第104話 虎太郎さんの参加
虎太郎さん達を連れて集落に帰った僕は、虎太郎さんをパパに紹介し、集落への参加を承認してもらった。
パパも大柄で強そうな虎太郎さんの参加は大歓迎だったみたい。
その後、明日奈さん、莉子さん、光司くん、明人くんを呼び、虎太郎さんを軽く紹介し、そのまま変異体の情報共有会を開いた。
その間、寝ている鈴花ちゃんはキャンピングカーで美久ちゃんに見てもらっている。
「この写真の化け物が、例のゾンビウィルスが変異したという変異体なのか?」
パパがスマホで撮った写真を一通り確認して次の人に回し、実際に遭遇した僕と虎太郎さん以外が確認していく。
明日奈さん、莉子さんも怖がりながらも目を通す。
「うん。実際の大きさも虎太郎さんと同じ位だからかなり大きいし、凄く素早くて力も強かったよ。僕のサイコバレットも腕で簡単にガードされちゃったしね……」
「そいつはヤバいな。今現在、この変異体が一体どのくらい日本にいるのか……発生する条件や頻度は? 種類は? 知能はあるのか? わからない事だらけだな……」
「僕のサーチ範囲内には他にいなかったから、まだ数は多くはないんだと思うけど……」
「これから増えて来るのかも?」
「怖いわね……」
「「……」」
明日奈さん、莉子さんが怯えた様に呟く。
光司君と明人くんは言葉も無い様だ。
「冴賢、変異体がここの壁を越えて中に入れると思うか?」
「それは……多分だけど無理だと思う。土壁のバリケードは固定してあるからミサイルでも壊せないし高さは10mもある。それに何と言っても白蛇さんの結界を破らないと中には入れないからね」
それを聞いて女性陣は少し安心したみたいだった。
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その後、虎太郎さんと鈴花ちゃんは、パパ達の家に近い空き家に入ってもらう事になった。
パパの指示で、当分の間というか変異体の詳細が分かるまで、僕は虎太郎さんとセットで動く事になったからだ。
これには明日奈さんと莉子さんも大賛成で、僕一人だけだと何かあった場合にずっと心配だったという事だった。
二人には心配を掛けていた様で申し訳なかったと思う。
虎太郎さんもチマチマした仕事よりは、戦いの方が俺には向いていると豪快に笑いながら了承してくれた。
虎太郎さんがいない時、鈴花ちゃんは妹の玲奈が面倒を見る事になり、少し落ち着いたら学校に通わせようという事にもなった。
虎太郎さんの家にも必要な家具・家電・衣服などを揃え、生活が出来る様に整えていった。
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数日後から僕と虎太郎さんは少し二人で訓練を行なう事にした。
まずは移動用に最適な、絨毯での飛行に慣れてもらう事に。
「虎太郎さん、どうですか?」
「思ったよりも怖くないな。もし、落ちても大丈夫なんだろう?」
「はい。僕が一緒である限り念動力で拾い上げるので大丈夫です。それに最悪の場合でも即死さえしなければ治療可能ですよ」
「いや、絶対痛いだろ!」
冗談を言い合いつつも虎太郎さんは順応してくれている様だった。
それから僕は一つ試したい事を実験してみる事にした。
「虎太郎さん。これを持ってみてもらえますか?」
「何だこりゃ。あの時の武器か?」
僕は超能力で生成した青白く輝くサイコブレードを虎太郎さんに渡す。
僕以外の人が持って使えるのかどうか? ずっと知りたかった事だ。
「これは僕の超能力で作った武器です。痺れたりはしないと思うんですけど……もし怪我とかしたら治療出来ますので……」
「何かの実験か? まあ良いだろう」
虎太郎さんがサイコブレードを手で受け取る。
どうやら普通に持てるみたいだ。
「持てましたね! どんな感じですか?」
「何か凄く軽いな。プラスチックで作った玩具の剣みたいだ」
もしかして僕が認めたから? それとも誰でも持てるのかな?
詳細はわからないけど、他の人が使えるなら戦略の幅が広がるかも知れない。
「じゃあ次はそれで何か斬ってもらえますか?」
僕は周囲を見渡し、その辺にある木片を虎太郎さんの前に立てる。
そして虎太郎さんが剣を構え、シュパッとその木片を斬った。
「どうですか?」
「全く手応えが無いぞ。斬れ味はいいとは思うが……」
一応、実験は成功というか僕以外が使う事も出来て、斬れ味も悪く無いみたい。
念力の力を消費した感覚はあるので多用は出来ないのかも知れないけど、僕と虎太郎さんの分くらいだったら全然問題無いだろう。
だけど、何となく虎太郎さんは剣は好きじゃないみたいだ。
「虎太郎さんは武器ならどんな物が良いですか?」
「そうだな。俺は、バットみたいな殴る武器だな。ただ、バットだと小さいからもっと大きな物がいいんだが……」
虎太郎さんのリクエストを聞いて、僕はゲームにあるような巨大なハンマーを念力で生成してみた。
念力で作っているからサイコスレッジハンマーとでもしておこうか。
長さも2m以上あって打撃面の直径も1mぐらいある。
「これなんかどうですか?」
「おっ! 巨大ハンマーか、かっけえな! さっきより少し重さもあっていい感じだぜ!」
威力を試す為に、また僕が木片を探し出して地面に立てる。
そして虎太郎さんがサイコスレッジハンマーをフルスイングすると、ハンマーの打撃面に当たった木片は、割れるというより粉微塵になって吹き飛んでしまった。
「ははっ! こりゃあいいぜ!」
物凄い威力だった事を笑い合う僕と虎太郎さんであった。