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サイキック・オブ・ザ・デッド  作者: ぴっさま
五章 安住の地を目指して
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第163話 置き去り

ある日、また壁外に訪問者がいる事をアイジスが知らせてきた。

どうやらまたモールに住む者達らしい。


彼らに数か月分の食糧や燃料を提供してから二か月ぐらいが経っている。

まさかまた物資の無心に来たんじゃないだろうか……


僕はすぐにパパに報告し、パパと一緒に彼らと相対する。

そこには大津さんじゃなく大柄の島田さんがいて、後ろには六十人ぐらいの老人や女性、子供達がいたんだ。

成人男性もいるけど明らかにかなり少ない。


この辺りは僕が定期的に感染者を間引いていて、結構安全になっているからモールから歩いてこれたんだろう。


「島田さんじゃないですか」

「ああ、久しぶりだな……」


島田さんは出て来た僕を見て何かのバツの悪そうな顔をしている。

僕はパパに島田さんを紹介する。


「パパ。前に教えたショッピングモールに住むグループの島田さんだよ」


「初めまして、島田と言います」

「ああ初めまして。私はここのリーダーで冴賢の父親の荒井だ」


「島田さん、後ろの人達は一体……」


見るところ全員痩せ細って衛生面や栄養状態が悪そうだ。

でも彼らには二ヶ月ぐらい前に半年分ぐらいの物資と燃料を渡しているんだ。

餓えているというのもおかしい。


彼らを見てパパが話す。


「この辺は安全になっているとはいえ絶対じゃない。一旦壁の中に入ってもらおう。冴賢、みなさんを誘導して座る所と毛布を出してあげてくれ。話は食事でもして少し落ち着いてからにしよう」





ーーーーー





その後、ママ、明日奈さん、莉子さんで炊き出しをしてもらい、暖かい豚汁とおにぎり、お茶、ジュースを配ってゆく。


「はい豚汁、温かいわよ。どうぞ~」

「どうぞ~。おにぎりで〜す」

「お代わりもありま〜す」


「あ、ありがとうございます……」

「ママ! 大っきいおにぎりだよ!」

「(モグモグ)おいし〜!」

「すみません、ありがとうございます……」


大人達は申し訳無さそうに、子供達は大喜びで食べる。

島田さんも何日も何も食べていなかったかの様に貪るように食べていた。

もしかしたら自分の食事は後回しにしていたのかも知れない。


……


食事も一段落して一旦落ち着いたところで、少し離れた場所で島田さんにだけ事情を聞くことにした。


そして事情を聞いた僕達はびっくりする事になった。


僕達が物資を提供した当初は皆で普通に暮らせていたらしい。

初日は大量に提供したお肉を焼いてパーティもしたみたい。


けれども一ヶ月半ほど経って、大津さんがトレーラーと数台の車に残りのほとんどの物資と燃料を積んで出て行ってしまったと言う事だった。


一緒に行ったメンバーは、大津さんの親族や忠誠心の高い取り巻きの人、お気に入りの女性達を連れて行き、年配の老人や家族連れなどは置いて行かれてしまったみたい。


島田さん達は抗議したけど拳銃も取り上げられており、多勢に無勢でどうにもならなかったという。


それでも残った物資を子供を中心に分け合いつつ暮らしてきたけど、物資も本当に底をつき調達も困難で、もうこのままでは餓死するしか無い状況になったので、恥を偲んでこちらに縋りにきたという事だった。


「一つ確認したい事がある」

「は、はい。何でしょうか……」


パパが島田さんに尋ねる。


「我々は日本政府とは関わりが無い独立勢力だ。今後も日本政府や自衛隊などの庇護は受けるつもりはない。その理念を受け入れるつもりがあるか?」

「それは……私は元々が裏稼業なので受け入れられます。皆には聞いてみないと分かりませんが……」


「なら子供を除く全員に確認してくれ。我々は決して慈善団体じゃないんだ。どんなに困っていようが、理念の異なる者達は受け入れる事は出来ない」


「はい。これから確認してきます……」





ーーーーー





島田さんが確認に行っている間にパパが僕に聞いてくる。


「まあこんなところだろうな。お前も大津に見捨てられた者達を、そのまま見殺しには出来ないだろ?」

「う、うん」


「この状況で条件を言われてYesと言わない奴がいる訳が無いが、言質を取っておく事も必要だからな」

「そうだね。もう追放はされたくないし……」


追放と聞いて旧ホワイトフォートを思い出した。

あれから二ヶ月と少し経つ。


今は坂部市となった場所に残してきた人達は、日本政府の庇護のもと幸せにくらしているんだろうか。


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