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キャロライン・ルルイエの消息  作者: ヤミヲミルメ
呪いのブルーダイヤモンド
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老教授の話

「サン・ジェルマン・ルルイエ伯爵。

 懐かしい名ですな。

 お会いしたのは私がまだ学生だった頃ですから……一八七〇年代の前半になりますな。ロンドンでのことです」


※サン・ジェルマンがパトリシアと出会う直前と思われる。


「ルルイエ伯爵は、自分の先祖の故郷を探しておられましてな、そのために図書館に入り浸って、歴史書やら古地図やらを調べていたのです。

 何でも五〇〇年ほど前にポルトガルの海岸で倒れていたところを地元の領主に助けられ、記憶喪失で夜毎うなされて『ルルイエ』とのうわ言をくり返していたことから、それが氏になったとか。

 ジェルマンの名は、のちに思い出したそうですよ。

 ああ、先祖にあやかって同じ名前を子孫につけるのなんて、珍しいことではないでしょう。

 こちらは五〇〇年も前の先祖の話ですよ?

 それでその、ジェルマンの名を思い出すのと同時に、ルルイエが人名ではなく故郷の地名だったことを思い出したわけですな。

 その後、ルルイエの地を求めて各地を旅して、一〇〇年ほど経ったスペインで、当時としてはありえないほど先進的な医術で王妃の命を救い、伯爵の称号を与えられたのだそうです。


 ルルイエ伯爵は面白い方でしてな、遠い先祖の話だと言うのに、ご自身の体験のような口ぶりで語られるのですよ。

 そうして慌てて取ってつけたように、聞いた話だ、と言うのです。

 それが本当に、何百年も生きているのをごまかしているかのようでしてな。

 不老不死の伯爵だなんて、学生達で集まってはコソコソとウワサし合ったものでしたよ」




※ルルイエの地は見つかったのか?



「手がかりはあったようですよ。

 どこで手に入れたのかはわかりませんが、風景画の切れっ端を私に見せに来たんです。

 あの時の伯爵はひどく興奮した様子でしたね。


 風景画は灰色と赤茶色で、町の一角のようでしたね。

 懐かしいルルイエの景色だと言っていましたよ。

 何やら舞い上がって、何かわからないことをまくし立てて、それっきり伯爵は私達の前には現れなくなってしまいました。

 だからルルイエに住んでいたのは伯爵の遠いご先祖であって、伯爵自身がルルイエに住んでいたわけでもないのに、どうして伯爵がルルイエの景色を知っているような言い方をするのか、とうとう聞けずじまいでしたよ」




※パトリシア・ルルイエについて



「直接会ったことはありませんが、結婚された当時はずいぶん話題になっていましたよ。

 呪いの指輪の令嬢がついに! って、ゴシップ紙なんかに散々取り上げられていましたからね。

 その件について、学生時代の仲間と久しぶりに会って話したりしてね。

 私が伯爵と最後に会ってから、十年以上、経っていましたね。


 結婚したルルイエ伯爵は、私が知っている伯爵と名前は同じだし、新聞の写真で見た限りでは外見もそっくりでしたけど、年齢まで十年以上前のままだったんですから別の人物ですよ。

 きっと息子さんだったんでしょうなぁ。

 父親のほうは、式にも現れなかったようですし、すでにお亡くなりになっていたのかもしれません。

 計算してみるとずいぶん若いころに設けられたお子さんのようですが、見た目より年上だったのかもしれませんね。

 私が知っているのはこの程度ですよ」




※ルルイエ伯爵の行方について



「息子のほうのですよね?

 新婚旅行で世界一周の旅に出られて、一年後にパトリシアさんと赤ん坊だけがイギリスに帰ってきたとか。

 新聞で読んだだけです。

 どんな事情があったのか、まったく検討もつきませんね」


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