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1.どうも、乙女ゲー厶の攻略対象に転生しました

『転生王子はヒロインを選ばない』を長編化しました。短編しか書いてなかったので、長編って難しいんですね…

俺は日本に住む一般的な大学生。

両親と妹の4人暮らしで、そこそこ幸せな生活を送っていたと思う。

そして交通事故で車に轢かれ、亡くなった、はずだ。


「この子の名前はクリストファーにしましょう」


金髪碧眼のイケメンと金髪翠眼の美女に顔を覗き込まれ、美女がそう言った時。

俺は気付いてしまった。

乙女ゲー厶の攻略者に転生したことを。


なんで男なのに乙女ゲー厶に詳しいの?と思ったそこのあなた!目の付け所が違うね〜

まず俺には前世、妹がいた。乙女ゲー厶の類が大好きな脳内お花畑な妹である。

そこまでは良い。良いのだが、その妹がなぜか俺にも乙女ゲー厶を布教した。

それはもう強制的に、徹底的にである。


なまじっか末っ子として両親から甘やかされていて、自分のおかげで地球が回っているとでも思っている、そんな妹だ。


『パパ〜!お兄ちゃんがゲー厶に付き合ってくれないの〜』

『ママ〜!お兄ちゃんが私の推しを馬鹿にするんだけど~』


といった風に妹は外堀を埋めてきた。

そして両親が取った行動とは…もうお分かりだろうか。


『○○、お兄ちゃんなんだから妹のお世話をして。』

『○○、妹をいじめるのは駄目だぞ』


である。まったく、兄というのは損な役回りである。


さて、そんな妹が特にハマり推しだったのが俺が転生した『クリストファー・ヴェルナー』だ。


『クリストファーってね、暴言を吐く時と優しくする時のギャップが凄いの!それはもうね……』


という風に力説された。

うん、暴言吐くとか人間としてどうなわけ?

