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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
六章 希望を捨てずに
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第192話 隔離エリア外の調達(遠藤雄二)

「よし、今だ!」


僕達の乗せたキャンピングカーがバリケードの外に発進した。

キャンピングカーが出ると直ぐにバリケードが閉じられる。


虎太郎さんだけは徒歩でキャンピングカーと並行して進んでいて、進行の邪魔になるゾンビを鉄パイプで退けたり叩き潰している。

まだ腕の怪我が治りきっていないはずなんだけど相変わらず凄いパワーだ。


聞けば移動中でも筋トレなどのトレーニングはずっと続けていたらしい。

変異体達に負けてしまったのがどれほど悔しいのかが分かる。


僕達は調達班としてバリケードの外側に物資の調達に出ているんだ。

キャンピングカーは人が結構乗れるし、ガソリンもかなり入っているので即戦力として割り当てられた感じだ。


メンバーはホワイトフォートからは僕、翼(吉田翼)、直哉(渡嘉敷直哉)、虎太郎さんで、隔離エリアのメンバーからは年配の男性である富山さん神崎さんと20代ぐらいの男性の青柳さん、それと教団員の黒川さんの8名だ。


富山さん神崎さん青柳さんは終末の救世教には入っておらず、僕達と一緒のビルに暮らしているので一応顔だけは知っていた。

来る途中で話したんだけど三人とも調達には何回か出たことがあるらしい。


黒川さんは終末の救世教の信者で僕達の監視役らしく、元は僕達の物だった小銃で武装している。


監視といっても黒川さん自体はそれほど偉ぶったところも無く指示役として、危険が無いように頑張ろうと声を掛けてくれたんだ。





ーーーーー





午後、僕達は目的のスーパーにたどり着いた。

駐車場には放置された車や、スーパーの籠などが散らかっている。


「こりゃあ何も残ってないかもなあ」


事前に聞いた話だと黒川さんもここまで足をのばした事は無いらしい。

恐らくこの辺りの人たちもパンデミック時にスーパーに殺到したのだろう。


それでも大型のスーパーなので、何か残っていないかどうか調べる事になった。


……


「気を付けろ、かなりの数のゾンビがいるぞ」


隊列の一番前の虎太郎さんが入口付近で中を確認して告げる。


虎太郎さんと少し遅れて僕、翼と直哉、富山さんと神崎さん、青柳さんと黒川さんの二列になって、左右も警戒しながら進む。

懐中電灯も一応用意してあるので、3人ほどで前と左右を照らしながらだ。


虎太郎さんがこちらに近づいて来るゾンビを蹴散らす。


サイコ武器は冴賢くんがいないと使えないらしいけど、それでも重そうな鉄パイプでほぼ一撃でゾンビを戦闘不能か死に体にしていて、僕たちは倒れたゾンビに追い打ちをかけるだけで良かった。


スーパー奥の生鮮食料は凄く腐った匂いで、食べられる物など無いことがわかる。

だけど缶詰や乾麺、レトルト食品や調味料などが少し残っていたので、手分けしてリュックに詰めた。


「ここはこれぐらいか。多少は収穫があって良かったな。今日はもう引き揚げよう」


黒川さんの判断で戻る事になり、皆が少しほっとした感じだ。


今度は前衛と後衛が入れ替わった状態で戻っていたところ、棚の脇から急に現れたゾンビに富山さんが襲われる。


「ひ! ひぃっ! た、助けてくれっ!」


すかさず虎太郎さんが前に出てゾンビを富山さんから引き剝がし、鉄パイプを振りかぶって頭を割る。


静かになった室内で、富山さんが告げる。


「か、嚙まれちまったよ……」


見れば富山さんの押さえる手には噛み痕があり、血が滲んでいる。


「富山さん!」

「くそっ! 外に急ぐぞ!」


僕達は警戒を強めながらも急いで外に出る。

追いかけてきたゾンビは、虎太郎さんが腹立ちまぎれのように力を込めて倒していた。


キャンピングカー前に無言で集合する僕達。

お通夜のような雰囲気の中、富山さんが自分のリュックを僕達に渡してきた。


「これ、持って帰ってくれ……」

「富山さん、でも……」


「いいんだ。俺はもう戻れない……残された俺の家族を頼む……」


富山さんは同年代の奥さんが教団のコミュニティにいるらしく、無理やり笑顔を作って告げる。


「ああ。富山さんの事は立派に仕事をして亡くなったと報告する。奥さんだったか、追い出すような事はしないから……」


「……ありがとうございます。家内には形見としてこれを……」


富山さんは黒川さんに帽子を渡し、教団員の黒川さんもそれを了承して受領した。



数分後、富山さんを置いてキャンピングカーが出発する。

僕を含め、皆が悲痛な表情だ。


僕だっていつこうなるか分からない。

この数か月間の小学校での生活がいかに恵まれていたかが分かる。


僕達は富山さんの最期の笑顔を思い出しながら無言で帰るのだった。


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