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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
六章 希望を捨てずに
198/220

第191話 教団での生活(桑田明日奈)

私達が教団で労働を強いられるようになって数日が経った。


最初は凄く不安だったけど、今のところ女性が無理に襲われたりする事も無く平安に暮らせている。


ならず者の集まりだったらこうは行かなかったと思うけど、教団という事で教祖の意思の元、統率が取れているのが大きいのだと思う。


一つ良かったのは冴賢くんを私達の女性側で保護出来た事だ。

冴賢くんはまだ目を覚まさないので、莉子ちゃんやホワイトフォートの女性や子供たちで代わる代わる見守っている。


教団の人も目を覚まさない代わりに食事も一切摂らないので、無駄飯食いにもならない為か何も言って来る事はなかった。


私達女性の仕事は主に朝夕の食事作りと配膳、掃除、洗濯など基本的に危なくない家事を行っている。


労働もそれほど過酷な状況ではなく、他の信者や私達と同じように信者ではない人達とも協力してやっていく事が出来ていた。





-----





(ヒュー、ゼエ、ヒュー、ゼエゼエ)

「また苦しくなったの? 頑張って……」


同じフロアの端の方で、小学生ぐらいの小さい女の子がとても苦しそうに胸を押さえて喘いでおり、その母と思われる人が背中を擦って励ましていた。


私はその苦しむ様子が気になって声を掛けた。

一緒のフロアで暮らす、元からいた教団ではない人だ。


「あの、どうかしたんですか?」


すると母親が顔だけをこちらに向け、謝罪の言葉を口にした。

「うるさくしてごめんなさいね。この子は喘息持ちで薬も無くて……発作が出てしまったの……」


「そうなんですか……あの、ちょっと待ってて下さいね!」


私は直ぐに川上先生を呼んで症状を説明し、冴賢くんのアイテムボックスから教えてもらった発作用の吸入薬と、それとは別の予防用の薬を取り出して母子のところに戻った。


「これ、喘息の発作用の吸入薬です。吸わせてあげてください!」

「えっ!」


母親は慣れた手付きで二回ほど空打ちすると、女の子の口に咥えさせて吸入薬を投入し、数分して発作がおさまった様子で、呼吸が楽になった女の子はそのまま寝てしまったみたい。


「貴重な薬を分けていただいて、本当にありがとうございました」


「いいえ、後これ予防用のお薬です。もし足りなくなったら予備がありますので言ってくださいね」


母親からはこの後も物凄く感謝され、その後は名前を交換して立ち去った。

女の子は千夏(ちなつ)ちゃんという名前だった。


学校には通えていないけど本来は今年で小学校二年生との事。

真子ちゃんと同じぐらいかな。


とりあえず千夏(ちなつ)ちゃんが楽になって本当に良かった。





ーーーーー





それからも私は労働の合間に持病を持って苦しんでいる人たちへ、各種の飲み薬や湿布、栄養剤など様々な物資を提供していった。


もちろん慎重に教団側には漏れない様にしており、薬を提供された人たちも私に恩を感じて口を固く閉ざしてくれていた。


そのお蔭もあってか、元からいた人たちと私たちホワイトフォート勢は凄く仲良くなっていて、千夏(ちなつ)ちゃんも予防薬が効いているのか元気だ。

私に会うと勢いよく挨拶してくれる。


「聖女のお姉ちゃん、こんにちわ!」

「こんにちわ千夏(ちなつ)ちゃん。でも何度も言うけど、私は聖女なんかじゃ無いわよ?」


「でもお母さんや大人の人たちが、お姉ちゃんの事をそう言ってたよ?」


私は薬などを提供しているうちに、皆から聖女様と(うやま)われる様になってしまったみたい。


薬を提供したお年寄りなどは私を見て(おが)んでいる人もいる……

ホワイトフォートの人たちからは物資の出所を分かっているので苦笑いされていた。


ここの生活も悪くは無いけど、早くもっと安全な拠点に移動した方が良いのかも。

その時は仲間意識が芽生えたこの人たちも一緒に行ければと思っている。


冴賢くん、早く目を覚ましてね……


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