第201話 平坂家の奥義、サイコ部隊の修行
拠点の構築に勤しむ僕は、ある日平坂家母に話があると呼び出された。
詳しく聞いたところ、新潟で暮らしていた施設に荷物を取りに戻りたいとの事だ。
暮らしていたビルに置いてきてしまった荷物や、終末の救世教という教団に接収されてしまった荷物だ。
希望者を集ったところ、僕と平坂家母、綾音さん、虎太郎さん、雄二さん、何人かの新潟グループの人たちといく事になった。
「では行きますね。瞬間移動!」
景色があの時のビルの屋上に切り変わる。
僕は直ぐにサーチで辺りを確認し、皆に警告した。
「このビル内に感染者はいませんが、このビル周辺に感染者が多数います。僕からは離れないで下さい」
そしてまずは女性たちの暮らしていたフロアに行き、平坂家母が無事に自分の荷物を見つけたようだった。
一応、その辺にある荷物も全てアイテムボックスに入れておこう。
「あの……真九郎の刀は父親の形見なんです。なんとか探せないでしょうか?」
「冴賢殿、私と茜の刀も接収されてしまったので、探したいのですが……」
どうやら所持していた武器は、教団に持っていかれてしまったみたいだ。
「わかりました。サーチで探してみますね」
僕はアイジスにお願いして接収された皆の武器とかを探してみる事にした。
十秒ぐらいしてアイジスから見つかったとの返事があり、取りに行くことに。
虎太郎さんと雄二さんと何人かは男性たちが居たビルに行くのだと言うので、その位置で待ってもらい、後から合流する事にした。
二手に別れるけど、虎太郎さんにはサイコストーンを渡してあるので、感染者がいてもサイコ武器を展開すれば問題ないだろう。
僕は平坂家母、綾音さんと残りの人たちを連れ、教団本部ビルと思われるところまで移動し、中にいた感染者を処理しつつ奪われた荷物を全て取り戻した。
そして虎太郎さんたちと合流し、無事に野球場の拠点まで戻るのだった。
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(平坂綾音)
夕方になり、母様が私と茜を呼び出して二つの古書を渡してきた。
「綾音、茜、それは平坂家に伝わる秘伝の奥義書です」
「「えっ!」」
奥義書! そのような物があったとは……
わざわざ新潟まで戻って荷物を取りに行ったのは、これを取りに戻ったのだと分かった。
「あの人が健在であれば、いずれその判断において貴方たちに渡したのでしょうが今は緊急時、私の判断でそれを貴方たちに託します。平坂家に伝わる奥義を極め冴賢殿の助けとなり、今度こそ強大な敵に打ち勝つのです!」
「はい! 母様、ありがとうございます!」
「うん! 母様、私もっと強くなる!」
私たちは歓喜に打ち震えた。
これで私と茜それぞれの課題の解消と、強力な技が手に入るのだ!
冴賢殿と一緒に戦って勝利し、平和を勝ち取るのだ!
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(沢田虎太郎)
荷物を取りに戻った帰りに大将を呼び止め、トレーニング用の機材を出してもらうように頼む。
「分かりました。他にも必要な物があったら言って下さいね」
大将は快く引き受けてくれ、俺の住む建物の空き部屋をトレーニングルームに改造までしてくれたんだ。
必要ならプロテインなども用意できると言う。
これで俺の肉体改造も思うとおりに進むだろう。
俺は生まれた時から体が大きく、他の奴よりも全然強かった。
野生の虎のように生まれながらの強者だったんだ。
虎はトレーニングなどしなくても十分強い。
だが、俺はあの変異体のパワーに負けてしまった。
結果、俺たち兄妹にあれだけ良くしてくれた、荒井さんたちも死なせてしまったんだ……
生まれて初めて負け、悔しいと思った。
このままじゃダメだ。
俺は、自分の肉体を極限まで改造する事にした。
絶対に奴ら以上のパワーを身に付け、今度こそ奴らをぶっ殺してやる!
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(細井悠里)
隊長が拠点の整備をしている間、私はサイコストーンをいくつかもらい、一人で弓の修行をするため佐渡ヶ島の野球場の外に出ていた。
あの戦いで私の弓は全然当たらず、相手の射撃は凄い威力だった。
あの時の悔しさを思い出しサイコボウを握りしめる。
私たちが負けてしまったせいで、リーダーの荒井さんや守備隊の皆さんたちを死なせる事になってしまったのだ……
今度こそ勝ちたい!
だから私自身もレベルを上げていかなくてならない。
そのためには実戦あるのみだ。
幸いと言っていいかどうかわからないけれど、野球場の外の市街にはまだまだゾンビがたくさんいる。
身体強化を極めると共に、攻撃の速度や精度を高めるんだ。
そして未来を勝ち取ろう。
隊長や虎太郎くんたち仲間と一緒に!




