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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
六章 希望を捨てずに
189/220

第182話 山を抜けて(大谷光司)

「いました! 運転席側に二体、後部座席に一体です」


元自衛官の一条さんが、新潟方面に抜ける山道に放置されていた車内に感染者がいる事を確認してくれた。


僕は一条さんに頷き、待機してくれていた三人に声を掛ける。


「綾音さん、茜さんお願いします。佐々木さんはバックアップをお願いします」


「承知!」

「オッケー!」


「了解!」


感染者の処理には銃を使った方が安全なんだけど、銃声ではゾンビをおびき寄せてしまうし、万が一僕達が山にいる事がバレてしまうかもしれない。


その為、途中出会う感染者は綾音さんと茜さんを中心にして、近接武器で倒してもらう様にしていた。


だけど万が一倒しきれない時の為に、佐々木さんか一条さんに小銃でのバックアップをお願いしている。


「開けます。3、2、1、ゼロ!」


一条さんが合図して扉を開き、綾音さんの刀、茜さんの薙刀で出て来たゾンビ三体を処置してもらう。


冴賢さんが眠っている間はサイコ武器は使用できないので、武器は冴賢さんのアイテムボックスに保管していたものを取り出して使用している。


「はっ!」

(ザシュ! シュザッ!)


「やっ!」

(ガシュッ!)


「……全ての感染者の沈黙を確認!」


バックアップしてくれていた佐々木さんが、感染者が動かなくなった事を銃を構えて慎重に確認し、結果を報告してくれる。


その後は高校生グループの男子勢で、沈黙した感染者と車を山道の端まで寄せてもらった。

これでやっと道が通れる様になった。


「皆さん、障害物の撤去作業ありがとうございました! 乗員が戻り次第、順次進行を再開して下さい!」





-----





僕たちが新潟を目指して山越えを始めてから、もうニ週間ほどが経っていた。


一年に渡って誰も通らず、メンテナンスもされていない山道は倒木や放置された車、大小の落石、コンクリート擁壁の一部崩壊、彷徨う感染者の対応などもあって思ったよりも進むのに時間が掛かっていたんだ。


パンデミック発生後に車を使って山を越えて逃れようとした人達、またはあちら側から来ようとした人達も結構いたみたいで、故障や事故を起こしたと思われる車や、燃料切れで放置された車、先ほどのように感染者が残された車を何十台も見る事になった。


倒木も数知れず、バランスの悪いキャンピングカーは障害物が小さくても横転の可能性があるので、毎回排除する必要があったんだ。


冴賢さんがいれば超能力での除去やアイテムボックスへの格納をしてもらえれば早かったんだけど、意識を失っている状態なので全て僕たちでやらなけばならない。


僕達はアイテムボックスから物を出すのは出来るみたいなんだけど、アイテムボックスへの格納は冴賢さんしかできないみたいだった。


実は出すのも試してみたところ、荒井家の人と冴賢さんと一緒に住んでいた明日奈さん莉子さん秀彦君、それから明日奈さんの弟である明人さん以外の人は出来ないみたいだった。


恐らくだけど〈家族のみ〉という様な概念的な縛りがあるんだろうと思う。

僕は試してみたところ出す事が出来たので、家族枠に入っていたと密かに嬉しく思っている。


僕と同じく美久も出来るようなので皆からお菓子係りに任命され、子供たちの間を忙しく動き回っている様子だった。





ーーーーー





その後、完全に暗くなる前に一号車の佐々木さんの判断で、トランシーバーを使って停車連絡を出してもらう。


冴賢さんのアイテムボックスからトランシーバーを取り出して、全車に配備して連絡を可能にしているんだ。


合図を受けて全車がなるべく密集するように停車し、前後に三人ずつの見張りを残して各車で夕食を摂る。


食事はどうしているかと言うと、昼は進行中にノンストップで調理してもらった物を進みながら食べてもらい、朝食と夕食は各車に配備している米やレトルト食品、肉、野菜等を調理して食べてもらうか、希望者は1号車にいる明日奈さんや莉子さんでアイテムボックスから取り寄せ可能な食事を提供する事にしていた。


それとキャンピングカーの給水や燃料補給だけど、僕達だと液体をアイテムボックスから出す事が出来ず燃料の補充が出来ないのと汚水の処理も出来ない為、凄くもったいない事になるけどキャンピングカー自体は一日で乗り捨てにしているんだ。


朝一で次のキャンピングカーに乗り換える感じだ。

これも冴賢さんのアイテムボックスにある同一アイテムの数量が、999999と大量であるからこそ出来る事だろうと思う。


実は僕達だと品物は出せるけど在庫数などの数量は分からないんだ。

だから液体系は上手く出せないのだろうと考えられる。


とにかく僕達は豪華なキャンピングカーを贅沢に乗り捨てながら山道を進み、それから四日ほど掛けて山を抜けて新潟に入る事が出来た。

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