しかも二次元ならまだしも、俺にとっては三次元である。

妹の男を見る目はどうやら悪いらしい。


さて、この乙女ゲー厶の名前を俺は覚えていないが、ストーリーだけなら覚えている。

確か、ヴェルナー王国を舞台に、過去の経験から捻くれた考え方しかできなかった男達を平民出身の男爵令嬢が癒やしていくという王道の物語だ。


今思えば、ヒロインは胸を押し付けて男に甘えているだけで、まったく好きになれない。

それに可愛い系のヒロインは前世の妹に似ていて、拒否感を示してしまう。


ちなみに、この世界には乙女ゲー厶にありがちな悪役令嬢もいる。

ヒロインを虐め、ヒロインとヒーローに断罪される損な役回りで、俺はその境遇に共感してしまった。

また悪役令嬢は俺のタイプの綺麗系美女なので、ヒーローには「ヒロインより悪役令嬢の方がよくね?」と言いたい。力説したい。



さて、次は俺こと『クリストファー・ヴェルナー』の紹介に移ろう。

クリストファーはここ、ヴェルナー王国の第二王子である。

あまり優秀ではない兄を持ち、第二王子というスペアであることや優秀すぎて手がかからなかったことにより親から愛されなかったため、愛情を欲している。


無償の愛をもって接してくれるヒロインにいつの間にか好きになり、ヒロインを虐める悪役令嬢を断罪して公爵となるストーリーだったはずだ。


問題は、俺に婚約者がいるということだろう。

俺の婚約者の名前はエミリティーヌ・グリトリッチ。

グリトリッチ公爵家の長女だ。グリトリッチ公爵家といえば四大公爵家の一つとして知られている。


エミリティーヌ嬢は美少女であると同時に優秀としても知られ、様々な家から婚約を願い出られたらしい。

グリトリッチ公爵家に嫡男がいれば、確実に王太子妃になっていただろうと言われるほどには。

俺の婚約はグリトリッチ公爵家と王家の絆を深めるための政略的なものだ。


ちなみに俺は知らなかったが、【『天才王子』と話が合うくらい優秀で、嫡男がいない公爵家もしくは侯爵家の令嬢】という条件があったらしい。

両親なりに仲の良い夫婦になってほしいと思ってくれていたのだろう。


エミリティーヌ嬢は一人っ子のため、俺が婿養子となりグリトリッチ公爵家を継ぐはずだ。

ただ、エミリティーヌ嬢はヒロインを虐める悪役令嬢役である。

クリストファーはヒロインと共にエミリティーヌ嬢を断罪して公爵に就任するというストーリーだ。

と、説明はこれで良いだろうか。


ただ、今の俺はヒロインのような可愛い系女子よりエミリティーヌ嬢のような綺麗系女子の方が好きなのだ。

それに、前世含めればかなりの年である俺は別に親の愛に飢えてはいない。

というか次期王である兄のほうが大切なのは当たり前で、だからといって俺が愛されていないわけではないのだ。


王子として、そして王族として国民第一に動くのも当たり前。

俺は転生して、王族の責任の重さをやっと理解したのだ。

王国を発展させるための結婚。

また、この国は王が政治の実権を握っている。

よりよい政治を行うことの重要性。

そして国の顔として出席する外交。

近隣国と友好関係を築くための大切な王族の仕事の一つである。


俺は5歳ほどで王族としてあるべき姿を理解し、両親に迷惑を掛けないように過ごしてきた。

さて、そんな王子を周りはどう思うか。

言うまでもない。

俺は『天才王子』と持て囃された。

この国の数学は前世の小学生くらいまでしかやらない。

それが普通で、前世の知識を持つ俺が『簡単だなぁ』と思って解いた問題が実は難問とされていた。


政治も前世の社会の授業で仕組みはなんとなく分かっていたから、家庭教師からは『もう教えることはございません』と言われた。ぴえん。

楽しい授業だったから、ずっと話を聞きたかったのに。

その時に怒っていると思われ、萎縮された。

……俺、そんなに怖い?



「クリストファー様!」


ハッ!どうやら居眠りをしていたらしい。


「クリストファー様?お疲れでしたら、もうお休みになられても……」


こうやって俺を気遣ってくれるのは、カール。

俺の乳兄弟にあたる。

現在は俺と同じ7歳だが、幼いながらに聡明さの片鱗を感じさせる、将来有望な少年である。


「明日はグリトリッチ公爵令嬢様と婚約の茶会がありますが、出席できますか?」


「ああ、もちろんだ」


「分かりました。しかし、あまり無理をなさってはいけませんよ?」


『天才王子』として、幼い頃から嫉妬や羨望の視線で見られてきた俺にとって、カールの気遣わしげな視線は少々面映ゆく感じる。

それに、過保護で口うるさい所は母親似で、昔から仕えてくれる乳母を彷彿とする。

現在、乳母は俺の母親つまり王妃の侍女となっているため、会う機会が少ない。

俺の母親代わりと言ってもいい存在のため、久しぶりに会いたいものだ。

目の前の少年に乳母の面影を感じ、少し黄昏てしまった。


「クリストファー、明日はグリトリッチ公爵令嬢との茶会だな」


ディナーのときに父上からそう言われた。


「ええ」


父上は何も言わなかったが、視線や言葉の端々から『大きくなったら公爵家に婿入りするのだから、今のうちから令嬢を捕まえておけ』という思いが伝わってくる。

それを踏まえての肯定の返事をしたのだ。


「クリストファー、グリトリッチ公爵令嬢は美少女で有名だからね。良いなぁ」


そう言ったのは兄王子である、ヴィンセント・ヴェルナーだ。

乙女ゲー厶の展開とは異なり、この世界では兄弟仲は良い。

優しすぎるところが玉に瑕だが、優秀な、次期王に相応しい王太子である。


「兄上のご婚約者様はまだ決まっておられないのですか?」


そう、兄上には婚約者がいない。次期王妃に相応しいご令嬢があまりに少ないらしいからだ。 


「ああ、候補はいるのだが」


兄上には、素晴らしい婚約者ができると良いな。

俺は心からそう思った。


「ふふ、エミリティーヌ嬢は可愛いのよね。可愛い義娘ができて嬉しいわ」


そう言ったのは母上。

息子しかいないため、息子の嫁を熱望しているのだ。どうやら義娘を着飾らせて一緒にショッピングしたいらしい。

ですが母上、まだ結婚してないので義娘ではありませんよ?


和やかなディナーの時、俺はとても緊張していた。

俺の婚約者である、グリトリッチ公爵令嬢は俺の好みどストライクの美少女だ。

明日の茶会で何か粗相はしないか、嫌われないか。

そんな心配をしたからである。

家族の前では平静を装っていたものの、部屋に戻ると、どっと疲れてしまった。


(エミリティーヌ嬢と会えるのは嬉しいが、かなり緊張するな)


こんなんで明日、大丈夫だろうか。

俺は心配になってきた。



ーそして俺は知らない。


明日の茶会での出会いによって、側仕えから『人間じゃない、サイボーグだ』と影で言われていた俺が『人間になった』と衝撃を受けられるほど、人生が変わっていくことを。


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