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第二章

あらすじ

同じ大学の四年生の二人。

カキクケコは、何も考えないけど、ただ真面目で害もないやつ。典型的で理想的な学生。

アイウエオは、単位もギリギリで、何も行動しないくせに文句ばっかり言っている学生。

アイウエオは、自分の方がおかしいのだと、カキクケコが普通なのだと気付くが、まだそれを受け入れられずにいる。何も考えていないカキクケコのことを間違っていると考えるが、自分も知らないことわからないことがたくさんあることに気づいて、いろんなことに疑問を持つ自分の方が正しいという考えに、疑問を持つようになり、そこから、何が本当に正しいのか、自分も相手も間違っているかもしれないと考える。

だが、自分は間違っていないと思いたい心情や嫉妬から、普通に生きている人たちを下に見てしまい、

なぜ定期テストの勉強を何の疑いも持たずにできるのか、なぜ轢かれたレールを当たり前のように歩けるのか、という疑問をぶつけた。そして、なぜ当たり前のことが自分はできないのか。


アイウエオ

 この前言っていた、映画見に行くっていう話、やっぱり行けなくなりました。ごめんなさい。

カキクケコ

 いや無理です。

アイウエオ

 いや、無理ってなんですか。

カキクケコ

 理由は何ですか。恋人ですか。

アイウエオ

 いや、恋人いないですし、いたことないですけど。イジってますよね。

カキクケコ

 じゃあ、どうしてですか。

アイウエオ

 卒論がちょっとやばくて。

カキクケコ

 この前はいけるって言ってたじゃないですか。

アイウエオ

 あのときは、一週間あれば間に合うかと思って、安直に返事をしてしまったのですけど、思ったより多くて。ごめんなさい。

カキクケコ

 はぁ、じゃあ、今度飲みに行く時は奢りですよね。

アイウエオ

 いや、それはちょっと。

そこまで責められることでもないと思います。こうやって、二日前に連絡していますし、ドタキャンでもないですし。他の方を誘ったり、別の予定に変更できる期間もございますし。映画だったら、最悪一人でも問題ないと思いますし。

あ、そういえば、あなたは、もう卒論終わったのですか?

カキクケコ

 普通に終わってますけど。

アイウエオ

 本当ですか。すごいですね。内定も早くにもらっていたし、これが、人生の勝ち組というやつですか。

カキクケコ

 いや、話変えないでください。まだ話は終わってないですよ。じゃあ、奢ってくれるんですね。無理なら来れば良いだけですけど。映画くらいならいけるでしょ。

アイウエオ

 奢らないといけないのですかね?

カキクケコ

 約束を破ったわけですからね。

アイウエオ

 破るとは少し違うと思いますけど。まぁ、でも、少なくとも迷惑をかけたということで、何かのお詫びが必要で、そのお詫びとして、奢るということも必然なのか。いや、どうだろう。わからない。

カキクケコ

 悩むまでもなく、普通に必然です。

アイウエオ

 オイラだったら、当日に連絡が来るのは、予定が崩れるので嫌ですけど。二日前なら許容範囲というか、全然許せますけど。

二日前が、君の許容範囲ではなかったということですか?一週間前なら許せたということですか?

カキクケコ

 もちろん、一週間前の誘った時に、きちんと断ってたら何も問題ないですよ。

アイウエオ

 いや、そういうことじゃなくて、例えば、一ヶ月前に遊ぶ約束をして、約束の日の一週間前にやっぱり無理ですって断るのもだめですか、ということです。

カキクケコ

 え、どういうことですか。

アイウエオ

 例えば、七月一日に、一ヶ月後の八月一日に遊ぼうという約束をして、でも、七月中にやっぱり遊べないことになって、約束の日の一週間前の、七月の二十五、二十六日くらいに連絡するのはセーフですか、ということです。

カキクケコ まぁ、そうですね。許容範囲、いつまでなら許せるのかというより、一度約束したのなら、約束を守るべきで、もし守れないのだとしたら、別のもので補うのが普通だと思いますけどね。

アイウエオ

 そうか、自分だったら許せるから良いだろうということではないのか。自分の価値観を押し付けるなってやつか。許容範囲で言っても、人それぞれで違うし、その価値観の違いを埋めることは難しいから、ある程度のルールみたいなものが、摩擦を減らすためには必要で、それが常識とか、普通というものなのですかね。

カキクケコ

 そうじゃないですか。

アイウエオ

 ということは、奢らないといけないということですか。

カキクケコ

 じゃあ、もう大学の学食で良いですよ、奢るのは。

アイウエオ

 え、本当ですか。やった。もしかして、君がいわゆる神というやつですか?

