第57話 新たなる力
「僕が運転して、このまま車で行くって駄目でしょうか?」
翌日、光司君はこの大型のキャンピングカーが物凄く気に入ったみたいで、自分で運転して車で進みたいとの事だった。
「運転出来るの?」
「たぶん出来ると思います。レーシングゲームは得意だったので! 内輪差とかも理解出来ます。それにこの車は衝突防止機能とかあるんじゃないでしょうか?」
ゲームと実際の運転は違うだろうけど、車はオートマチックだから極端に言えばアクセルを踏めば加速して、ブレーキを踏めば減速するだけだ。
動く他の車もたぶんいないので感覚さえ掴めれば問題ないかもしれない。
無免許でも今は捕まる心配は無いしね。
「うーん。明日奈さんはどう思う?」
「うん、対向車とかは来ないからスピード出さなければ大丈夫かも?」
「私も動くところ見たーい!」
「じゃあ少し試してみようか。横転させないように気を付けてね」
「はい! 頑張ります!」
光司君は意気揚々と運転を開始した。
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最初、パーキングブレーキが掛かったままだったという事を除けば、光司君は大型のキャンピングカーを上手くコントロールして路上に乗り出し、スムーズに運転出来ていた。
高級車なので乗り心地も非常に良い。
座ったまま移動できるという事はこんなにも楽だったのか。
「やったあ! 楽チン楽チン! お兄ちゃん凄い!」
「このまま車で移動したいわ!」
「まあ障害物に当たるまでだけどね」
そして僕が言ったそばからキャンピングカーが停止する。
道路上に放置されている車が邪魔で通れなくなってしまったんだ。
単なる乗り捨てられた車とかの障害物であれば、一旦降りてアイテムボックスに格納してまた乗るという様に回避可能だったけど問題なのは感染者だ。
僕がサイコバレットで遠くから倒したとしても、その場に死体が残ってしまう。
踏むと車輪に巻き込んでの故障や横転の可能性があるので、誰かが降りて退かさなければならない。
まあ僕しかいないんだけど。
一時間ほどの間に上記の様な事が断続的に続くので、運転手の光司君も含めてみんなうんざりして疲れ切ってしまっていた。
そしてまた前方の道路上に感染者が現れる……
はあ、またか。
遠くへふっ飛ばしてどかせないかなあ。
僕は心の底からそう思った。
(ゴッ!)
その時、前方にいた感染者が急に何かに押し出されるように道路外に弾け飛んだ。
まるで僕が望んでいたイメージと重なるように吹っ飛ぶ。
僕にはまた念力の時と同じ様に、それが念動力という能力だと言う事が自然に理解できた。
たぶん今僕が一番欲している手を触れずに物体を動かす力だ。
白蛇さんの言った通りに僕の必要に合わせて発現したんだと思う。
僕は改めて白蛇さんに感謝を捧げた。
みんなが不思議そうに僕を見る。
僕は一つ頷いてみんなに告げた。
「念動力という新しい力が発現したみたい。これからは障害物は僕が吹き飛ばせると思うよ。でも、念のため排除出来るまでは速度を落としてね」
「ええっ! は、はい!」
「えーっ凄い!」
「ひさとお兄ちゃん、やったあ!」
運転手の光司君や明日奈さんは凄く驚いていたがすぐに笑顔になった。
美久ちゃんは両手を上げて大喜び。
これからはずっとキャンピングカーに乗ったままで移動できるからだ。
これなら一日に移動できる距離は飛躍的に伸びるはずだ。
早ければ明日にでも家族に会えるかもしれない。
パパ、ママ、玲奈、僕が行くまで待っていてね。




