第207話 邪神との闘い
とうとう僕達の目の前に三柱の邪神が現れた。
邪悪とはいえ神なので、膝が震えるほどの圧力を感じて呼吸が苦しくなる。
達也を倒してから改めて邪神と対峙するつもりだったけど、ここはもう戦うしかないんだろうか。
「お、お前ら! 俺様を助けろ! もっと力を寄越せ!!!」
両腕を無くして絶望していた達也が邪神たちに吠える。
「わかっている!」
「うむ。もうこれしかない!」
「融合するのである!」
そんな! 融合だって!
僕が放心している間に邪神たちが次々と黒い光となり、達也の身体に吸い込まれる様に入る。
そして融合した達也の体から凄い勢いで黒い闘気が吹き上がり、禍々しく変化していった。
達也は無くした左右の腕が元に戻り、身体も数倍大きくなっている。
左右の肩と腹部に先ほどまでいた邪神だと思われる三つの顔があった。
神々は制約により直接この世界に手を出すことは出来ない存在のはず。
邪神達はどうやら最終手段として達也と融合し、直接僕らを滅ぼしたいみたいだ。
まだ少し膨らみ続けているので、融合が完全に完了していないのだろう。
今までとは段違いの闇のオーラと圧力を感じ、僕たちは思わず後ずさった。
虎太郎さん、綾音さん、茜さんはそれぞれジェネラルを倒したみたいで、入り込んでいる変異体を始末してくれていたんだけど、邪神と融合した達也を見て動けなくなったみたいだ。
守備隊は無限にも思えるほどの数で襲い掛かって来る変異体やゾンビを撃退してくれていたけど、融合した邪神の闇の波動を受けて射撃が止まってしまったようだ。
僕は念動力で守備隊に撤退を命じる。
(守備隊の皆さんは撤退して下さい!)
(((りょ、了解!)))
守備隊のみんなは僕からの連絡を受け、備え付けてあった脱出機能で自動的に地下へと脱出している。
「大将、俺は…まだやれるぞ!」
「隊長、私も……です!」
「冴賢殿……私も……この命尽きるまで!」
「私だって…やれるわ!」
サイコ部隊の皆は達也と融合した邪神の闇の波動に当てられて震えが来ている様だけど、それでも戦意は衰えない様だ。
「……邪神が現れて、どうやら達也と融合したみたいなんです。邪神には僕の神気しか通用しないでしょう。無理はしないで下さい!」
「「「「 了解! 」」」」
僕はまず守備隊が完全撤退する時間を稼ぐため、全方向に攻撃を仕掛ける事にした。
あわよくば融合した邪神にも効くかもしれない。
「神気解放、サイコバレットウェーブ!」
神気を帯びた波が360度全ての物体を貫通し、ゾンビや変異体だけを認識して焼き滅ぼす。
野球場全体に取りついていたゾンビや変異体は全て焼き尽くす事が出来たみたいだけど、その後からも続々と変異体とゾンビがやってきているのがわかる。
それに、どうやら邪神と融合した達也には効かなかったみたいだ。
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「ひ、ひさど……ご、ごろすう!」
達也はもう正気ではなく、ろれつが回らない感じで叫ぶ。
これは……融合に失敗しているんじゃないのか?
「我らの融合にはそう長時間耐えられそうにも無いな」
「むう。まあ我ら全員だから無理もない」
「急ぐのである!」
邪神達がそう言うと達也の身体から僕たちの方に黒い触手が複数伸びてくる。
神気を纏ったアイジスの剣を振ると、黒い触手はその分だけ消えて無くなってゆく。
(ドガッ!)
「ぐあっ!」
虎太郎さんがサイコスレッジハンマーで触手を受け止めきれず、吹き飛ばされてゆく。
「はっ!」
「やっ!」
綾音さん、茜さんの攻撃は黒い触手には通じない様だ。
「マルチショット! ファイヤ!」
(バン!)
悠里さんのサイコボムで少し怯んだみたいだけど、本体はノーダメージみたい。
駄目だ。
神と融合した達也には、神気でないとダメージが与えられないんだ。
……
神気を含んだ神器は神をも殺せる武器になる。
残りの神気を注ぎ込んだ神器の一撃で、邪神もろとも達也を殺すしかない。
神気は自然界から時間を掛けて集めるしかないので、今溜まっている分を全て使ってしまったらもう打つ手が無くなってしまうけど、ここは賭けるしかないんだ!
「アイジス! 剣に神気を最大封入して!」
(神気のチャージを開始します……完了まで約3分です)
僕が両手で持つアイジスの剣は神気が溜まるにつれ、徐々に白い輝きを増してゆく。
「これから神気を最大限に高めるため、少し時間が掛かります! すみませんが時間稼ぎをお願いします!」
「了解だ! 大将!」
「了解です! 隊長!」
「冴賢殿、承知しました!」
「オッケー!」
悪いけどサイコ部隊の皆には神気封入までの時間稼ぎをお願いした。
僕は邪神と融合した達也の攻撃をなんとか躱しながら、神気封入を続けるのだった。




