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閑話.カールの話

短編「天才王子の従者は今日も振り回されている」を再収録したものです。内容は変わっていないので、ご注意ください。

ここはヴェルナー王国の王城。

聡明と名高い第二王子とその従者である俺の日常を今から説明しよう。


まず、第二王子の従者であり乳兄弟でもある俺はカール・コリン。

母親は王子の乳母を務め、現在は女官長をしている。

ちなみに父親は第三騎士団の団長をしている脳筋である。

俺は母親に似たために同じく宮仕えをしている。



そして俺の主は第二王子であるクリストファー・ヴェルナー様だ。

ほとんどヴェルナーという名字は使わないため、俺はクリストファー様とお呼びしている。


幼い頃から神童と名高く、将来有望な俺の自慢の主である。

うん、まぁ自慢··· まぁ、公の場に出る時はそれはそれは絵本から飛び出してきたようなThe王子様ですよ? でも、ねぇ?



「カール!エミリーと会えるか確認して、会えるんなら予定を調整しろ」


あ~、また始まった。俺は内心ため息をする。


ちなみにエミリーこと、エミリティーヌ・グリトリッチ公爵令嬢様はクリストファー様のご婚約者であらせられる、この国でもかなり高位の公爵令嬢である。


エミリティーヌ様は一人娘のため、クリストファー様とご結婚して公爵位をお継ぎになる。

次期公爵に相応しい品格と聡明さを誇る淑女の鏡なのだ。 


「クリストファー様、書類の決裁は済まされたのですか?」


一応聞いてみる。

今日の書類の量はかなり多いはずだが。

書類を放り出してエミリティーヌ様と会うつもりか…?


「もう終わった。ってかなんで俺が決裁しなきゃなんないわけ?こちとら学園に入学してもない子供なんだぞ」


クリストファー様、口調が乱れてます。

でもまぁ、それはそうなんですけど。

聡明な主は暇だろということで王様から書類を押し付けられたらしい。


別に王様がダメダメとかそういうわけじゃないんだけど。

ただ、今は王城は繁忙期。忙しいのだろう。

そういったことは母上から良く聞かされているし。


「はぁ、クリストファー様。

毎度毎度クリストファー様のご褒美としてエミリティーヌ様を呼び出すのはいかがかと思いますよ?

エミリティーヌ様も領地経営などの勉強でお忙しいらしいですし」


「だから、エミリティーヌが忙しいのなら別に俺は我慢すると言っているだろう」


挙句の果てに駄々こねまくってますよ、主。

なんか年々精神年齢が下がっていないか?


主は幼い頃から神童と謳われていたせいか、昔から子供なのに大人のようだった。

心からの笑顔など全く無く、自分にとってではなく国にとって有益かどうかを考えて行動していたから。 

義務的に公務をこなす主に両陛下はかなり心配なさられていたのだ。


それが変わったのはやはりエミリティーヌ様がご婚約者になられてからだろう。

あのクリストファー様が楽しそうにしているところなど初めて見たものだ。


それからというもの、クリストファー様はだいぶお変わりになられた。

エミリティーヌ様を溺愛し、他の子息を牽制し。

クリストファー様の人生はモノクロから虹色に変わった。


聡明なところは変わらないが、エミリティーヌ様を前にすると表情がほころんでいて、『第二王子が人間になった』と側仕えは皆衝撃を受けたものだ。

クリストファー様は裏で『アンドロイド』と謳われていたぐらいだったし。

クリストファー様を変えてくださったエミリティーヌ様には感謝しかない。


「分かりましたよ」


ため息をつきつつも俺は了承する。

クリストファー様、エミリティーヌ様を手放すとか考えたこと無いんだろうな〜


超執着男である我が主に捕まったエミリティーヌ様に思いを馳せた。


 ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢ ✢


さて、エミリティーヌ様が主を訪ねてくださった。

毎度すいません。

エミリティーヌ様には頭が上がりませんよ。


「エミリティーヌ、今日は来てくれてありがとう」


クリストファー様が微笑む。

外面の良さならこの国一番の主は今日も相変わらずだ。

先ほどまで駄々を捏ねていた人とは思えないほど変わり身が速いところも。


「いえ、私も息抜きがしたかったのでありがたいです」


あー、エミリティーヌ様お忙しいんですね···

なのに呼び出してしまって、我が主が申し訳ありません。

そんな俺の気持ちなどつゆ知らず柔らかく微笑むエミリティーヌ様はもう聖女のようである。


「エミリティーヌ、今日はプレゼントをしたくて。ほら、このネックレス綺麗だろう?」


クリストファー様が見せたのは紺色の宝石が付いたネックレスだ。

ちなみに、俺が手配した。


紺色、紺色ねぇ···

俺達側仕えや使用人は分かってしまった。

紺色はクリストファー様の瞳の色。


相手の瞳や髪の色を纏うということは相手のものになったということだ。

子息が婚約者に自分の色を纏わせるということは他の男を牽制する意味合いもある。


なんという執着心。我が主ながら怖い。怖すぎる。

ちなみに、側仕え達は皆、主の執着心に引いたような表情をしている。


「綺麗ですね。ありがとうございます」


ん? もしかしてエミリティーヌ様気づいてない?

エミリティーヌ様が連れてきた公爵家に仕えるメイドを見やる。

メイドは苦笑しながら頭を下げた。


どうやら鈍感なのは今に始まったことではないらしい。

だからといってその意味は言えないよね、分かる。

言ったら絶対に主から抹殺される気しかしないわ···



「ありがとうございました、ネックレス」 


エミリティーヌ様が帰っていく。 


「うん、またね。気をつけて」


「ありがとうございます」


エミリティーヌ様が乗った馬車が見えなくなっていく。


「クリストファー様、あのネックレス…」


「言うな。しょうがないだろう?もう少しで舞踏会があるからな。牽制しなければ」


うん、主が主してるわ。ブレねぇな。

こんなヘタレっぷりだが、これでも次代の王国を背負う一人。

エミリティーヌ様におかれましては、これからも我が主をどうぞよろしくお願いいたします。




クリストファーのエミリティーヌに対するヘタレっぷりをカイル視点で書いてみました。短編にはカイルは登場していないのですが、それでもクリストファーの尻をたたいているのが想像できますね(笑)

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