カキクケコ

 そうですよ。知らなかったんですか。

アイウエオ

 知らなかったです。もしかしたら、いないのじゃないかとも思っていたので。



アイウエオ

 それで、さっきの話ですけど、卒論も当たり前のように終わっていて、単位も余裕で取り終わっていて、本当にすごいですよね。内定もすぐもらっていたし、完璧な大学生活で盤石に人生を歩んでいきますね。

カキクケコ

 別にそんなことないですけど。もっとすごい人はいるでしょ。

アイウエオ

 やっぱり、そういう人が幸せとされている人生を歩んでいくのでしょうね。

カキクケコ

 そんなことは、まだわからないでしょ。

アイウエオ

 たしかに、サボって、たまにしか授業来ない人とか、一限は起きられないとか言うてる人のこと見下していたのに、そういう人らでも、単位はしっかり最低限取っているし、サークル活動も充実していて、バイトも頑張っているから、なぜか金持っているし、内定もなぜか、ちゃっかりもらっているし、彼ら彼女らが一番大学生活を満喫した、していたのかもしれないですね。うざいです。

目の前の快楽だけを安直に追っている愚かな人間だと思っていたのに。何があの人たちの頭の中を渦巻いていて、何を考えているのだろうか。

カキクケコ

 あなたがサボり過ぎただけでしょ。レポートとかちゃんと出せば、単位は取れるでしょ。一緒に僕とちゃんと授業は受けてたのに、それもほとんど寝ず、人一倍真面目に。なのになんで、四年の最後まで授業真面目に受けてるんですか。

アイウエオ

 オイラも不思議です。全部授業出たのに、レポート出さなくて落単した授業を、もう一回取って、また、きちんと授業全部受けましたもんね。もう一回レポート出さずに、落単していたら面白かったのですけど、さすがに、レポート出してしまいました。

カキクケコ

 ただの阿呆でしょ。

アイウエオ

 でも、本当に何もせず、ただただサボって、留年とか、退学していく人もいるのでしょうね。

カキクケコ

 そうなんじゃないですか。あなたもその一歩手前でしょ。

アイウエオ

 たしかにそうですね。

でも、最低限のことをきちんとやれる人たちは、本当に要領が良いというか、生きるのが上手いですよね。

短絡的に楽な方を選んでサボっているのかと思えば、テスト前になると、将来のことを考えてなのか、上手いこと切り替えて、急にスイッチ入れてテスト勉強し出すし、レポートも当たり前のように終わらしているし、なんというか、上手いこと人生をこなしていきますよね。

どうして、こんなことをしないといけないのだろうとか、考えないのですかね。やれと言われたことを、何も考えず無心でやっているようにも見えます。

これは別に他の奴らも一緒か。

オイラなんか、テスト前日に、自分のやりたくない、逃げたいという気持ちを正当化しようと色々考えていたら、もう次の日になっていて、ノー勉でテスト受けることになりますからね。

カキクケコ

 いや、そっちの方が阿呆でしょ。

アイウエオ

 そうですよね。

 でも、そうか、授業をサボるのは、短絡的に楽な方を選んでいるからではないのかもしれないですね。今サボっても、全然平気だと計算して、色々なことを考慮して、戦略的にサボっているのかもしれないな。そうだったらすごいですよね。

しないといけないことと、自分の欲とのバランス、理想と現実とのバランスを上手いこと取って、完璧に自分を律しているのかもしれないですね。ハハハ。

何も考えていない阿呆だと勘違いしていました。


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