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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
二章 家族を探して
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第50話 留置場での再会

結局、僕は警察署の留置場へ入れられていた。

あの時、美久ちゃんに銃口が向けられたので僕は万歳して降参したんだ。


僕の為に美久ちゃんを危険に晒す訳にはいかない。

光司君と美久ちゃんは米倉を憎々しげに睨んでいたはずだ。

しかし警察官が無辜の市民、しかも子供に銃口を向けるなんて良いのだろうか?


武力のある避難所へと思ったんだけど、ここも駄目なのかも知れない。

今回の一件を見て、なんとなく白蛇さんが人間達を見限った理由が分かるような気がした。


僕はこれからどうなるんだろうか?

取り調べで拷問されたりするのか人体実験でもされるのか。

もし僕の力を全部知ったら必ず自分たちの為に利用しようとするだろう。


でもここを出る場合は光司君と美久ちゃんも一緒でないと危険かも知れない。

一般人に銃口を向ける様な人達だ、まともでないのは確かだろう。


ここは鉄格子だけど、たぶんサイコブレードなら切断出来るような気もする。

光司君達もサーチの範囲内で捕捉出来ているので位置関係もバッチリだ。


とにかく夜になったら脱獄して光司君と美久ちゃんを連れてここを出よう。

もう二人は僕が面倒みる事にしよう! 誰にも任せられない。

多少は負担だけど避難所を探して右往左往するよりはよほど良いだろう


そして桑田さんだけど、やっぱりここにまだ居るみたいだ。

サーチで見ると弟さんか名前は忘れたけど幼馴染の兄の人と一緒にいるはずだ。


今夜ここを出るなら会うことは無いのでたぶん問題は無いだろう。

光司君達の反応と妙に近いのが気になるけど……





ーーーーー





「ねえ! 起きて、起きて荒井君!」


「……」


僕は疲れたのか、またいつの間にか眠っていたようだ。

たしかここは留置場で、夜になったら脱出しようと思っていたはずだ。


「えっ! 桑田さん! どうしてここに?」


何故か僕の目の前には、もう会うことは無いと思っていた桑田さんがいた。

顔をみたら以前を思い出して胸がズキンと痛む。

もしかしたら逮捕までの一連の流れは僕の夢だったのかも知れない。


「私は食事の配膳係の仕事をしているの。新しく来た子達に荒井君らしき人がここに入れられていると聞いたから」


光司君達に聞いたのか? 説得力のある説明だ、やはり夢では無いみたい。

だとすると凄く気まずい事になる、何とか誤魔化そう。


「そうなんだ、仕事頑張ってね。僕はしばらくここに入れられていると思うから」

「ねえ。どうして急に居なくなってしまったの? あの時は凄く探したのよ」

「……」


「答えてくれないの?」

「……僕も家族を探しに行きたかったんだ。ゴメンね」


「そのうち、またここを出ていくの?」

「うん……元々ここには入るつもりは無かったんだけど、助けたはずの婦人警官になぜか人質まで取られて無理やり入れられちゃって……」


「そう……」

「こんな扱いだし、正直もうここには居たくないんだ」


手錠にも憤慨したけど、これじゃあまるで罪人扱いだ。


「ねえ、私も一緒に行っちゃ駄目かな?」

「え! でも弟さんとやっと会えたんでしょ?」

「うん。でも弟には一緒の中学の仲間とかがいるから。生意気に彼女もいるみたいだし……」


「でも……あの幼馴染の……お兄さんとかは?」

「えっ! 純一さんの事? あの人は兄みたいな感じなだけよ? 両親が死んだ事で慰めてもらったりはしたけど」


えっと、どうやら僕は盛大な勘違いをしていた様だった……

だけど桑田さんを安全な避難所から危険な外に連れ出すのは違うと思う。


「桑田さん聞いて。二人で一緒にここに来た時に比べて感染者の数は数倍になっているし、外にはそれ以外の危険も多い。だから安全な避難所にいるのが良いと思うんだ」


「でも……このまま待っていても、きっと助けは来ないんでしょう?」

「それは……」


僕はこの世界がもう完全には元に戻らないという事を知っている。

ここで無責任に助けは来ると言っても気休めにしかならないだろう。


「両親ももう死んでしまったし、弟もここで想い人や仲間と暮らしていける。なら、私も好きな様に生きてみたいの! 荒井君と一緒に!」


桑田さんは真っ直ぐに、真剣に僕を見つめて来る。

僕は人の心は読めないが、その瞳の中になんらかの覚悟の様な物を感じた。


「分かったよ、桑田さん。僕と一緒に行こう!」


僕がそう答えると、桑田さんは嬉しそうに微笑むのだった。


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