉っぽいところがあり、アルからしたらカークサスと天使の議論は言い争いをしているように思えることもあった
[アル、ご機嫌よう]
[カークサスの皆は、アルのことをかわいらしい子のように思っているのですよ]
(アルが我らと巡り合わせたのも宇宙の采配)
(全ては大いなる意思のままに)
天使とカークサスが難しい話を始めたので、アルは話についていくのを諦めた
存在することが、赦されていること?
悪の存在も?
そもそも悪とは何だろうか?
すっかりカークサスの影響を受けて、真理の探究や考察ばかりするようになってきた自分が可笑しくなった
ライラ星のアーリンは、ライラ星と共に尽きた
私はカークトゥのアルとして生まれ変わった
何も知らなかった自分はもう居ない
小さな平和な世界から大きな宇宙へと投げ出された
無限に広がる宇宙について学び、悪の存在の意味を、自分という存在理由を知りたい
存在を赦されたのならば、この世界に存在する意味を知りたいと、アルは思った
(宇宙の果てなど無い)
(全ては宇宙の内に存在する)
宇宙の果てはどこなの?と、アルは素朴な疑問を投げかけた
(宇宙は無限に拡大する)
(そなたの心のように成長し続けるのだ)
(宇宙はエネルギーの塊である)
(アル、そなたの願いは?)
今度はカークサスから質問される
私の願いは、平和な世界
元のライラ星のような平和な宇宙
皆が幸せに生きられる穏やかな世界
[では、どうすればそのような願いを叶えられると思いますか?]
天使が聞く
私はまだ何も知らない
自分がエネルギー体ということも知らなかった
悪が何なのかもわからない
宇宙を、この世界をもっと知りたい
カークサスのように全てを知りたい
真実を知れば、答は自ずと導きだされると思う
[いいでしょう、アルの願いはわかりました]
[それでは、宇宙連合に参加してはどうですか?彼らは広く宇宙全体で活動しています]
[宇宙連合のハシュターに、アルのことを推薦しましょう]
カークサスと天使の間で勝手に話は進み、アルは宇宙連合の入隊テストを受けることになった
カークトゥ星から連合入りすることは、かなり久しぶりのことらしくカークサスたちは少しだけ高揚しているようだった
宇宙の移動と案内役を兼ねて、宇宙龍が協力をしてくれた
カークサスと宇宙龍は昔から交流があり、アルの話を知ると快く引き受けてくれた
“カークサスの秘蔵っ子のお守りとな
このピューオーンが力になろう”
地響きのような宇宙龍の意思が伝わってくる
ありがとうピューオーン
初めての宇宙だから、何もわからないので教えてください
アルと呼んでください
“よかろう、アル
Dragon Pだ、DPと呼べばいい”
じゃあ、DP、よろしくお願いします
大きな紫色の龍、DPの背中あたりにアルがくっ付くと、DPは力強く羽を広げ羽ばたいた
カークトゥの星の周りを軽く一周して、宇宙空間で浮かんでいる紫龍
“アル、初めての宇宙はどうだ”
最高よ、DP!わくわくする
自由になった気分、どこまでも行ける気がする
“どこだって、ひとっ飛びだ”
DPはクルクルとカークトゥの周りを回った
真っ暗な宇宙空間は、どこまでも果てしなく感じた
DPと一緒なら心強い気持ちになって安心できた
アルは、久しぶりに心が軽くなった
ライラ星を旅立ってからずっと重い気分だった
まだ、これからが私の旅の始まりだ
永い永い果てしない宇宙のような旅
ここから、始まる