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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
六章 希望を捨てずに
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第196話 絶対絶命(大谷光司)

僕たちは生贄の儀式の邪魔をして教団側と対立する事になった。


現在は男女とも全員が女性側のビルに入り、戦闘要員の人たちで教団側との銃撃戦が続いている。


教団員でない元からいた人たちは、一部が教団側について離脱して敵に回った人たちもいたけれど、殆どの人たちは新参者と言える僕達の側についてくれる事になった。


これは明日奈さんが病気で苦しんでいた人たちを救って、コミュニティの中で聖女と呼ばれ、敬われていたいた事が大きいと思う。


情けは人のためならず、ということわざ通り明日奈さんの人助けの行いが、巡って来て僕達を助けてくれたのかも知れない。


当初、一条さん、遠藤雄二さん、吉田翼さんの三名で行われていた戦闘も、内部を制圧し終えた佐々木さんや、合流した男性陣からの援軍、新たに冴賢さんのアイテムボックスから出した小銃などの武器により、こちら側が優勢になった。


僕たちホワイトフォート勢の目的は新たに仲間となった人たちと共に佐渡ヶ島に渡る事なので、必要以上に教団側の人員を殺傷する事はせず、怪我をさせて戦意を喪失させる方針とした。


相手側が見通しの悪い夜間でも散発的に攻めてくるので、こちらも交代制で対応した結果、一晩中戦闘が断続的に行われる事になってしまった。


夜が明けて明るくなり、最後の相手側の攻撃から少し時間が空いて何やら騒がしくなっている様子だった。


気になった僕は、佐々木さん、遠藤雄二さんと銃撃戦には参加していない虎太郎さんを伴って、ビルの上の階まで行って相手側を見通す事にした。


……


「なんだ、これは」

「こちら側にも……」

「もう囲まれているわね……」


虎太郎さんは淡々と話し、遠藤雄二さん、佐々木さんの呟きは絶望感を伴っている。

それもそのはずで僕達の目の前には絶望的な数の感染者、ゾンビの大群がいたんだ……


新潟港奥のバリケードで封鎖された隔離エリア。

僕たちがいる、その隔離エリアのほぼ全域がゾンビで埋まろうとしていたんだ。


橋のバリケードは多数のゾンビの力で動かされてもう何の意味もなしていない。

数日前から昨夜にかけて、こちらに徐々に迫ってきていたのかも知れない。


僕達の銃撃戦の音が凄かったせいで呼び込んでしまったのか、それとも冴賢さんから前に聞いた事があるんだけど、ゾンビ化した人がここを知っていてリーダーになって呼び込んでしまったのか……


「何処からこんな数が……」


僕自身もどうしようもない絶望感で呟きが漏れる。


直ぐにこのビルを出て佐渡ヶ島に渡ろうにも、準備もしていないし渡航手段も確立出来ていない。


船はもしかしたら出せるかも知れないけど動かし方も分からないし、恐らく分かる人もいないだろう。


魚を釣る漁船では全員乗る事は難しい……


結論としては、このビルに立て籠るしかないと考えた。


「今から準備なしで海への脱出は無理です。このビルに立て籠もるしかないですね……」





-----




(ズダダダッ!)

(ダダッ!)

(パン! パン!)


「この階はもうダメだ!」

「上に行け!」


僕たちは非戦闘員を上階まで逃がした後、各階でゾンビの大群を相手にしていた。

一階の入り口の封鎖には失敗した。


ビルの一階は強化ガラスとはいえ、ゾンビの大群の圧力であっという間に粉々になってしまったんだ。


迫りくるゾンビの大群を足止めして上階に逃げながら戦う。

倒しても倒しても乗り越えてくるゾンビたち。


数時間後、とうとう最後の屋上前まで追い詰められてしまった。





-----




「ぐああああ!」


直哉さんが横から現れたゾンビから茜さんを庇い、噛まれてしまう。

それを見た茜さんは驚き、綾音さんがゾンビを始末した後、直哉さんの噛まれた腕を斬り落とした。


直ぐに後ろに下がって茜さんが直哉さんの腕を止血する。


「何で、私を……」

「い、いてぇ……で、でも、可愛い女の子が噛まれるって、嫌だからさ……」


屋上の出入り口は一か所だけではなかったみたいで、僕たちはもう屋上の一角まで追い込まれていたんだ。


綾音さん、茜さんは直接武器、悠里さんはライフル銃、虎太郎さんも鉄のハンマーでの応戦、佐々木さん、一条さんも小銃を打ち続けている。


綾音さんはまだ無事、茜さんは疲労困憊で先ほど直哉さんに庇われなければ倒されていたかも知れない、虎太郎さんはもう何か所も噛まれているようで、自分が死ぬのを前提でハンマーを必死に振り続けている。


悠里さんも死を悟ってか涙を流しながらの応戦だ。

明人さんや祐治さんなど、銃を扱える人は全員持って応戦しているけど、ここを凌げるとは思えない。


僕たちはもう全滅一歩手前だった……


僕は最後に冴賢さんの方を見た。

女性と子供たちが周りに集まっている。


「お兄ちゃん……起きてよ……」

「ひさとお兄ちゃん……助けて……」

「ひさとお兄ちゃん……」


玲奈さん、美久、真子ちゃんが冴賢さんの体に手を添える。


「ひ~くん……」

「冴賢……」


武田真理さん、荒井家のママさんもだ。


もう前衛は既にほぼ全員が倒れている。

佐々木さんと一条さんも生死は不明だけどゾンビの波に飲まれてしまった。


後は虎太郎さんと綾音さんがかろうじて戦えているだけだ。

両脇からのゾンビの波が押し寄せており、既にホワイトフォート勢とそれ以外の人々も飲み込み始めていた。


武田真理さんが自分を犠牲にする様に両手を広げ、冴賢さんの前に立つ。


これで終わりか……と思った時、莉子さんと明日奈さんが力の限り叫んだ。


「冴賢くーん!!」

「みんなを! みんなを助けてー!」


その瞬間、眠っていたはずの冴賢さんの身体が真っ白に光輝くのが見えた。


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