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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
六章 希望を捨てずに
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第188話 武装解除(佐々木智代)

「こちら2号車、大谷光司です! 美久が、美久が来ている車はありませんか! お菓子を配りに外に出たみたいなんですが、2号車に戻っていないんです!!」


明日以降の行動計画を私達と相談して自分の本来いる2号車に戻った光司君から、美久ちゃんがいないかとパニック気味に連絡があった。


「こちら19号車、一条です。こちらでは美久ちゃんは見ていません」

「こちら5号車、美久ちゃんは見ていません」

「こちら3号車も同様です」


続々といない旨の報告が入る。

もちろん私達の1号車にも美久ちゃんは来ていない。


私は直ぐに武装した茜さんを伴って2号車に行って状況を確認する。

綾音さんは念のため1号車に待機していてもらう。


「光司君! 美久ちゃんがいなくなったのは、いつ頃からなの?」


「正確にはわかりません……僕が1号車に行った後、お菓子の箱を持って車外に出たそうなんです。真九郎君が出ていく美久を見たと言っています。多分一時間ぐらい前だと思いますが……」


相当憔悴した感じで震えながら光司君が答える。

副リーダーの任を授けられて頑張っていたけどまだ中学生の子供、二人だけの兄妹がいなくなってしまっては、こうなるのも仕方がないだろう。


現時点で美久ちゃんがいると返答した車はいない。

なるべく明かりは漏らさないようにしているけど、外は感染者だらけだ。


もしかしたらとの嫌な想像で、背筋が寒くなる。

もう少し厳密に車外に出る事を禁止しておけばよかった……


「とにかく辺りを探しましょう! 光司君はここで連絡を待って! 私と一条さん、綾音さん茜さん、虎太郎君と悠里さんで捜索を行うわ!」





-----





結局、私達の捜索でも美久ちゃんを見つける事は出来なかった。


深夜になってからは私と茜さん、一条さんと綾音さん、虎太郎君と悠里さんのペアで交代で捜索を一晩中続けたけど、感染者以外の動く者は見つけられなかった。


最悪の状況として<感染者となった美久ちゃん>を見つけられなかったのは良かったのだけど、一体何処にいったのだろう……


「敵の捕虜になったとかは考えられませんかね……」


一条さんがひとつの可能性の話をしてきた。

敵とは前日に戦闘があった例の宗教団体の事だろう。


「可能性は確かにあるわね……こちらを監視していて、たまたま一人で外出した子供を拉致した……」


私もそれに同意する。

というか、それ以外で美久ちゃんの生存しているケースが思い浮かばない。


拉致されていたらそれはそれで問題だけど、人命には代えられないから。


「この状況では、逆にそうであって欲しいと思いますね……」

「そうよね……無事でいて欲しいわ……」

「そうだな……」

「うん、きっと無事でいるわ!」


「……」


綾音さんと茜さん、虎太郎君、悠里さんもそれに同意してくれる。


光司君は妹を亡くしてしまったかも知れないという絶望感と、徹夜で待機した疲労感からか、肩を落として無言で項垂れてしまっていた。





ーーーーー





「聞こえるか! 我々は<終末の救世教>の者だ! お前達の仲間で<美久>という子供をこちらの捕虜にした! この子を殺されたくなければ、武装解除してこちらの指示に従え! 繰り返す……」


朝になって車道の陰から拡声器でこちらに話しかける声が聞こえた。

美久ちゃんを捕虜にしたって!


「光司君!」

「み、美久!」


光司君の目から涙が流れる。

美久ちゃんが生きている事がわかって安心したんだろう。


捜索のため、1号車に集まっていた者達は口々に美久ちゃんの無事を喜ぶ。

ひとまずは最悪の状況にならなくて良かった。


「ある程度こちらの安全を確約させた上で、武装解除に応じましょう」


私は口火を切った。

これは光司君が言うわけには行かない言葉だから。


「でも!」


光司君が気丈にも涙をぬぐいながら声を上げる。


「そうよ! 冴賢くんがいれば、絶対に美久ちゃんを見殺しにはしないはずよ!」

「そうそう、美久ちゃんを助けなきゃね!」


明日奈さん莉子さん、いいえ、皆も同じ気持ちみたい。

相手側から何をされたとしても、美久ちゃんが殺されるよりはマシなのよ。


「こちらホワイトフォート。こちらの安全を確約してもらえるのであれば、人質の即時解放と同時に武装解除に応じます!」


私は相手側に堂々と宣言したのだった。


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