探し求めた娘は
まるで光の中にいるようだった。
先程まで病室に居た筈なのに、気が付いたらそこに居た。
周りは上下左右白く輝いているような不思議な空間。地面や天井の概念すらないのか、とにかく果てしなく白い。
ただ分かるのは、自分がそこにいるという事だけ。
「宵……宵は何処なの……」
瀬崎都子は、ここが何処なのかよりも、自分の娘が何処にいるのかという事で頭がいっぱいだった。娘が病室のベッドの上から忽然と姿を消してから2日が経とうとしている。
「宵! 宵! 何処に居るの?」
ひたすらに白い光の中で都子はとにかく宵の名を呼んだ。
都子の声はその空間に響かずにスっと消えていく。
「宵! 返事して!」
それでも都子は娘の名を呼び続け、そして何処かも分からない光の空間を歩き続けた。
すると、遠くに人影が見えた。
「誰? 宵なの?」
眩しい逆光のせいでその人影が何者なのか判別がつかない。
だが、都子は宵だと思った。そう信じたかった。
「宵なんでしょ? 待ってて! すぐにそっちに行くわ」
都子は人影へと走った。
徐々に近付く人影。
やがてあと数メートルというところまで近付くと、ようやくその人影の正体が認識出来た。
紛れもなく我が娘、宵だ。
リクルートスーツに身を包み、手には鞄を持って都子に微笑みを向ける。それはいつも就活を頑張っていた見慣れた姿だった。
「宵! 探したのよ! 何処に行ってたの? 皆に心配かけて……」
微笑みを浮かべる宵に、都子は言葉を投げ掛けた。
「お母さん。ごめんなさい」
「もういいわ。宵が無事に戻って来てくれたらそれだけで」
しかし、宵はふるふると首を横に振った。
「私ね、やりたい事が出来たの」
「え? やりたい事?」
「そう! 私、軍師になる!」
「なに? 軍師……?? え??」
「でもね、軍師にはお母さん達のいる世界ではなれないの。だから私、もう1つの世界で生きる事にするよ」
「え?? もう1つの世界?? 何を言ってるの?? 宵??」
「今までありがとう! お母さん! お父さんにも宜しくね! バイバイ」
宵はくるりとその場で回転すると、リクルートスーツは一瞬のうちに漢服のような着物へ変わり、手に持っていた鞄は羽扇に変わり、頭には綸巾が現れた。
そしてそのまま都子に背を向けて光の奥の方へと走って行った。
「待って! 行かないで! 宵! 宵!」
都子は宵を追い掛けた。
しかし、いくら走っても宵に追いつく事は出来ない。手を伸ばしても娘の背中には届かない。
やがて宵は光の中へと消えてしまった。
「駄目よ……宵……そんな……」
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