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第23話 佐々岡さんの家族

僕はバールを没収され、下着姿になるまで全て脱がされて怪我を確認された。

怪我は白蛇さんに治してもらったので無いはずだ。


僕はこの様に検査された事で逆に安心していた。

下手に人道を連呼して無条件に受けれ入れてもらうよりは避難所の安全性が高まると思うからだ。


少し待つと二人も検査が終わった様で、僕と同じ部屋に案内されてきた。


「大丈夫だった?」

「うん。怪我はしてないからね」


桑田さんから聞かれたので答えた。

二人と一緒に入って来た最初に会った職員らしき人が話す。


「初めまして。区役所の職員の木村です」


職員の人が言うには、ここには数百人もの人が避難している。

この様な事態になって区民を保護しており、国にも救援を要請しているが連絡が取れない。


幸い最寄りの警察署が人を派遣してくれており、避難所の治安維持や物資の調達をしてくれている。

だが区民以外の人を受け入れる余裕が余り無いとの事。


佐々岡さんは区民で家族がここにいるという事を伝えてあり、今職員が探しているとの事だった。


「佐々岡莉子さんのご家族は、探していますのでお待ち下さい」


職員の木村さんはそう告げると部屋を後にする。

僕たちは少し待つ事になった。





ーーーーー





しばらくして僕等のいる控室のようなところのドアがノックされて開かれた。

佐々岡さんのご家族が見つかったのだろうか。


「莉子! 良く無事で!」

「お父さん! お母さん!」


「莉子!」

「お姉ちゃん!」


「秀彦!」


佐々岡さんと家族との涙の再会だ。

佐々岡さんをここまで連れて来られて良かった。

あんなに喜んでくれているんだ。

桑田さんは共感性が高いのか、家族の再会を見て泣いている。


ひとしきり喜びあった後、佐々岡さんが僕達を紹介してくれる。


「こちら、桑田明日奈さんと荒井君。私をここまで連れて来てくれたの。学校からここまで来れたのは二人のお陰よ」


「桑田です」

「荒井です」


「桑田さん、荒井君、莉子をここまで連れて来て下さりありがとうございました」

「こんな危険の中、莉子を助けてくれてありがとうございました」


僕たちが名乗ると佐々岡さんのご両親が頭を下げてお礼を言った。


「いえ、莉子ちゃんがご家族と会えて良かったです」

「はい、いえ! 僕は二人に着いてきただけなので……」


僕は、大人にお礼を言われたのは初めてなので、変な受け答えをしてしまった。


「二人とも区民では無いとの事だが、もし良ければここに残れるように私から区の方に頼んでみようか?」

「そうよ明日奈ちゃん。一緒にここに残らない? 外は危険よ」


お父さんと佐々岡さんがここに残らないかと尋ねてくる。


「えっと、僕はこの足で自宅に帰る予定なので、大丈夫です」

「私も同じです。莉子ちゃんゴメンね」


佐々岡さんは少し気落ちした様子だが納得してくれたようだ。

僕の提案でこの部屋で皆で昼食を食べる事になった。





ーーーーー





食事は一日2食という事で昼食の配給は無いらしいけど、僕が朝作ったおにぎりを佐々岡さん一家と一緒に食べる。


「おいし〜!」

「本当ね! 凄く美味しいわ」

「うん。かなり美味しいね! それに、おにぎりなんて久しぶりだ」

「ね、荒井君が作るおにぎりは絶品なのよ!」


食べる前に佐々岡さんが、僕の作るおにぎりは凄く美味しいから! と言ってハードルを上げてしまっていたんだけど、ご家族の反応を見る限り何とかクリア出来たようだ。


食事の後、僕はリュックから出すと見せ掛けてアイテムボックスから5kgのお米と袋に入ったチョコレート菓子の詰め合わせを出して佐々岡さんに手渡す。

大きなリュックなのでこれが入っていたと言っても不自然ではないだろう。


「佐々岡さん、これ少ないけど皆さんで食べて。お米は目立つかもだけど、お菓子の方は隠しておいて佐々岡さん達で食べてちゃってね!」


「そんな! 悪いよ……私、もらってばっかりだし……」


「いいんだよ! 物資にあてはあるから気にしないで」


「荒井君……ありがとう。莉子を送り届けてくれた事といい、恩に着るよ!」

「本当にありがとうございます」

「お兄ちゃん、お菓子ありがとう!」


佐々岡さんの小学生ぐらいの弟は、お菓子を見て無邪気に微笑んだ。





ーーーーー





「それじゃあ、僕達はこれで失礼します」

「またね! 莉子ちゃん……」


またねと言うけどこんな世の中だ、再会出来る保証は何処にもない。

だからかもしれないけど、桑田さんと佐々岡さんは最後に感極まって抱き締め合っていた。


僕はそれを側で黙って見守る。

そして僕達は区役所を後にした。


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