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第6話 集まる感染者

「つっ!」


翌朝、僕は慌ただしい声で目を覚ました。

昨日怪我した膝がかなり痛む。


真理と達也は既に起きていたようだ。


「真理、達也、騒がしいけどどうしたの?」

「ひさと、起きたか。外が大変な事になっているんだ!」

「ゾンビの様な人達が、体育館の周りを囲んでいるみたいなのよ!」


達也が真理の背中を(さす)って落ち着かせる。

どうやら夜中のうちに感染者が教室のバリケードを破って出て来て、体育館の周りを囲んでいるようだ。

その後、聞いた話では外からの侵入もまだ続いていて数も増えているらしい。


僕が映画や本で得た知識だとゾンビは生前の生活パターンや記憶をある程度持っており、人が集まる場所や人がいるであろう場所に集まるんだとか。

恐らくはここに高校があって人が多いという記憶を持った人たちや、それに釣られた者が集まってきているのだろう。


しかも避難所となった体育館にこれだけ多い人数だ。

生活音も相当あるだろう。

映画だとゾンビは音にも敏感だったはずだ。


ゾンビは一対一でも怖いけど、一番恐ろしいのはその数だ。

数が増えて来ると扉が大人数の圧力で壊されてしまうかもしれない。

増えるに連れてここからの脱出にも影響してくるだろう。


朝、再度教頭先生からマイクは使わずに指示があり、とりあえず外は危険なのでこのまま体育館に籠もって自治体の救助を待つという事になった。





ーーーーー





あれから4日経った。


体育館の外を取り囲んでいる感染者は増え続けていた。

みんな徐々に精神が不安定になってきているようでずっと泣いている子もいる。


相変わらず他との連絡は取れず、ネットはもう繋がらないようであった。

昨日からとうとう電気の供給も止まってしまっている。


水道はまだ使えているので水分の補給は出来ているけど、それもいつまで持つかわからないし、食糧は当初から一日2食に抑えていたのがもう無くなりそうとの噂だった。



「私たち、どうなっちゃうんだろう……」

「大丈夫だ。きっと救助が来るさ」


達也が真理を慰める。

こんな状況だけど真理に頼られて慰められる達也を羨ましく思った。


お昼頃になって、教頭先生が皆にまた状況を説明する。

どうやら体育館にあった非常食等の物資がもう無くなりそうで、今日中に校舎1階の倉庫に取りに行かなければ明日の分が無いらしい。


体育館の扉を開け少数が囮になっている間に、教職員や運動部の高学年が中心になって非常食を持ち帰るとの事。


そんなに上手いこと行くかな?

大体、映画では失敗して崩壊し散り散りになるケースだ。





ーーーーー





「じゃあ、行くぞ! 3、2、1、ゼロ!」


囮になるチームが何とか感染者を押しのけ、大きな声でグラウンド側に誘導する。

想定どおり感染者達の多くがそれに釣られた。


その隙に物資調達チームが次々と外に出た後、体育館の扉が閉められた。

どうやら初動はうまくいったようだ。





30分ほどして体育館の2階で見張っていた職員が物資調達チームの帰還を伝えてきた。


この後はグラウンドへの誘導を行っていたチームが引き続き頑張っているうちに物資を運び込む予定だ。


「ぎゃあああ!」

「うわ~!」


「そいつはもう駄目だ!」

「扉を閉じろ!」


外から叫び声がした!

物資調達チームの生徒の一部が感染者に捕まってしまったみたいだ。


「そんな!」

「まっ! 待ってくれ!」


どうやら入口付近で大声で揉み合いになっているようだ。

僕は嫌な予感がして静かな声で二人に話し掛ける。


「真理、達也、もし入口が突破されたら、早めに外に逃げよう。一旦は鍵が掛かる教室に逃げ込んだ方が安全かもしれない。その時は肩を貸してくれ。食糧の入ったカバンも忘れないようにね」


真理と達也、僕の三人は目で頷きあった。


いざという時は僕が囮になってでも二人を逃がすんだ……


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