第149話 子供達との合流
僕達はハンドライトで辺りを照らしながら、無事小学校までたどり着いた。
そして、ここへ来る時に見つけた金網の切れ目から同じように入る。
校庭を歩きながらハンドライトを二階の教室、綾音さんや子供たちがいると思われる教室に向けて合図する様に照らすと、窓から顔を出した子供達がこちらを見つけて騒ぎだした。
「「「あー!」」」
「お兄ちゃん達だ!」
「帰ってきたんだ!」
「やったー!」
「「「お帰りなさい!」」」
「みんな! 今帰ったよ!」
「みんな無事?」
「良かった!」
「帰ったよー!」
「ただいま!」
雄二さん、有紗さん、麗華さん、直哉さん、翼さんも手を振りながらそれに答えた。
そして僕達は急いで皆がいる二階へと上がっていった。
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「みんなー!」
「遅くなってごめんね!」
有紗さん麗華さんが子供達のところに走りよって抱きしめる。
子供達も凄く嬉しそうだ。
「冴賢殿、お疲れ様でした!」
「綾音さんも子供達の守り、お疲れ様でした。少し手間取ってしまって遅くなってしまい、済みませんでした」
綾音さんも僕を笑顔で労ってくれる。
それから透君も僕に少し興奮した様子で話しかけてきた。
「兄ちゃん達を見つけてくれてありがとう!」
「うん。どういたしまして」
僕も笑顔で透君に返す。
「れいかお姉ちゃん、お帰りなさい」
「ま、真子ちゃん! 喋れる様になったの!」
「「「「!」」」」
真子ちゃんの声を聞いて、麗華さんと帰還した皆が驚く。
「うん……あのお兄ちゃんに治してもらったの」
真子ちゃんが僕を指差す。
「僕が治療したというよりも、僕の涙を見た真子ちゃんの優しい心が自力で回復を促した様な感じだと思います」
僕の治癒は少し効果があったのかも知れないけど、やはり真子ちゃんの心が呼び込んだ奇跡だと信じたいところだ。
「良かった。良かったね……」
麗華さんが真子ちゃんを泣きながらぎゅっと抱き締める。
僕はそれを見て、他者を想って流す涙はやはり美しいと思った。
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行方不明だった高校生達も帰還し、これで小学校の皆が揃った事になる。
小学生10人、中学生4人、高校生5人の19名だ。
僕は夜食としてアイテムボックスからいくつかの大皿に分け、ほっかほかの温かい肉まん、あんまん、ピザまん、そして紙コップとオレンジジュース、ウーロン茶、コーラの飲み物類を取り出した。
「さっきもそうだったけど、これは一体……」
「お前は何者なんだ?」
雄二さんが絶句し、翼さんも尖い目で警戒する様に聞いてくる。
皆が言葉をなくして僕に注目する中、綾音さんに一つ頷いて皆に説明する。
「まず、僕は皆さんの敵ではありません。改めまして、僕は高校一年生の荒井冴賢と言います。そこの方は僕の仲間で平坂綾音さんです。小さい子もいるので、肉まんでも食べながら聞いてください」
綾音さんも肯定する様にお辞儀をする。
それを聞いてお腹が空いていたのか、肉まんやあんまんに噛り付く子もいる。
麗華さんや有紗さんや中学性女子の女性陣が、小さい子にジュースを注いだり肉まんを取ってあげたりしている。
僕は少し落ち着くまで待ってから、なるべく小さい子にも分かるように何回か話を分けながら説明する。
「僕には他の人には無い力があります。今、皆さんが見たのは何もないところから色々な物を取り出したりする能力です。他にも光を纏ってゾンビを攻撃するような力もあります。でもこれは僕が自分で身につけた力ではなく、ある存在に授けられた力なんです」
「その存在は、この地、地球の事だと思いますが、それを捨てて去ると言われました。理由は、この地球が文明的には栄えましたが人々の心が荒廃してしまい、このパンデミックも起こったからです。そして言葉通りに去ってゆかれましたが、ありがたい事に僕がこの世界でも生き残れる様に、この力を授けてくれたのです」
「その力を使って僕は自分と自分の仲間を守ります。今までは少し南の方で街作りをしていたのですが、そこで日本政府勢力とトラブルがあって、今は仲間と安住の地を探して旅をしています。そしてこの市街に入ったところ、子供だけのグループがいたのでここへ来てみたといったところです」
僕は皆を見回して話を切った。
中学生、高校生達は真剣な顔で聞いているけど、小学生達はほぼ食事に夢中になっていた。
「そんな……」
「神様に見捨てられてるなんて……」
「不思議な話だが、妙に説得力があるな」
「神様なんて、スケールが大きすぎるよ……」
「冴賢君の仲間は何人いるの?」
麗華さん有紗さん翼さん直哉さんが呟き、雄二さんが質問して来る。
「僕の仲間は現在140人です。今は、ここから少し離れたところで車で待機してもらっています。今後の為に、この市街の何処かで戦闘訓練を行ってから目的としてる場所に向かう予定です」
「僕達もそれに入れてもらう事は出来るのかな?」
「それはもちろん可能ですが、一つだけ条件があります」
「条件?」
「はい。僕達は日本政府から独立した勢力として活動します。この理念を受け入れられない人達は仲間として迎えられません」
「なるほど、条件は分かったよ。一晩みんなと相談させて貰えないかな? みんなもそれで良い?」
他の高校生や中学生達も頷く。
「分かりました。では、僕達は一旦戻って明日の朝にまた伺いますね。それと、物資が無いでしょうから朝食用の食材を置いていきます」
僕はアイテムボックスからお米10kg、炊飯用のガスコンロと鍋二つ、2Lペットボトルの水20本、生卵10個入2パック、ベーコン4枚入10パック、卵を焼く為のフライパン二つ、小さ目の納豆20パック、作り立て味噌汁の入った大鍋、サラダ油、醤油、2L麦茶5本、それから念の為、お箸と茶碗、汁物の椀、コップ20セットを纏めて教室の隅に置いた。
「ご飯と味噌汁、ベーコンエッグ、それに納豆だよ!」
「ええ〜っ! 凄っ!」
「冴賢君ありがとう! 今の世の中だと、まるで夢の様な朝食だよ!」
直哉さんが一番最初に反応し、有紗さんも驚き、雄二さんが嬉しそうにお礼を言ってくれた。
「いいえ。では、また明日」
そして僕と綾音さんはパパ達のところに一旦戻るのだった。