第211話 新世界
静かな森に囲まれた平和な村で、長老が周りに座る小さい子供たちに語り掛ける。
脈々と語り継がれてきた旧世界の記憶を。
「……という訳じゃ。恐ろしい魔王と邪神に打ち勝った我らのご先祖様は、それから千年もの間、楽園で理想の社会を創り栄え、その子孫たちが今のワシらの世界に継承されたと言い伝えられておる」
「そうなんだ~」
「ふ〜ん」
「お腹空いた〜」
子供たちは全然実感がわかないようで生返事だ。
そんな中、一人の子供が訪ねる。
「ねえ、長老様。その楽園ってどこにあるの?」
「そうだよ! ぼく、行ってみたい!」
「わたしも!」
「ふぉっふぉっ。それは誰にもわからんのじゃ。しかし、もしこの世界に再び危機が迫る事があれば、その楽園に今もあるという世界を見守る神器が、我らを助けてくれるはずじゃ。我らがこれからも人として正しく生きておればの話じゃがな……」
そして新たに作られた平和な世界は紡がれてゆく……
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数千年ぶりに新しく就任した神は修行を終え、新世界を構築した。
新世界は旧世界である地球をベースに作られた。
大陸や動植物は地球の物をベースに追加・変更・削除され、そこに生きる人類は旧世界のホワイトフォートの子孫を継承した上で、別の人種や人間以外の新しい亜人の種族なども作られている。
そこに生きる人類はホワイトフォートの教えを継承して平和に暮らしており、戒として古い時代の逸話が語り継がれているのだ。
もう二度と、二度と人類が間違わないように。
佐渡ヶ島があった場所の地下数百メートル。
少しずつ。
永い年月の間、本当に少しずつ再生した身体の欠片が微かに動く。
(お……俺様は……)
完




