第202話 それから半年後
僕たちが佐渡ヶ島に渡ってから半年ほどが経った。
僕に修行をつけてくれたナナッシーさんの予測だと、達也と変異体たちが世界を全て滅ぼすのは半年ぐらいは掛かるだろうと言っていたので、決戦の時はそろそろだと思う。
佐渡ヶ島から一緒になった新潟グループは、もうかなり融和しているのでグループ分けをする事も無いかもしれないけど、最初はこの生活に凄く驚いたみたいだった。
電気・水道などのインフラ、豊富な食料や衣料品、薬剤などが以前と同じレベルで提供されるからだ。
新潟グループには改めてパパから引き継いだホワイトフォートの理念を共有し、全員に了承をしてもらっている。
「「「「ひさとお兄ちゃ〜ん!」」」」
小学校低学年の四人が僕を見つけ、元気にタックルしてくるのを優しく受け止める。
「真子ちゃん、鈴花ちゃん、千夏ちゃん、秀彦くんも。もう学校は終わったの?」
「うん。これからケーキを食べるんだ!」
「ママとー」
「莉子お姉ちゃんとー」
「聖女の明日奈お姉ちゃん!」
莉子さんの弟の秀彦くん、虎太郎さんの妹の鈴花ちゃん、小学校グループの真子ちゃん、新潟グループの千夏ちゃんが嬉しそうに教えてくれる。
「そうなんだ、良かったね。気を付けて行ってきてね」
まあ直ぐ近くだから大丈夫だろう。
何となくの勘だけど、将来的に秀彦くんがあの三人に囲まれて苦労しそうな気がする。
鈴花ちゃんは僕のママと一緒に住んでいて、今では普通にママと呼んでくれているみたいだ。
ママもパパを亡くしてからかなり塞ぎがちだったので、誰かのお世話をするのは嬉しそうだったから丁度良いのかも知れない。
明日奈さんは新潟グループの人からは聖女と呼ばれているみたいだ。
本人はアイテムボックスから薬を出していただけだたと必死に否定していたけど、僕は心根の優しい明日奈さんだからこそ、そう呼ばれるに相応しいと思っているんだ。
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防衛設備の方も当初想定した施設や仕掛けはこの半年間で全て出来上がっている。
募集した新たな守備隊には、小学校グループの雄二さんたちや、明日奈さんの弟の明人くんたち、悠里さん麾下の高校生たちの若者を中心に多くの人が手を挙げてくれたので大幅に若返る事になった。
メンバーには女性も入ってくれている。
今では元自衛官の佐々木さん一条さんに鍛えられ、それなりに戦えるようになっているはずだ。
非戦闘員の人もサブリーダーである光司くんの指揮の元、何度も避難訓練を繰り返しており、有事の時の避難手順や物資などの備えもバッチリだと思う。
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僕たちサイコ部隊の方も連携する訓練以外は、野球場の外で実戦形式の訓練を繰り返しており、佐渡ヶ島内の感染者はもう殆ど虎太郎さん、綾音さん、茜さん、悠里さんの四人に狩りつくされている感じだ。
僕の念力の出力が上がっている事もあるんだけど、四人とも身体を鍛えているためか、スピードやパワーなどの身体強化のレベルも目に見えて上がっている。
特に大柄だった虎太郎さんは筋力をかなり増やして鋼の様な身体になり、以前より更に一回り以上大きくなったようだ。
これならパワータイプの変異体にも力負けしないだろう。
綾音さんと茜さんは、平坂家の母から授けられた奥義をある程度は習得できたようで、以前とは違って振りもどこか鋭くなっている。
僕も訓練用のダミー人形作りなど、積極的に修行のお手伝いは行っているんだ。
悠里さんは弓の速度や精度が格段に上がっているみたい。
いくつか難しい新技も習得し、今は更に熟練度を上げている感じだ。
最近は虎太郎さんと悠里さんで訓練後に良く一緒にいるみたい。
恋人みたいな良い雰囲気になっている。
茜さんも直哉さんと食堂で仲良くパフェを食べているのを見た。
以前は軟弱者だと嫌っていた感じだったけど、新潟の戦いで死ぬ気で茜さんを庇った事で見直されたみたいだ。
綾音さんは……誰もいないみたいだけど僕への視線は凄く良く感じるんだ。
まあ、未来を見据えるとカップルが増えるのは良い事だと思う。
僕自身も毎日訓練や瞑想、神気の補充などをして実力を高めているつもりだ。
総じて準備万端というところだろう。
来るならいつでも来い、達也!
今度は必ず僕達が勝つ! 勝って未来を切り開くんだ!




