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第21話 佐々岡さんの家へ

「あっという間だったね! でも無事で良かった!」

「荒井君、凄い……」


「ふう、何とかね! ありがとう!」


僕は感染者との戦闘で興奮している自分を落ち着かせる様に話した。

そして感染者と戦った感触から、5、6体ぐらいの感染者なら問題なく倒せそうなので、今までのように感染者を大きく迂回する方針から少数であれば倒して通る方針に変更した。


「今のうちに進もう! 急げば今日中に着けるかも」


僕達は少し進行速度を上げ、佐々岡さんの自宅を目指して進んで行った。





ーーーーー





途中の空きビルでお弁当のおにぎりを食べ、夕方遅くに佐々岡さんの自宅付近まで移動する事ができた。


「あ! あれ! あの建物が私の家だよ!」


もうすぐ地図で確認した佐々岡さんの家に着く。

50mぐらい手前で佐々岡さんが少しハイテンションで自宅の位置を教えてくれた。


「佐々岡さん。嬉しいのはわかるんだけど、僕より前には出ない様にしてね」


僕は今にも飛び出して行きそうな佐々岡さんに注意する。

慌てて進んで、後一歩のところで感染者に襲われる映画のような行動はやめて欲しいものだ。


僕はサーチを使いながら住宅地をゆっくりと進んでいった。

この辺りは高級住宅街のようで大きい一軒家が多い様に見受けられる。

サーチによると感染者はパラパラはいるみたいだけど生存者の反応は無かった。


それは佐々岡さんの家の中も同じだった。

だけど、わかってはいてもそれを事前に佐々岡さんに告げる気はなかった。


「待ってね。僕がドアを開けて家を調べるよ。玄関で待機していてね」


僕は佐々岡さんの家の玄関ドアを開こうとしたが、鍵がかかっているようだ。

後ろを振り返ると、佐々岡さんがポケットからサイフを出してチェーンで繋がれてる家の鍵を出す。


僕は少し横にズレて鍵だけ開けてもらう様にする。


(カチャッ……カチャッ)


佐々岡さんに2箇所ある鍵を開けてもらい、僕が玄関のドアをゆっくりと開ける。

玄関の土間には靴はあるけど、1、2個で家族分とは言えない数だ。

恐らく家族は避難先に行っていると考えられた。


僕は一応靴を脱いで上がり、1階のリビングルームやダイニング、トイレやお風呂を調べる。

途中のダイニングテーブルに書き置きらしきメモが置いてあった。


『莉子へ

 父、母、秀彦は無事です。

 これ以上は家にいられないので、近所の人と一緒に区役所に避難します。

 もしこれを読んだら区役所に来てください。

 どうか莉子が無事でいますように。

 佐々岡 伸之、響子』


ざっと目を通した後、2階の部屋も調べる。

どうやら佐々岡さん一家は区役所に避難したようだ。

僕は玄関で待つ佐々岡さん達に告げに行った。





ーーーーー





僕は家の中には誰もいなかった事を告げ、家族からの書き置きを渡す。

僕から奪うようにメモを取った佐々岡さんは、それを見て涙を流した。


それは家族が無事だったからか、会えなかったからかは僕には分からなかった。

桑田さんがすすり泣く佐々岡さんの背中を擦っていた。


その後、直ぐに区役所に行きたいという佐々岡さんをなだめ、夜の移動は危険なので今夜は佐々岡さんの家に泊まらせてもらい、明日の朝一で区役所まで家族に会いにゆく事で二人と合意した。


電気は止まっているがこの家の水道とガスはまだ使えたので、昨日のパスタの残りを茹でて佐々岡宅の塩・胡椒でフライパンを使って味付けをする。


その間、佐々岡さんは自宅なので動きやすい格好に着替え、気持ちを切り替えて明日の為に移動する準備をしているようだ。


僕は食事の準備が出来た事を伝える


「またパスタだけどゴメンね。調味料は佐々岡さんちの物を借りちゃった」


「ううん。パスタ好きだよ。美味しそう!」

「荒井君、ありがとう!」


美味しい食事で佐々岡さんにも少し笑顔と元気が戻ったようだった。


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