第59話 か弱き子供たち
大型キャンピングカーを子供たちがいるビルの前に横付けする。
エンジン音で周囲の感染者が集まってきている様で、長い時間は停められない。
僕は明日奈さんを連れてダッシュでビルに入り、サーチで反応を捉えた一階の奥の部屋に向かう。
ぱっと見は誰もいないように見えるけど子供たちは隠れてるみたいだった。
「僕たちはゾンビじゃないよ、君たちを助けに来たんだ! ご飯も食べさせてあげるから出ておいで!」
僕が声を掛けると幼稚園児〜小学校低学年だと思われる男の子二人と、女の子二人が机の影からゆっくり姿を現した。
皆、服はボロボロで顔も髪も薄汚れており、痩せ細っている。
凄く栄養状態が悪そうだ。
「……ごはんほんと?」
「……おなかすいた」
「こら! 姉ちゃんに隠れてろって言われただろ!」
「……」
どうやら小学生たちには警戒されてるようだ。
「僕の名前は荒井冴賢、この人は桑田明日奈さんだ。これからは僕らが君たちを保護するから安心してね。すぐにご飯も食べさせてあげるから」
「今まで大変だったでしょ? もう大丈夫よ!」
ご飯という言葉に幼児たちは反応して僕らの方に寄ってくる。
小学生たちも仕方なくといった様に着いてきた。
僕は男の子の幼児、明日奈さんは女の子の幼児をゆっくりと抱き上げた。
やせ細っている、なんて軽いんだ……
そして皆で大型キャンピングカーに乗ろうとした時、叫び声がした。
「待って! その子たちをどうする気!」
中学生ぐらいの制服を着た女の子が走ってくる。
子供を連れて行こうとしてる僕たちを警戒している様だ。
彼女が叫んだ事によりさらに周囲の感染者を呼び込んでいるので、僕は急いで女の子に話す。
「感染者が集まってる。君も乗って! 早くここを離れよう!」
「えっ! は、はい!」
僕は美久ちゃんに幼児を託すと、ビックリしている女の子に手招きしてキャンピングカーに乗せ、バールを取り出して進路の邪魔になる感染者を倒す。
そして光司君の運転するキャンピングカーは一旦安全な場所まで避難した。
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僕はまずアイテムボックスからペットボトルのスポーツドリンクを出して、子供たち全員に少しずつ飲んでもらった。
幼児たちには明日奈さんと美久ちゃんの介助でスポーツドリンクを飲ませる。
その間に僕は大きい鍋に湯を張ってお粥のレトルトパックを湯せんして温め、子供たちに提供していった。
「もぐもぐ、ごっくん。おいしー」
「はふはふ、バクバク」
「ふーふー、お、美味しい!」
「……美味しいね」
「本当、美味しい……」
子供たちは一旦お腹が膨れて落ち着いた様だった。
そして小学生と幼児の組み合わせでシャワーを浴びてもらううちに、一番大きな中学生の女の子に話を聞くことにした。
事情を聞いたところ女の子は中学生二年の安本早苗ちゃん。
男子の小学生は武史くん、幼児は陽翔くん。
女子の小学生は光ちゃん、幼児は暦ちゃん
早苗ちゃんたちは全員近くの避難所にいたそうなんだけど、みんな親御さんを亡くしてしまったそうで、避難所が感染者によって崩壊した後に固まって逃げて隠れていたそうだ。
逃げる時大人たちは誰も助けてくれず、あまり食べる物も無くて危険を承知で早苗ちゃんが外に出て食糧を探していたとの事。
その辛さや不安を泣きながら僕たちに話してくれた。
「大変だったんだね。でも、もう大丈夫だから!」
「冴賢くんがいれば怖い物無しよ! きっと全員を守ってくれるわ!」
「そうですよ! 冴賢さんは凄いんです!」
「うん! ひさとお兄ちゃんは超すっごく強いんだから!」
「……はい。ありがとうございます!」
その後、早苗ちゃんにもシャワーを浴びてもらって、子供たちの替えの服や下着をアイテムボックスから明日奈さんに選んで出してもらい、着替えて奥のベッドルームで休んでもらった。
そしてキャンピングカーは再び北を目指して走って行くのだった。




