第204話 迎え撃つホワイトフォート
(マスター。佐渡ヶ島に急速に接近する群体があります。距離20km、総数約一万体です)
とうとうやって来た。
数からして間違いなく達也と変異体だ!
僕は精神感応で光司くん、サイコ部隊、守備隊の数人に連絡を行う。
光司くんは僕からの連絡を受けて緊急避難開始のサイレンを鳴らし、先頭に立って住民を避難させてくれている。
守備隊は佐々木さん一条さんを中心に集結後、各自が外壁に設置した重機関銃の銃座でスタンバイし、サイコ部隊も野球場の中央に集まって武器の点検がてらウォーミングアップしていた。
以前とは違って今回は準備万端なんだ。
……
一時間後、非戦闘員は用意してあった地下道から避難先に既に移動済みだった。
この辺は今まで何度も避難訓練をしてきているので特に問題は無かったようだ。
佐渡ヶ島の南側から海を渡って来た変異体の大群は、何故かこちらの位置が分かるみたいでこの野球場を取り囲む様に展開しつつあった。
変異体でない感染者の別の大群もこの島を目指して近づいている。
どうやら変異体同士で橋みたいな物を作り、その上を渡ってきているみたい。
遠からずこの島全体が変異体や感染者で埋め尽くされるだろう。
僕はアイジスに命じて、皆に語り掛ける。
(みんな、とうとう最終決戦の時が来たみたいだ! 絶対に勝とう! 勝って未来を切り開くんだ!)
((((( おおおーっ! )))))
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「撃ち方始め!」
「「「「「 了解! 」」」」」
佐々木さんの合図で、守備隊が全方位に重機関銃を撃ち始める。
雄二さんや明人くんたちが叫びながら撃ち始めた。
僕は野球場の中央に浮遊して戦況を眺めていた。
「行っけえ!」
(ズダダダダダダダ!)
「くたばれ!」
(ダダダダダダダッ!)
「倒れろ!」
(ダダダダダダダダダダダ!)
「ぶっ飛べぇ!」
(ズダダダダダダダダダ!)
「荒井さんや前守備隊の仇だ!」
(ダダダダダダダッ!)
野球場の周りを取り囲んでいた変異体の群れが、重機関銃で次々と吹き飛んでゆく。
事前に神気を弾丸にコーティングしてあるので、威力抜群だ。
30分ほど外壁の攻防が続く中、それを飛び越えて来る者達がいた。
達也と四体のジェネラルと呼ばれていた個体だ。
……
この半年の中で皆の情報を集めた分析から次の事が分かっている。
まず魔王となった達也だけど、武器としては拳から伸びる爪があって、これに直接傷付けられると魂にダメージを負ってしまう。
そして爪で斬撃を飛ばす事も可能だ。
次に前回虎太郎さん悠里さんペアで戦った相手として、特殊な変異体である大柄の男と婦人警官だった米倉がいる。
大柄の男は手足の筋力を自在に操れるらしく、とにかく凄いパワーでガードした虎太郎さんでも吹き飛ばされてしまったという事だ。
婦人警官だった米倉の方は、指を弾丸として高速で射出できるらしく、その上俊敏性も高くてこちらの攻撃が全然当たらないみたいだ。
前回綾音さん茜さんペアで戦った相手としては元高校性の二体がいる。
これはなんと明日奈さんの幼馴染の杉下康太と、以前僕が殺した達也の先輩らしい。
明日奈さんの幼馴染の方は手足が伸びるタコみたいな奴で、斬撃をヌルヌルと躱してくるらしい。
体格の良い先輩高校生の方は皮膚の硬質化が出来るらしく、これも斬撃が通じなかったとの事だ。
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僕たちの前に巨体の鬼たちが舞い降りる。
「会いたかったぜ、冴賢!!」
「達也! お前、その力……一体何人殺したんだ!」
達也の身体や角は以前見た時よりも二回り以上も大きくなっていて、噴き出している黒いオーラも前とは段違いだ。
「はっはっはっ! もうここ以外の世界は全て滅んだぞ! 俺は世界中の魂を喰らってさらに強大な力を手に入れたんだ! 今度こそぶっ殺してやる! お前も! 真理も! 全員だ!」
「僕たちだって、やられないよう修行した! 罪を償ってもらうぞ、達也!」
さあ! 最終決戦の始まりだ!




